「食」から広がっていくサステナブル意識 FOOD MADE GOOD Japan Awards 2024レポート【後編】

( 2024.12.24. 公開 )

#サステナビリティ #CO2排出 #フードシステム #未来のレシピコンテスト #FOOD MADE GOODスタンダード #サステイナブル・レストラン協会 #SRA #アップサイクル

フードサービスビジネスのサステナブルな運営をサポート・推進する一般社団法人 日本サステイナブル・レストラン協会(以下、SRAジャパン)が主催する「FOOD MADE GOOD Japan Awards2024」。
食料生産から消費に至るまでのフードシステムの中で、料理を提供する立場からアクションを起こし、こうした課題の解決に向け重要な役割を果たしているレストランを年に一度表彰するこのイベントが、今年も11月18日にザ・キャピトルホテル 東急(東京都千代田区)にて開催された。

レポート後編となる本記事では、SRAジャパンの取り組みの一つであり表彰式と合わせて行われた「未来のレシピコンテスト」の受賞者発表の様子、また今年授与された特別賞の様子などを中心にお伝えする。


レシピを通じて環境社会課題の解決を
若手シェフによる「未来のレシピコンテスト」

未来のレシピコンテストは、SRAジャパンが開催する、30歳以下の若手シェフや調理専門学校生を対象としたコンテストだ。次世代を担う若いシェフが、サステナビリティ課題やその解決について、レシピを通じて考えるきっかけとしてもらうことを目的としている。4回目の開催となる今年は「サステナブル・シーフード」をテーマに行われ、ファイナリスト10名の中から、最優秀賞(1名)、審査員6名がそれぞれ選出する審査員特別賞(各1名)、学生部門賞(1名)が表彰された。

今回、栄えある最優秀賞に輝いたのは、フレンチレストラン「d’ici」橋本元輝氏の「黒鯛のナージュ仕立て 牡蠣の温製」。海水温の上昇により冬も活発に活動するようになった黒鯛が、養殖海苔の食害となっている問題と向き合った一品だ。養殖海苔は牡蠣殻の中で成長させるというが、この黒鯛・牡蠣・海苔という不良好な関係性の食材を一皿に取り込み、ストーリーとして伝えられている点や、自然の熱源を使った調理工程、また調理の技術力の高さが評価された。

橋本氏を筆頭に、今回各賞に輝いたレシピは、深い学びと創意工夫が伝わるハイレベルなレシピと賞された。食害の解消、未利用魚の活用など生産者や地域が抱える課題に向き合ったレシピや、持続的に魚介を供給できるシステムとして養殖を再評価するレシピなど、技術力に加え深い課題意識に基づいた力作が並び、これからの活躍に一同が期待を寄せるコンテストとなった。

【未来のレシピコンテスト受賞者一覧】
<最優秀賞>
橋本元輝氏(d’ici)/黒鯛のナージュ仕立て 牡蠣の温製

<審査員特別賞>
・薬師神シェフ賞、冨成シェフ賞(W受賞)
橋本元輝氏(d’ici)/黒鯛のナージュ仕立て 牡蠣の温製
・生江シェフ賞
山内透子氏(辻󠄀調理師専門学校)/Un plat pour l’avenir〜未来へつなぐバトン〜
・岩澤シェフ賞
及川健一氏(XEX東京 Salvatore Cuomo Bros.)/いすみ産鮑の冷製タルトラ ~千葉の食材とその循環~
・佐川シェフ賞
増田梨乃氏(KOTOWA 奈良公園)/11種の野菜のプレッセ 酢橘鰤花 みょうがの爽やかなソースマヨネーズ
・田中シェフ賞
田村征也氏(ザ・キャピトルホテル 東急)/アイゴの香草バター焼き みかん風味のグラスフッェドバターソース

<学生部門賞>
橋本夏帆氏(島食の寺子屋)/ムロ鯵の砧巻き 海月の梅水晶添え


2024年、特別に授与された二つの賞

今回のアワードにおいては、例年授与される各賞の他、シンボリックな活躍への賞として下記二つの賞が特別に授与された。会場は受賞した両氏の意義深い取り組みと実績への感謝と称賛の拍手に包まれた。
• 特別功労賞/BOTTEGA BLU.(兵庫県芦屋市) 大島隆司氏
• 特別社会貢献賞/日本料理 富成(石川県輪島市) 冨成寿明氏

