「知っている」から「実践する」へ。国内先進50社に学ぶ、サステナビリティを“自分ゴト化”させる社内浸透の最前線

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サステナビリティ経営を掲げ、パーパスを策定し、eラーニングや研修を全社的に実施する。一見、着実にステップを踏んでいるように見えても、多くのサステナビリティ担当者が「現場の社員の行動がなかなか変わらない」「パーパスへの共感は得られたが、行動が伴わない」という「社内浸透の壁」に突き当たっています。

理解や共感までは進めても、そこから社員一人ひとりが自ら腹落ちし、社会課題を自分事として捉え、実際の業務へ落とし込む。この「行動変容」を実現できている企業は、まだ多くありません。

本記事では、ESG評価が高い国内先進企業50社の最新動向を調査したレポート「国内先進50社の調査結果から読み解く サステナブル・ブランディングの動向」から、特に社内浸透に関わるパートを解説します。調査結果からは、社内浸透の施策が、単なる知識のインプットだけでなく、社員が主体的に関わる「アウトプット型」を組み合わせているという実態が見えてきました。先進企業の具体的な手法を交えながら、社員の行動変容を促すための鍵を紐解きます。

多くの企業がサステナビリティに関する社内浸透施策として、インプット型とアウトプット型の双方を実施していました。

調査レポートによると、サステナビリティに関する社内浸透施策の約71%が、研修、eラーニング、動画配信、社内報での情報発信といった「インプット型」の施策です。これらは知識を均一に広めるためには有効ですが、受け身の姿勢を生みやすく、社員が自らの業務と紐づけて考える「自分ゴト化」には至りにくいという点もあります。

一方で、ESG評価で上位に位置する先進50社の中には、すでに次のフェーズへ進んでいる企業が存在します。社内浸透施策の約29%が、社員による「実践・発信」を伴う「アウトプット型」となっています。

「研修をやっているのに浸透しない」という悩みの本質は、学んだ知識を具体的なアクションに変換し、それを周囲に表明する「アウトプットの場」が圧倒的に不足していることにあります。先進企業は、社員を単なる情報の受け手としてではなく、サステナビリティを共に推進する「パートナー」として巻き込み、自発的な行動を促す仕組みを構築し始めています。

社内浸透を効率的に進めるためには、すべてのテーマに同じ手法を用いるのではなく、その性質に合わせてコミュニケーションの「質」を使い分ける必要があります。調査データから見えるテーマ別の傾向を深掘りします。

人権やダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)に関する施策は、約85%がインプット型です。これらは法的遵守や人権DD(デュー・ディリジェンス)など、正しい基礎知識の習得が最優先されるため、階層別研修やガイドラインの周知が中心となっています。しかし、今後はこれをいかに「職場での具体的な行動」に繋げるかが課題となります。

環境をテーマとする浸透策では、約25%がアウトプット・参加型の施策となっています。植林活動やビーチクリーン、あるいは後述する「デコ活」のようなキャンペーンなど、社員が実際に体を動かして参加するイベントが多く見られます。体験を通じた理解は、座学よりも強い自分事化を促します。

特筆すべきは、パーパス、ミッション、ビジョン、バリューの浸透策です。ここでは約46%という高い割合でアウトプット型の施策が導入されています。

企業の存在意義(パーパス)は、トップが語るだけでは浸透しません。社員一人ひとりが自分たちの事業や仕事が会社全体の中でどのような位置づけにあるのかを理解し、それらと「会社の存在意義」の重なりを見つけるプロセスが必要です。そのため、先進企業では「対話(ダイアログ)」や「ワークショップ」が戦略的に取り入れられています。

社員を「知っている状態」から「行動している状態」へ変えるためには、どのような仕掛けが必要なのでしょうか。調査レポートから、3つのアプローチ別に特徴的な事例を紹介します。

これまでのトップダウン型の一方的な発信ではなく、深い「対話」を通じて、組織の理念を個人の情熱へと接続する動きです。

  • 味の素グループ:My Purpose ワークショップ
    味の素グループでは、全世界の社員を対象に「My Purpose ワークショップ」を展開しています。これは「自分は何のために働いているのか」という個人の志を言語化し、それを会社の志とつなぎ合わせるプロセスです。2024年度には国内外で計49名のアンバサダーを育成。会社から押し付けられた目標ではなく、自身の内発的動機に基づいた行動を促す、グローバルレベルでの事例です。

味の素グループ サステナビリティレポート 2025

  • 三井化学グループ:橋本ラジオ
    社長の橋本氏がパーソナリティとなり、社員から寄せられた質問や意見に直接答える音声コンテンツです。テキストベースの社内報よりも、トップの「肉声」で語られる思いは社員の心に届きやすく、またオンラインでリアルタイムに質問できる場を設けることで、経営層との心理的距離を縮めています。

