【後編】短命に終わらないサステナブルブランドとはニールズヤード日本展開40年の歩みが示すもの―ブランドの精神を運営に“生かす”ということ―

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前編では、ニールズヤードが日本で40年にわたり“ブランドの精神”を体験として根づかせてきた歩みをたどりました。後編では、その価値観を製品開発・コミュニケーション・組織文化へどう具現化してきたのかについて、PRの青木浩子さんのお話をもとに紹介していきます。

幅広いライフステージを支える“多層的な製品ラインアップ

40年間にわたり多くのファンに支持されてきたニールズヤード。ユーザー層は、性別を問わず、あらゆる年齢層にわたっています。リピーターが多いのも特徴的です。

幅広いユーザー層を抱える秘密のひとつが、どのようなライフステージやお悩みにも対応できる、豊かな製品ラインアップです。
ニールズヤードには、パウダーやソープなどのベビーアイテム、ベーシックからプレミアムまで取りそろえたスキンケア、更年期のためのケア製品や介護のためのアロマセラピー講座など、どのライフステージの人にも役立つアイテムや講座が揃っています。

また、手軽に持ち歩けるものからプロまでをも満足させるアロマセラピー製品、デオスプレーなど男性にも人気の製品、ハーブティーなど、生活を彩るアイテムも充実しています。

気に入った製品をきっかけに他のジャンルの製品も買い求めたり、家族で一緒に使い始めたり、効果を実感してリピートしたりする人が多いのも、ニールズヤードならではです。

ニールズヤード表参道本店の店内

確かな実感を生む“製品力”と研究姿勢

ニールズヤードの製品の魅力は、毎日を支えてくれる豊富なラインアップだけではありません。製品そのものの実力も、多くの人に愛される理由です。

1998年に英国女性1,060人に実施したエイジングケアクリームのブラインドテストで、世界有名ブランド100社の中からフランキンセンスのクリームが『第三位』を受賞したこともあります。

ニールズヤードの製品は、開発当初から自然由来であることは前提として、「実際に使ったときの手応え」を重視してきました。「オーガニックであること」に価値が置かれていた時代から、英国の大学や研究機関と積極的に共同研究を行い、成分の安全性や効果を科学的に検証してきました。

「製品を一度使っていただければ、その実力は実感いただけると思っています。おかげさまで、インフルエンサーの方々に向けてこちらから大掛かりなプロモーションを行わずとも、その実感を自発的にインスタグラムやYouTubeで紹介してくださるのは本当にありがたいです。現在一番人気のワイルドローズ ビューティバームも、ある芸能人の方が取り上げてくださったことがきっかけでバズが起こり、そこから新たに使い始めた方々をきっかけに、いまも定期的にバズが起こっています。製品力にはこだわりつつ、タッチポイントをどのように増やしていくかを今後さらに検討していきます」(青木さん)

その高い「製品力」で定期的なバズを生み出すワイルドローズ ビューティバーム

日本にベストマッチさせるためのリクエストやローカライズを

製品力が支持されるニールズヤードですが、実は日本からの意見や要望も製品に反映されています。

「英国で開発されたレシピをそのまま輸入・展開するのではなく、日本人の好みや肌質、生活習慣に合わせて、日本独自の処方の調整や製品開発のリクエストを出すことも。現場からの意見を英国に伝え、英国の自社工場が試作を重ね、製品を作るのですが、その過程が年単位に及ぶこともめずらしくありません。しかし、このように生まれたウーマンズ バランスシリーズは今では世界中で愛されるシリーズとなりました」と青木さんは語ります。

こうした調整が可能なのは、英国と日本の強固な信頼関係が築かれているから。梶原社長は、英国の創業者たちがロンドンの小さな店舗で試行錯誤していた時代からやり取りをスタートしており、その後英国側のオーナーが変わったこともあり、いまでは全世界で最もニールズヤードの歴史に詳しい人物となっています。その継続性が、英国が日本のニールズヤード レメディーズを深く信頼することにつながっているのでしょう。

