ザ・キャピトルホテル 東急、15年目の挑戦。一流ホテルが見せる「食のサステナブル」

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2025年7月29日、ザ・キャピトルホテル 東急(東京都千代田区)にて食のサステナブルに関するプレス向けイベント「食のキャピトル、サステナブル 〜未来へつなぐ一皿を〜」が開かれた。

長年にわたり数々のサステナブルアクションを起こしてきたという同ホテルが、これまでに行った取り組み、その根底にある哲学やビジョンとは。

本記事では、今秋開業15周年を迎えるこのホテルが一つの節目として開催したプレスイベントの様子をお伝えしながら、日本の「食のサステナブル」の現状や課題にも迫りたい。

ホテル業界の先陣を切って進む
一流ホテルだからこその責任感

  • 「不易流行」変えてはならないものと、変わるべきもの

日本初の外資系ホテルとして開業した前身の東京ヒルトンホテル時代を含めて、60余年にわたる歴史を持つザ・キャピトルホテル 東急が掲げるブランドコンセプトは「不易流行」。これは、多くの人々に愛されてきた伝統を絶やすことなく受け継ぎながらも、常に新しい感動や発見を提供するための創意工夫を凝らし続けるという、ホテルとしての意志だ。そして同ホテルが実践してきたサステナブルのためのアクションにも、この考えが底流にある。

総料理長の曽我部 俊典氏は、料理人としての立場から、ホテル内で「食のサステナブル」を推進している。曽我部氏曰く、「美味しいものを提供して、お客様に幸せになっていただくことが自分たちの目的」。地球環境の変化が食材に影響を与えていることは明白で、料理の世界においてもサステナビリティへの配慮は不可欠な時代なのだと、真摯に訴える。

地球の長い歩みの中で育まれてきた環境、そこから得られる食材という、損なわれてはならないもの。それらを守りながら時代の変化にも柔軟に対応し、今の顧客にも愛されるものを追求する姿勢には、自然や食材への敬意と、ホテル全体に根付く「不易流行」の哲学がうかがえる。

ここまで行ってきたサステナブルのための取り組み、その必要性について語る曽我部氏

ここまで行ってきたサステナブルのための取り組み、その必要性について語る曽我部氏

  • ホテル全体に広がる意識と行動で、“星付き”店舗に

ザ・キャピトルホテル 東急のレストランが、本格的にサステナブルへの取り組みを始めたのは2022年。食の持続可能性を推進する一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会(以下、SRAジャパン)に加盟し、同協会の設けるグローバル基準(1)に基づく評価を受けるところからスタートした。曽我部氏は「恥ずかしながら初回の評価では星は一つも付かなかった」と話すが、同時にこの評価結果のおかげで“何にどのように取り組むべきか”が明らかにもなったのだと言う。評価を受け、曽我部氏はもちろん現場のシェフたちがより危機感を持って奮起し、創意工夫を凝らす中で数々のアクションが生まれる。

日本料理「水簾」では、食材ロス削減の観点から野菜の端材で香の物を作るほか、精進料理をベースにした野菜メインのヴィーガンメニューを考案・提供。

中国料理「星ヶ岡」では、菓子で使用するバナナをフェアトレード認証品に切り替えた。また定期開催している日本各地の食材をテーマにしたフェアに際しては、毎回現地に赴き直接生産者と会い、生産・漁獲における姿勢や取り組みを深く理解することにも努めている。料理を提供する際に料理人もサービススタッフも自分の言葉でゲストに説明ができるという点を、大切に考えているためだ。

オールデイダイニング「ORIGAMI」でも、ヴィーガン・ベジタブルメニューを増やし、現在は10種類以上用意。前菜からデザートまで揃っているため、ゲストは好みのコースを作ることも可能だという。朝食時に提供しているバターも、アニマルウェルフェアに配慮がなされた品だ。