三井化学グループの社長ラジオ「橋本ラジオ」が「社内報アワード2025」の動画社内報部門で2年連続ブロンズ賞を受賞

表彰制度は、単なる功労賞ではありません。優れた行動を可視化し、称賛することで、「このような行動が推奨されるのだ」というメッセージを全社員に伝え、後に続くフォロワーを生むための強力な仕組みです。

  • 積水ハウスSekisui House Innovation & Performance Awards (SHIP)

全社員参画型の表彰制度です。単なる成果だけでなく、パーパスの体現やイノベーションへの挑戦を正当に評価し、称賛を形にして発信しています。これにより、行動した社員のモチベーションを高めるだけでなく、その姿を見た他の社員に「自分もやってみよう」という具体的な行動の動機付けを与えています。 

キャリア自律支援 | ESG経営 | 企業・IR・ESG・採用 | 積水ハウス

  • OLCグループ:Sustainability Award
    8つのマテリアリティ(重要課題)に基づき、現場での創意工夫を表彰しています。全社レベルだけでなく、組織単位での小さな表彰を積み重ねることで、現場の隅々まで「自分たちの活動が社会貢献につながっている」という実感を行き渡らせています。

OLC GROUP SUSTAINABILITY REPORT 2025

日々の業務や生活の延長線上で、楽しみながら参加できる仕組みも重要です。

  • セブン&アイ・ホールディングス: 「みんなで『デコ活』しよう」キャンペーン
    従業員向けアプリ「サステナスマイル」を活用し、グループ18社の従業員が楽しみながら脱炭素アクションに取り組めるキャンペーンを実施。日常的に使うツールに組み込むことで、サステナビリティを「特別なこと」から「当たり前の習慣」へ変えています。

気候変動の自分ごと化、行動変容に向けて 「みんなで『デコ活』しよう」キャンペーンを実施~グループ18社が参加の従業員向けアプリ『サステナスマイル』にて実施~ | セブン&アイ・ホールディングス

  • TOTO:Thanks CN!
    カーボンニュートラル(CN)に向けた全社員参加型のアクションです。社内SNSやイントラネットを活用し、仲間の良い取り組みに対して「感謝(Thanks)」を伝えるリレー形式の活動を展開。称賛し合う文化が、次のアクションを生む原動力となっています。

サステナビリティの考え方と推進体制(社内コミュニケーション)

  • ニコン:サステナビリティ フォトコンテスト
    社員からサステナビリティを感じる写真を公募。入選作品はレポートの表紙を飾るなど、目に見える形でアウトプットされます。レンズを通じて社会を見るという「ニコンらしさ」を活かしつつ、社員が日常の中でサステナブルな瞬間を探す習慣を作っています。

ニコンサステナビリティ報告書2025

今回の調査結果から見えてきたのは、インターナル・ブランディング(社内浸透)とエクスターナル・ブランディング(対外発信)は、決して切り離せない一連のサイクルであるということです。

多くの企業が、まずは社外向けのレポート作成やPRに注力しがちですが、中身(実態)が伴わない発信は、後に「ウォッシュ」というリスクとして跳ね返ってきます。

成功のサイクル:

  1. 腹落ち・自分事化(内側): 対話やワークショップを通じて、社員がパーパスなどを自分のものにする。
  2. 行動変容(内側): 社員自らがブランドの体現者となり、商品開発、営業、接客などの現場でサステナブルな価値を創出する。
  3. 共感・支持(外側): 実態を伴う誠実な活動が、顧客や株主からの確かな信頼(ブランド価値)へと繋がる。
  4. 誇りとエンゲージメント(内側): 社外からの高い評価が社員に還元され、自社への誇りと次の挑戦への意欲が高まる。

この「好循環」を回すことこそが、真のサステナブル・ブランディングです。経営層が掲げる理想が、社員一人ひとりの日々の行動と重なり合ったとき、企業のブランド力は揺るぎないものになります。

「社内浸透」に魔法のような一撃必殺の解決策はありません。しかし、先進企業の事例が示すように、正しい「対話の設計」と「称賛の仕組み」、そして「継続的な仕掛け」があれば、組織は必ず変わり始めます。

サステナブル・ブランド・ジャーニーを運営する株式会社YUIDEAでは、これまで1,000社を超える企業のコミュニケーション支援に携わってきました。

  • 「パーパスを作ったが、現場まで届いていない」
  • 「研修は実施しているが、社員の反応が薄い」
  • 「自社らしい、ユニークな浸透施策を企画したい」

こうした課題に対し、私たちは調査データに基づいた客観的な分析と、各社の企業文化に深く根差したクリエイティブな解決策を提案します。画一的なパッケージではなく、社員の皆さんが「ワクワクしながら参加できる」ワークショップのデザインや、日常的なコミュニケーションを活性化する社内イントラの構築・コンテンツづくり、サステナビリティ視点での事業開発など、伴走型の支援を行っています。

サステナビリティを経営のエンジンにするための第一歩として、まずは貴社の現在の「浸透度」を確認してみませんか?先進事例のさらなる詳細や、具体的な支援内容についてのご相談は、以下よりお気軽にお問い合わせください。

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