男子高校生が、女性の健康課題や性の知識について学ぶ特別授業 宝島社によるフェムケア・フェムテック啓発プロジェクト
ジェンダーギャップや女性の健康課題は、女性だけの問題ではなく、社会全体の問題だ。女性が抱える健康問題やライフスタイルの悩みを解決する技術や商品・サービスである「フェムテック」が社会に浸透しはじめたことを機に、長らく“蓋をしてきた/されてきた”女性の健康問題に光をあてるムーブメントが様々に興っている。なかでも、女性だけでなく男性も当事者意識をもつことを促す動きも近年、盛んだ。宝島社の女性誌10誌、男性誌2誌の合計12誌が参加するフェムケア・フェムテック啓発プロジェクト「もっと話そう! Fem&(フェムアンド)」もその一つ。プロジェクトを推進するなかで、女性の健康問題に対する男性理解の重要性を実感したことから、これからの未来を担う世代への啓発として男子校での性教育授業を実施している。2025年2月5日に東京都千代田区の男子校、正則学園高等学校(以下、同校)で行われた性教育特別授業の様子を取材した。
「体感はできないけれど、理解はできる」
宝島社による「もっと話そう! Fem&」では、未来を担う世代への啓発として、男子校における性教育授業を実施している。同校では今年度は2024年8月にも授業を行っており、今回(2025年2月)が2回目となる。同校の2年生が参加した今回の特別授業では、まず生徒会の会長と副会長が登壇し、2024年11月の文化祭で生徒会執行部が行った展示発表についてプレゼンテーションした。プレゼンテーションのなかで、生徒会長は「男子校だからこそできる性教育とは何か?」そして「自分たちができる取り組みとは何か?」という問題提起から、「正しい知識を得ることで、お互いがストレスのない生活が送れるのではないか」と意見を述べた。さらに、性教育=下ネタとして捉えてしまい、真面目に話せなくなる男子高校生の現状を課題と捉え、「このまま異性の体や性について正しく学ばないまま社会に出たらとても危険。自分の無意識の行動や言動が知らない間に人を傷つけることがあり、DVやハラスメントにつながりかねない。男子校だからこそ異性への理解は必要」だと生徒たちに訴えた。
(生徒会執行部が取り組んできた活動についてプレゼンテーションを行う)
同校では「リトルジェントルマン」になることを目的に、口腔ケアや身だしなみ講座などを実施している。それを踏まえ、生徒会長は「僕たちは生理や生理痛を体感することができないが、理解することはできるはず。もはや“リトルジェントルマン”ではなく、理解ある本物の“ジェントルマン”になりませんか」とも呼びかけた。
女性だけが一方通行の発信をしても社会は変わらない
生徒会長と副会長によるプレゼンテーションの後は、宝島社「大人のおしゃれ手帖」橘真子編集長と、産婦人科医の吉形玲美氏によるレクチャーが行われた。吉形玲美氏は、女性のライフステージにおける健康問題、女性ホルモンの変化によって引き起こされる体内やメンタルの変化、PMSや更年期症状などについて解説。「知識が身を助ける」と、正しい知識を身につける大切さを生徒たちに訴えた。質疑応答では、「友人のガールフレンドがPMSに悩んでおりにピルを勧めたいが、副作用が気になる」や「母親が更年期症状でつらそうなときに何をしてあげられるか」といった具体的かつ実践的な質問が寄せられた。更年期症状への対応としては「ただ話を聞いてもらえるだけで嬉しいもの。実は更年期症状は“傾聴”だけでも、かなり緩和される」と吉形氏は回答。橘真子編集長からも、「女性の健康課題は年代を問わず特有のものがあり、女性だけが一方通行の発信をしても社会は変わらない。男性の理解も深めていかないと双方にとって良い社会は実現できない」との話があり、「女性のことを深く知ってもらい、これからの社会を担う世代の皆さんが知識を共有することで、未来はきっと変わると思う」と言葉をつづけた。
性や女性について正しく知っているほうが、カッコいい
2024年11月に行われた文化祭の展示では、男子高校生がどれくらい異性に関する正しい知識を持っているのかを把握するために、全校生徒を対象として女性の健康課題に関する知識を問うアンケートを実施。さらには有志の生徒による「生理ナプキン体験」など、授業の内容から一歩踏み込んだ学びの成果が掲示された。(生徒から主体的に学んだ成果を発表した文化祭の展示)
男子高校生が生理ナプキンを薬局で買い、身につけてみることまでを体験してみてどうだったか?