上記はごく一例だが、数々の取り組みの結果、現在は上記3レストランとも、SRAジャパンによって星付き店舗に認定されている。

(1)SRAジャパンが設けている「FOOD MADE GOODスタンダード」というグローバル基準。調達・社会・環境の3指標に紐づく10項目に基づいた独自のレーティングにより、加盟レストランのアセスメントを行っている。達成度に応じ、一ツ星・二ツ星・三ツ星と星付き店舗として認定される仕組みだ。
  • 学びながらの実践と成長

曽我部氏がたびたび口にする言葉で印象的なのは「この数年間勉強しながら成長してきた」というものだ。サステナブルのためのアクションは、食の分野に限らず、未だ明確で絶対的な正解がない。そんな中、ホテルレストランという規模の大きな組織で継続して取り組むために、知見を持つ人と交流・連携して学びながら実践するというスタンスも、同ホテルの特徴の一つだろう。

日本におけるヴィーガン・プラントベース調理の第一人者であり、SRAジャパンのプロジェクト・アドバイザー・シェフでもある杉浦 仁志シェフと曽我部氏は、この3年間『食で地球の未来を拓く「サステナブル テーブル」 』と題したイベントを同ホテルにて開催してきた。食品ロス、サステナブルシーフード&ベターミート、ウェルビーイングなど各回のテーマに基づくコース料理の提供と、サステナブルに関するトークイベントを実施。ゲストが料理とシェフを介して社会や環境の課題に触れ、その解決のために工夫を凝らす生産者の存在を知ることができるイベントとして、全5回を好評のうちに終えている。今年も11月に開催することが決定している。

次世代の担い手にかける思い

  • 若手シェフから生まれた料理

この日会場では、曽我部総料理長と、ホテル内の各レストランシェフ、そして杉浦シェフが共に作り上げた特別コースが提供された。もちろん、各料理にはサステナビリティへの配慮と工夫が盛り込まれているが、中でも印象的なのは各レストランの若手シェフによる料理だ。どの品もSRAジャパンが開催する「「FOOD MADE GOOD 未来のレシピコンテスト(2)」の入賞作品であり、最優秀賞や、審査員特別賞を受賞した一品も並ぶ。サステナビリティに配慮したメニューには、調理技術のほか、生産者や地域が抱える課題への深い理解も必要になる。キャリアの早い段階から食とサステナビリティが不可分であることを学び、料理人としてどのように持続可能性を追求していくかを考える機会を、次世代のシェフたちに積極的に提供している。

右上から時計回りに「はかた地どりの辛子炒め 油条添え」「玄米入り南瓜茶碗蒸し 生雲丹のせ」「未利用魚を使用した香草バター焼き みかん風味のグラスフェッドバターソース(受賞作品)」の3品が若手シェフのレシピ。左上は曽我部総料理長による「江田和牛と本日野菜のプティボヌールスープ」。

右上から時計回りに「はかた地どりの辛子炒め 油条添え」「玄米入り南瓜茶碗蒸し 生雲丹のせ」「未利用魚を使用した香草バター焼き みかん風味のグラスフェッドバターソース(受賞作品)」の3品が若手シェフのレシピ。左上は曽我部総料理長による「江田和牛と本日野菜のプティボヌールスープ」。

料理の提供中、テーブルを訪れた曽我部氏は「馴染みのない未利用魚などをどう調理するか、みんなで頭を抱えながら向き合っている。大変だが、扱い慣れない食材に触れるからこそ勉強になる」とどこか楽しそうに話す。総料理長であっても新たな学びに意欲的な姿勢は、後進シェフたちにとっても刺激に溢れる存在に違いない。

(2)SRAジャパンが開催する、30歳以下の若手シェフや調理専門学校生を対象としたコンテスト。次世代を担う若いシェフが、サステナビリティ課題やその解決についてレシピを通じて考えるきっかけとしてもらうことを目的としている。
  • 生産現場でイノベーションを起こす若手生産者たち

若手が活躍を見せるのは、料理の現場だけではない。杉浦氏は、水産・畜産の現場で革新的な取り組みを行う生産者を次世代のホープとして紹介した。

「赤坂水産」の赤坂竜太郎氏は、環境負荷のかからない植物由来の飼料で真鯛を養殖している。テクノロジー先端企業との提携などによる実証実験にも積極的で、天然と遜色ない味と鮮度維持を実現している。

