COLOR Againはブランドマーケティングの専門性から企業を支援するFICCが、化粧品を色材に変えるスミンクアートキットを展開するモーンガータ社と共同で立ち上げたプロジェクト。普段向き合わないような問いに向き合い、使わなくなったメイクアイテムを使って感じたことを描くワークショップ等を通して、一人ひとりが「自分の感性」に自信を持ち、個性を自然に身にまとえる世界を創り出すことを目指している。
大量に流れ込む情報や、いくつも並行して行われるタスクの中で、感性とじっくり向き合う時間をとれている人はほとんどいないのではないだろうか?また、周りの目や“世間一般”の価値観の圧力で自分自身の感性を感じ取りにくくなっている人も多いだろう。今回参加したCOLOR Againのワークショップは、自らの内側に眠る“感性”を発見しなおし、育てていくためのきっかけを与えてくれるものだった。本記事では、ワークショップの内容やプロジェクト発起人の想いをレポートする。
© MASHING UP
感性の解放がもたらす可能性と多様性
豊かな感性はすべての人に必要なもの
プロジェクトの発起人であるFICCプロデューサー・伊藤真愛美さんは語る。
「COLOR Againでは、感性を『自ら選択肢(とらえ方)を創造していく力』だと解釈しています。人間は生きている限り外からの影響を受けており、よほど意識しないと、周りの情報や同調圧力、集団的な価値観のバイアスの中で、自分本来の感性を感じ取りにくい環境にあります。そのため、自分を制御する癖がついてしまい、外からの情報をもとに“正解”をつくってしまいがちです。自らの思考に蓋をせず、感性を解き放つことで、一人ひとりの個性を確認することができ、可能性や多様性が広がるのではないでしょうか。豊かな感性はクリエイターたちにだけ必要なものではなく、どんな仕事においても必要なものだと思います」
発起人のFICC伊藤さんとモーンガータ代表の田中さん
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感じたことを表現・共有することの心地良さを体験
ワークショップでは、いくつかの問いに対して自由に絵を描いていくが、その時に使うのが、使わなくなった化粧品だ。「ひょっとすると、自分だけがこう感じている/考えているのかなと思った最近のエピソードは何ですか?」という問いに対して、感じたことを10分でポストカードに表現していく。子供のころはよく絵を描いていたが、大人になってから絵の具を使って絵を描く機会はほとんどなく、感じたことを描くこと自体が珍しい体験だったが、描くことはもちろん、表現したことを周りの人たちとシェアすることも心地よい時間だった。それはきっと、“まず何かを感じることが大切で、どんなに拙い表現でも大丈夫で、感じたことを素直に表現し、自分に向き合うことに価値がある”というCOLOR Againのメッセージを会場のみんなと共有していたからだと感じた。判断や査定をされるために描いているのではなく、ただ自分を知るために描き、周りの人と分かち合っているという感覚が心地よかった。
表現したものをシェアしあう参加者たち
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感性の再発見のために用意されたもう一つのユニークな体験が、サウンドセラピストHIKOKONAMIさんによるサウンドバス体験だ。会場の明かりを消して、目を閉じて、HIKOKONAMIさんが奏でる音だけに意識を集中する。目から入ってくる情報をシャットアウトするだけで、音が深く身体に響き、通り抜けていく。この音は眉間から入って腰のほうに抜けていくな、この音の揺らぎが気持ちいいな、というように普段漠然と音楽を聴いているときよりもずっと繊細で明確に響きを感じ、まさに感性が開かれている感覚をもった。
サウンドセラピストHIKOKONAMIさん
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その後、サウンドバス体験で感じたことをまた描いていったが、音を聞く前よりも描きたいイメージがぱっと浮かんで、迷いなく筆を進めていた。どんなふうに描くのがいいかと考えるよりも前に筆が動き出す感じがあった。ワークショップを受けた人たちから、『自分を認められるようになった』『思ってないことを言わなくなった』といった声が届いているそうだが、感じたものを大切にし、素直に表現することを繰り返していけば、自分はこんなことを感じるんだ、こんな表現をするのも面白いな、と多角的に自分をとらえることができ、認めていけるのだと感じた。
伊藤さんによると、ハーバード・ビジネス・レビューに掲載されたある調査では、自己理解は自己肯定感を上げるだけでなく、組織の中で顧客満足度や定職率、生産性をもあげることが確認されているという。「内なる感性の再発見により、今の自分や自分がありたい姿に出会うことができます。そうやって自分の価値観を認められるようになることで、自分の感性と他者、社会とのつながりを見いだすことができるようになるのではないでしょうか。自分がこれまでの人生で大切にしてきたことや想い・視点が、誰かや社会のための価値創造の種になるはずです。自分の感性を大切にし、自分起点で世界を見つめることで、社会とのつながりを見いだすことができると私たちは考えます」(伊藤さん)。
参加者たちが描いた絵
化粧品ロスの現状とアップサイクルの取り組み
ワークショップで絵を描くときに用いる色材は、使わなくなった化粧品。各自で持ち寄ったメイク用品とそれらを色材に変えるマジックウォーター入り水筆を使って描いていく。不要な化粧品をアート素材へとアップサイクルするキット「スミンクアート」を開発したモーンガータ代表取締役の田中寿典さんによると、同社が2021年に独自に行った調査では、実に86.3%もの人が化粧品を使いきれずに捨てていることに加え、化粧品メーカーから出る化粧品の中身の廃棄量は、国内上位5社だけで年間約2万トンに上ることがわかった。
COLOR Againでは、自身と向き合い、自分が愛着を持って使用していたコスメで自己表現することは、コスメの消費に対する課題感をもたらすだけでなく、ありのままの自分を見つめ、愛し、画一性に囚われない価値観を育んでいくことに繋がるのではないかと提案している。確かに、肌の上では使いにくいなと思っていたアイシャドウやチークを画材として見ると、それらは豊かなニュアンスをもたらしてくれる存在となり、新鮮な目で出会いなおすことができた。
廃棄予定などの化粧品を原材料とするスミングアートキット
自分の感じ方を大切にし、他者の感じ方も尊重することが
組織や社会での受容性を高める土台に
特に印象的だったのは、サウンドバス後に感じたことを表現したものをみんなでシェアしたときに、同じ音を聴いてこれだけの多様な表現が生まれるのだと実感したことだ。
大きな声や認めてもらいたい存在が気になり、いつのまにか鈍くなってしまった自分の感じ方を見つめなおして、認めてあげることは、他者の感じ方を認めることができる礎になるはずだ。そのような個人が集まることは、彼らが属する組織やコミュニティ、広くは社会に対しても、違いを尊重しあえるようになることへとつながっていくだろう。
今回のアート体験は小さなきっかけだったが、この体験で生まれた“感じる力の芽”を大切に育てていくことで、感性はより研ぎ澄まされていくと思った。感じる力が豊かになれば、見るもの触れるもののとらえ方が変わり、世界の見え方も変わってくるはずだ。そんな自分になっていくことこそ、COLOR Againが提唱する世界の入口への一歩となるのだろう。
【参考】
・COLOR Again公式サイト
・捨てられるモノを楽しいコトへ。コスメロス問題から見る、アップサイクルの本質