日本リクエストで生まれ、いまは世界中で愛されているウーマンズバランスシリーズ

押し付けない、不安をあおらないコミュニケーション

もう一つ付け加えておきたいニールズヤードのユニークさが、“自分たちが良いと思うことを押し付けない”“知っていることをひけらかさない”というコミュニケーションです。

サステナブルやオーガニックの世界では、ともすると「それは良くない」「これは避けるべきだ」ということを並べて、セルフケアや環境に対する不安をあおるようなコミュニケーションも少なくありません。

しかし、ニールズヤードは梶原社長の指針で「こうしなければならない」という圧力ではなく、「こういう選択肢もある」という提案のスタイルを取り続けてきました。

「オーガニックを食べなくてはいけない」「きちんと暮らさなければいけない」「環境に悪いことは避けないといけない」と自分を追い詰めるのではなく、植物の香りや触感を通じて、より心地よくなってもらう、ラクになってもらう、豊かになってもらうための提案をしてきたことも、ブランドが支持され、広がっていった理由のひとつでしょう。

組織文化をベースに自然に生まれる社会活動

青木さんによれば、ニールズヤードの従業員は「自分で考え、自分で動く人」が多いそうです。その根底には、前編で紹介した「ブランドの精神を理解して実践することが大事」という考え方があることが挙げられます。

従業員たちが「ブランドとして正しいことをしているか」という問いに向き合う中で行っていることのひとつが、MySRプロジェクト(私の社会的責任)です。健やかで心地よい暮らしを送るハッピーパーソンを目指して、各自が社会のためにできることを実践していく、スタッフ主導の自主的な取り組みです。興味のあるテーマごとにグループを作り、子ども食堂へのサポート、ビーチクリーン、動物愛護活動などを行っています。

ブラウンライスでもお世話になっている「すずき味噌店」のお味噌と「さくさく村」のお米をこども食堂に差し入れ

「みんなの食堂 赤い屋根」を運営するNPO法人富士北麓まちづくりネットワークの飯田勇夫さんと、ニールズヤード レメディーズの渡辺恵美さん

「子ども食堂のサポートは、化粧品の廃棄率を下げることにもつながっています。ニールズヤードの製品廃棄率はもともと非常に低く0.1%以下でしたが、そこからさらに廃棄率を下げようと、アウトレット品を社員に販売して、その売上金でお米を買って子ども食堂に寄付するようになりました。同時に、家庭菜園を行っているスタッフの収穫物や、自宅に余っていた食材などもお送りしています。このような活動も、会社の決まりや上司に言われてではなく、スタッフが自主的に行っているものです」(青木さん)。

企業全体としては、ブルーボトルの回収しアップサイクル品として生まれ変わらせる取り組みなども行っている。また、スクール講師が支援団体からの要望などにより、チャリティ講座を行うこともある

 

ニールズヤードレメディーズジャパンの40年の歩みは、“短命に終わらないサステナブルブランド”がどう育まれるのかのヒントにあふれています。

“ブランドの精神”を実践し続け、体験を通じて価値を伝え、時代や状況にチャレンジし、適切なローカライズを行い、社員の自発性を育てる――。その積み重ねが、40年間ブランドを支えてきました。

これから先、世界のサステナブル市場がどのように変化していくとしても、ニールズヤードはきっと、自分たちが信じてきた歩幅で進み続けるのだろうと感じました。

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WRITERこの記事を書いた人

Chisa MIZUNO
Chisa MIZUNO

エネルギー企業でのマーケティングを経て、サステナビリティ分野の出版社にてプランニング、編集、広告制作、ライティングに幅広く携わる。
現在はウェルネス・ビューティー・インテリア領域を中心に、ブランドコンセプトの開発やPR、コンテンツ制作を手がけ、環境や社会にやさしいブランドの魅力の発信を支援している。
全国通訳案内士資格保有。