「江田畜産」の江田 友輝氏は、循環型飼料の使用、化学物質の不使用、アニマルウェルフェア、天然水の使用に取り組み、ブランド和牛を生産している。江田氏もまた、大手企業との提携によりテクノロジーを取り入れ、人力に頼らない給餌の最適化や適正出荷時期の見極めに取り組む。

人手不足・後継者不足の問題が深刻化する第一次産業において、人の力とテクノロジーの力を上手に使い分けながらイノベーションを起こす、赤坂氏と江田氏。両氏による食材は、それぞれオードブル、メインディシュとして振る舞われ、参加者たちの舌を楽しませた。

シェフ同士の交流がイノベーションを生む

イベント終盤では、曽我部氏、SRAジャパン代表理事の下田屋 毅氏、杉浦氏の3名が対談を行い、日本と世界の現状や、今の取り組みを将来に繋げていくための会話が繰り広げられた。

国際舞台で活躍する杉浦氏は「海外はブランディングが上手。影響力のあるシェフが、食を通じて社会的意義を伝えている」と話す。サステナブルなコース料理が高価格で提供されるデンマークの例を伝え、日本市場がその水準に至るにはいくつかの段階が必要だとしながらも「ザ・キャピトルホテル 東急は、日本のホテルビジネスにおいて、サステナビリティでトップを走る存在」と力を込めた。

同氏はまた、トップレストランはグローバルな交流が盛んだと話し、将来に向け「人と人が出会うことでイノベーションが起きる。オープンに発信していくことは、今後の日本のレストランにとっても有益」と語った。

曽我部氏も、日本と海外でのサステナブルへの意識や行動の差を感じているようだ。「(サステナブルは)食を生業とする者として当然責任を持つべきこと。若いスタッフにも自分ゴトとして捉えてもらいたい」と、後進育成にかける熱意を見せた。

生産者と消費者を繋ぐ存在としての「レストラン」

両氏のトークを受け下田屋氏は、「海外のレストランも最初からできていたわけではない。彼らも必然に駆られて行動してきたから、今がある」「サステナビリティの推進・浸透は、各所がコラボレーションして叶うもの。レストラン・シェフが、生産者と消費者を橋渡しする存在となることで、日本の社会全体に広めていければ」と語った。

左から、下田屋 毅氏(SRAジャパン代表理事)、 曽我部 俊典氏(ザ・キャピトルホテル 東急 総料理長)、杉浦 仁志氏(SRAジャパンプロジェクト・アドバイザー・シェフ)

左から、下田屋 毅氏(SRAジャパン代表理事)、 曽我部 俊典氏(ザ・キャピトルホテル 東急 総料理長)、杉浦 仁志氏(SRAジャパンプロジェクト・アドバイザー・シェフ)

毎日の食事から特別な日の料理まで、「食」はすべての人間にとって不可欠な存在だ。だからこそ、「食」を選ぶ私たちの基準が変われば、社会と環境に与えるインパクトはとても大きなものになるはずだ。下田屋氏の言葉のように、多くのレストラン・シェフが生産者と消費者を繋ぐハブになっていくことが、そのための一歩かもしれない。

2025年3月、農林水産省傘下の組織から「シェフズ・サステナビリティ・マニフェスト」が公開されている。作成には下田屋氏、曽我部氏、杉浦氏も携わっているが、他にもたくさんのシェフや生産者たちが協力・賛同し、日本ならではの食文化・精神性を反映しながら作り上げたものだという。料理人たちの熱量が込められたこのマニフェストが多くのシェフに広まることで、日本の食の世界はどのように変わっていくのか、期待は膨らむ。

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WRITERこの記事を書いた人

Ryoko HANAOKA
Ryoko HANAOKA

大学で環境教育・文化財保存科学を専攻した後、人材業の企業を複数社経験。各社にてライティング、企画編集、採用支援やアカウントマネジメントなどに従事。
現在フリーランスライターとして活動中。気になることは物事の仕組みや原因。映画と読書と睡眠の時間は死守したい。

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