食品ロス削減の新たな鍵:フードドライブと子ども食堂
(2025.1.15. 公開)
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日本では毎年約570万トンもの食品が廃棄されていますが、その多くはまだ十分に食べられる状態のもの。一方で、生活に困難を抱える人々の数も増加しています。
こういった状況の解決策の一つとして注目されているのが「フードドライブ」と「子ども食堂」です。この記事では、フードドライブと子ども食堂の現状や活用状況を探るとともに、私たちができることについて考えてみたいと思います。
フードドライブとは?
フードドライブとは、家庭で余っている食品を、スーパー、コンビニ、自治体などの回収拠点やイベントに持ち寄り、地域の福祉施設、子ども食堂、生活困窮者支援団体などに寄付する活動のこと。
フードドライブは1960年代のアメリカで、地域コミュニティが貧困層を支援するために始めたのが起源とされており、現在では多くの国々に普及しています。
生活保護世帯が約85万世帯に上り、子どもの貧困率も先進国の中では高い水準にある日本では、フードドライブは食品ロスを有効活用しながら生活困窮者を支援する重要な役割を果たしています。
回収する食品には、「未開封であること」「賞味期限まで2カ月以上あること」「常温保存が可能であること」「製造者または販売者、成分表示またはアレルギー表示があること」など団体によって条件がありますが、寄付自体は難しいものではありません。回収拠点の一つであるファミリーマートやダイエーでは、店内に設置されている回収ボックスに持参した食品を入れるだけ。誰でも気軽に参加することができます。
子ども食堂との連携による相乗効果
フードドライブと似たような取り組みとして注目されるのが「子ども食堂」です。
子ども食堂は、経済的に困窮している家庭の子どもやその家族に、無料または低額で食事を提供する場として、2012年に東京都大田区で始まりました。以降、急速に拡大して現在では3,700カ所以上の子ども食堂が存在しており、単なる食事の提供に留まらず、孤食の解消、食育の推進、居場所づくり、地域住民との交流や教育支援の場としての役割も果たしています。運営団体は、NPO,自治体、個人、企業など様々です。
フードドライブと子ども食堂は、連携により相乗効果を生み出すと言われています。
神奈川県では、地元のフードドライブが地域の子ども食堂に定期的に食材を提供しており、子ども食堂は運営コストを抑えつつ、さまざまなメニューを提供することができています。こういった活動は、食品ロス削減と子どもの食の支援、地域の食支援ネットワーク構築を同時に行っている好例といえるでしょう。
各地でのフードドライブや子供食堂の活性化事例
日本各地で行われている、地域のイベントなどを活用したフードドライブ活動の事例や子供食堂との連携事例をいくつか紹介します。
・利用者を拡大して地域交流の場に
多くの子ども食堂が、子供の利用を基本としつつ、高齢者など大人たちにも利用の門戸を開いています。
大阪府堺市の子ども食堂『ともちゃん』は、近隣のスーパーマルシゲから食材や調味料を無償で提供してもらっています。これも一つのフードドライブ活用といえるでしょう。また、食堂では子供から大人までの参加者やスタッフの間で、多くの新しい交流が生まれています。市内で会った時に挨拶を交わすといった小さなものはもちろん、介護に興味のある高校生が『ともちゃん』での出会いをきっかけに、介護資格の取得を目指すようになったなど、地域内でのさまざまな層が交わる場になっています。
多様な人々に訪ねてもらうために、地域の文化活動や趣味のクラブを併設している子ども食堂もあり、世代を超えて地域住民が交流する場として、住民のつながりを強化する役割を果たす子ども食堂が増えています。
・地域イベントとの連携
地域のイベントとしてフードドライブを開催し、食品ロス削減に関わる機会や地域支援の意識を高める機会を創出する団体や企業も増えています。
江戸川区、板橋区、世田谷区など多くの区民祭りで、フードドライブを実施して食品を提供する取り組みが行われていたり、十文字学園女子大学や国士舘大学をはじめとする大学の文化祭でも、学生の呼びかけによりフードドライブを実施しています。こういったフードドライブの実施が、学生や地域の人々にとって、食品ロスやフードドライブについての学びの機会となるとともに、地域団体や自治体、子ども食堂との交流のきっかけになっています。
・フードドライブと災害支援
企業や自治体が備蓄している防災用食品は、定期的な入れ替えが必要です。農林水産省は、賞味期限が近づいた未使用の食品を廃棄せず、フードドライブや地域の福祉施設に寄付することを推奨しています。
普及のための課題と私たちができること
多くの利点があるフードドライブと子ども食堂ですが、課題もあります。
フードドライブはまだまだ認知度が低く、概念やモデル自体が広く知られていません。
存在を知ったとしても、どこで実施しているのかがわからなかったり、賞味期限や保存方法などのルールが厳格なため、寄付できる食品が限られることもあります。物流コストや保管スペースの確保、寄付先とのマッチング不足なども課題として挙げられるでしょう。
一方、子ども食堂は、資金や人手などの資源不足やノウハウの不足、行政の支援不足、周囲の理解が得られにくい、といった課題があります。
フードドライブや子ども食堂を継続させていくために私たちとしてできることとして、最も手軽なこととして食材の寄付が挙げられます。乾麺や缶詰など、基準を満たすものがあれば、一つからでも気軽に寄付することができます。
地域全体で支える社会モデル
フードドライブや子ども食堂は、食品ロスを減らし、食べ物を必要としている人を支える大切な活動です。
これらの活動がより多くの人に知られ、社会に浸透していくためには、特定の人だけでなく、地域のみんなが気軽に参加できる環境をつくることが欠かせません。企業にとっても、こうした活動を応援することは、社会への責任を果たすだけでなく、地域の信頼を深めることにつながるでしょう。
食品ロス削減と食の支え合いがひとつになった新しい社会の仕組みを、私たち一人ひとりが考え創造していくことが求められています。
【参考】
・農林水産省サイト
・厚生労働省
・神奈川県
・子ども食堂ともちゃん
・十文字学園女子大学の活動例
■執筆:contributing editor Chisa MIZUNO
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