「最初は種類が多すぎて、何をどのように選べばいいかが、そもそも分からなかった。身に着けてみると、乾いた状態でも違和感がすごくて、これでさらに経血を吸収した状態で長時間つけているとすごくストレスだろうなと感じた」と、レポートを作成した男子高校生は率直な感想を聞かせてくれた。その上でさらに、「性教育を恥ずかしいと感じたり、下ネタにしたりしてしまうのは、浅いところしか見ていないから。性教育や女性の体について知っていたほうがカッコいいし、自分も社会も絶対にもっとよくなる」と力説した。
(「生理や更年期で困っている女性が身近にいたら、さりげない配慮のできる男になりたい」と語る生徒会会長Kさん(右)と副会長のSさん(左))
こうした文化祭の発表や特別授業を通じて、彼ら自身にどのような変化があったのだろうか。
「生理や更年期はタブー視されているように感じていたけど、この授業を通じて知識を得たことで自分から話しやすくなった。僕が家で話題に出すことで、母親や姉妹も“今日は生理だからつらい”と話すようになり、それを聞いた自分も進んで洗い物や洗濯物をたたむなどの家事を行うようになった」と、男子生徒は自らの変化を語った。
同校では2022年にも同様の特別授業を行っている(この当時は、宝島社「もっと話そう!Hello Femtech(ハローフェムテック)」プロジェクトの一環として実施された)。その際、学校側としては苦情が入るかもしれないと覚悟していたが、予想に反して、男子高校生の保護者からの好意的な反響が大きかったという。
「面と向かって息子に話すことができなかった」「時間もとれないし、話題にするのも難しいのでありがたい」等の声が寄せられたことが後押しとなり、今年度にふたたび特別授業を行うことになった。
次世代を迎え入れるる社会の側にも変化が求められる
フェムケア・フェムテックがこれほど急速に浸透した背景には、誰もがよりよく生きられる社会を願う、さまざまな人たちの想いがある。家族やパートナー、友人、学校や職場の同僚など、社会のなかではあらゆる世代とジェンダー属性の人々がいて、そのなかでさまざまな関係性を築いていくことは避けて通れない。つまり、フェムケア・フェムテックに内包される健康課題やジェンダー問題は、社会全体の問題だ。だからこそ男性も、性に関する無意識の偏見やステレオタイプ(思い込み)を見直し、「自分ゴト」として意識を持つことが、次世代の社会をよりよくすることにつながるはずだ。そして残念ながら、いま社会において意思決定をしている世代においてはまだ、「既に変わりつつある人」と「未だ古い価値観をアップデートできていない人」に二極化している状況があるといえる。そうした現状について、宝島社の橘氏は「このようにジェンダーの垣根を超える学びを得た若い世代が社会に出た時に、上の立場にいる人たちが古い価値観のままだったとしたら、せっかく新しい価値観のもと、何かを生み出そうとする芽を摘んでしまうことになりかねない」と指摘する。
宝島社の「もっと話そう! Fem&」プロジェクトには、女性誌10誌、男性誌2誌の合計12誌が参加している。橘氏によると、男性誌(とりわけWEBメディア)の読者層は幅広いという。「WEBメディアを活用すれば、より多くの層に響く情報を届けられるのではないか。知識は更新しつづけることが大切。だから私たちのメディアも常に、旬の情報を提供しつづける」と、橘氏は、女性の体や健康問題に関する発信や、年齢・性別問わず言葉にして話すことの重要性を伝えていきたいとの展望を語った。
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■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
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