BOTTEGA BLU.は、SRAジャパン加盟レストラン第一号であり、これまでのアワードでも大賞や各部門の賞を受賞するなど、日本の外食産業におけるサステナビリティ活動で最先端を走る存在である。オーナーシェフ大島氏自身も昨年からSRAジャパンの理事を努め、本年も能登地域への炊き出し支援をはじめ協会としての活動にも大きく貢献されている。本表彰イベントを目前に急逝された大島氏だが、その功績への深い感謝と哀悼の意を込め特別功労賞が授与された。

日本料理 富成の冨成氏には、2024年に発生した能登半島地震、能登豪雨の被災地における支援活動により特別社会貢献賞が授与された。自らも被災し混乱した状況下にありながら、迅速かつ的確に炊き出しの指揮をとり、栄養価の高い食事を継続的に提供。多くの人々の心身の健康を支えた冨成氏。協力・寄付を寄せてくれた大勢の方への謝意とともに「日本での被災地における食の支援の課題を感じた。今回の経験を元に、被災地における食の支援の仕組みを作っていきたい。」と述べた。



地産地消と能登復興支援につながる食材を使ったフード

アワードセレモニーに先立ち、歓談の場として開かれるカクテルレセプション。提供された数々のフィンガーフードは、SRAジャパンの加盟店であり、今回の会場ともなったザ・キャピトルホテル 東急のシェフたちの手によるものだ。地産地消の観点で使用された近隣農家の食材や、2024年地震と豪雨で大きな被害を受けた地域の復興支援という観点から使用された能登地方の食材が、鮮やかで美しい料理となり、参加者を楽しませた。



食のイベント「サステナブル テーブル」を複数回にわたり開催するなど、近年、食におけるサステナブルな活動の発信や促進を積極的に行うザ・キャピトルホテル 東急。ホテル総料理長の曽我部 俊典氏は「普段使う機会の少ない小規模農家の食材など、生産者の顔とハートが見える材料を使うことができて非常に嬉しい。今回たくさんの食材を協賛いただいたが、全てを使い切るつもりでメニューに網羅した。サステナブル テーブルなどのイベント活動を通じ、ホテル内のレストランスタッフも様々な食材に柔軟に対応できるようになっている。そんな我々の学びや成果をお披露目できれば。」と語った。

画像左:ザ・キャピトルホテル 東急 総料理長の曽我部 俊典シェフ(左)と、SRAジャパン プロジェクトアドバイザーの杉浦仁志シェフ(右)。
画像右(上下):おむすびにまぶされた昆布パウダーは、出汁をとった後の昆布のアップサイクル。


サステナブルに向き合うレストランの広がりが、生活者への意識浸透にもつながる

2024年は年明けとともに発生した地震、9月の豪雨災害を受け、協会と加盟店が一丸となって能登支援に力を注いだ年として、本イベントでも多くの活動への称賛が集まった。
地震や水害の多い日本において、被災地における食に関する課題や、外食産業としての関わりの可能性が見えた年だったとも言えるだろう。

SDGsの国連採択以降、自治体や企業などを中心にサステナブル活動への意識は近年高まりを見せるが、生活者にも意識が浸透しているとはまだまだ言い難いのが現状である。そんな中、多様な業態で生活者の身近にある飲食店は、「食」という行為を通じて広く気づきを与え得る、力強い存在だ。
今回受賞したレストランをはじめ、多くの加盟レストランが実践する取り組みが更に広がることで、ゆっくり、しかし着実に課題意識は浸透し、我々一人ひとりがより良い選択ができる未来につながるはずだ。

そしてまた、サステナブルな「食」を体現する飲食店の姿に触れる生活者の一人でも多くがその価値に共感し、選択をしていくことで、 “FOOD MADE GOOD”はさらに広がり理想的な循環ができていくだろう。


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【参考ページ】
一般社団法人 日本サステイナブル・レストラン協会公式ページ


■執筆:contributing writer Ryoko Hanaoka

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