サステナブルな在り方を模索・体現するレストランを表彰 FOOD MADE GOOD Japan Awards 2024レポート【前編】
( 2024.12.24. 公開 )
#サステナビリティ #CO2排出,フードシステム #未来のレシピコンテスト #FOOD MADE GOODスタンダード #サステイナブル・レストラン協会 #SRA
食材や食品の廃棄、輸送によるCO2排出、乱獲による生態系の破壊や、劣悪な労働環境下での生産など、現代のフードシステムが非常に多くのサステナビリティ課題を抱えていることは、すでに多くの人の知るところだ。食料生産から消費に至るまでのフードシステムの中で、料理を提供する立場からアクションを起こし、こうした課題の解決に向け重要な役割を果たしているレストランを表彰するイベント「FOOD MADE GOOD Japan Awards 2024」が、ザ・キャピトルホテル 東急(東京都千代田区)にて2024年11月18日に行われた。
主催は、一般社団法人 日本サステイナブル・レストラン協会(以下、SRAジャパン)。
サステイナブル・レストラン協会(SRA)は、本拠地であるイギリスをはじめ現在世界32カ国にネットワークを広げているが、その日本組織であるSRAジャパンも2018年の設立以降、加盟レストランやパートナーとして参画する企業・団体を徐々に増やしながら活動を続け、サプライヤー・レストラン・消費者コミュニティの構築を通じ日本におけるフードサービスビジネスのサステナブルな運営をサポート・推進している。そして2021年から始まり今年で4回目となった本表彰イベントも年々規模が拡大。会場は賑わいを見せ、活動の輪の広がりが感じられる場となった。
今回はこのアワードの様子を、前編・後編でレポート。
前編である本記事では、メインとなるアワードセレモニーにて表彰された各賞の詳細を、受賞理由なども含めてお伝えする。続く後編では、SRAジャパンの取り組みの一つとして本表彰式と合わせて行われた「未来のレシピコンテスト」の受賞者発表の様子などをお伝えしたい。
いま、外食産業にとっての“GOOD”は何か?
サステイナブル・レストラン協会(SRA)では「FOOD MADE GOODスタンダード」というグローバル基準を設け、調達・社会・環境の3指標に紐づく10項目に基づいた独自のレーティングにより、加盟レストランのアセスメントを行っている。達成度に応じて星付き店舗として認定され、今年は一ツ星・二ツ星・三ツ星合わせて12のレストランが認定表彰を受けた。
さらに、22のノミネートレストランの中から、「大賞」、「BEST調達賞」「BEST社会賞」「BEST環境賞」、そしてパートナー企業による特別賞である「BESTリサイクル賞」「BESTフェアトレード賞」が選ばれた。
大賞/スタッフが同じ方向を見て進める職場環境と、地域と協働した継続的な能登支援
本年の大賞に選ばれたのは、PIZZERIA GTALIA DA FlLIPPO(東京都練馬区)。昨年に続き、連続での大賞受賞となった。調達・社会・環境のどれもが高いポイントである同店は「理想を理想として終わらせることなく、実現可能性を追求。日々の仕事に落とし込んでいる」として、代表の岩澤氏をはじめとするスタッフの姿勢が審査員から高い評価と称賛を得た。
同店は今年、地元練馬区を拠点として能登地方の災害支援活動にSRAジャパンとともに継続的に取り組んだ。支援物資の調達から現地への運搬に至るまで、通常の営業と平行しつつ長期間支援を継続することは決して容易ではないが、支援に際しては更に地元地域の人々をも巻き込み、協力を得て活動していたという。困難な取り組みであってもスタッフが同じ方向を見ながら継続して力を注ぐことのできる職場環境、そして多くの協力・賛同を得られる地域コミュニティとの良好な繋がりが、兼ねてより備わっているからこその成果だ。
「その姿勢は日本国内にとどまらず、世界の食に関わる人々に希望と勇気、覚悟を持つことの重要性を伝えてくれている」とプレゼンターのニールセン北村朋子氏は賞し、あわせて「多忙な飲食店がいかにして持続可能な社会への架け橋となれるのか。同店の活躍を参考に、多くの食の関係者が学び、実践に繋げてくれれば。」と願いを述べた。
BEST調達賞/草原維持に欠かせない放牧牛など、地元食材の利用
BEST調達賞を受賞したのは、20年にわたり地元食材を使った料理の提供を続けるantica locanda MIYAMOTO(熊本県熊本市)。同店を経営する宮本氏の調達は、いわゆる地産地消にとどまらないという。例えばメイン食材として扱う熊本の“あか牛”は、牛舎ではなく草原で放牧飼育する生産者から仕入れをしている。日本の草原で最も広大な面積である阿蘇の草原だが、牛の放牧はこの草原の維持に欠かせぬものであり、こうした生産者からの調達が高く評価された。魚介や野菜も含め常時50ほどの地元生産者と関わりながら地産食材を使うことにこだわり抜く宮本氏は、受賞を受け「地元の生産者と繋がりを持って(料理の提供を)続けることは自分にとっては当たり前のことだったが、結果として受賞に繋がった。地元の食材を使うことが、結果的に環境を守ることにつながると信じている。」と語った。
BEST社会賞/スタッフの意見を取り入れた店舗運営や地域コミュニティ支援
“スタッフの公平な評価・処遇”“健康的な食事の提供”“地域コミュニティの支援”という3つの軸で評価・選定される本賞。受賞したOPPLA’! DA GTALIA(東京都練馬区)はこの3軸がバランス良く高ポイントであり、とりわけ、従業員との面談やフィードバックを丁寧に実施し日常的にスタッフの意見を取り入れた店舗運営を実践している点が評価された。更に同店は能登半島地震における積極的な炊き出し支援、地域の子どもたち向けピッツァ教室など食育を含むコミュニティの支援にも主体的に力を入れたという。
受賞を受け同店 平間氏は「能登での炊き出しを通じ、温かく美味しく、安全で健康的な食事は人を笑顔にするものだと実感した。スタッフ全員で協力しながら進んできた一年だった。」と振り返り、レストランと社会との繋がりや相互作用の意義を、身をもって体感した様子を窺わせた。
BEST環境賞/コンポストを利用して食品廃棄物を資源化
BEST環境賞は、ザ・キャピトルホテル 東急内のオールデイダイニング「ORIGAMI」(東京都千代田区)が受賞。各項目のポイントが高いことに加え、食品の端材をアップサイクルすることや、朝食提供にて余ったパンの持ち帰りの取り組み、シェフが講師となる勉強会を開催し社内の知見を高めるなどの地道な取り組みが突出している。中でも特筆すべきは、食品廃棄物をコンポストで処理し資源として活用している点だ。プレゼンターをつとめた井出留美氏(食品ロス問題ジャーナリスト)は「ゴミの約80%を焼却処分する日本は世界でも温室効果ガスの排出量が多い国であり、そのコストも莫大。」と語る。このような課題を抱えている現状に対し、同店の実践する焼却処分に頼らないゴミの処理と活用は、業界にとっても今後の可能性を感じる事例と言えそうだ。
BESTリサイクル賞/ホテル内各部門が一丸となった継続的な取り組み
特別賞であるBESTリサイクル賞は、SRAジャパンの企業パートナーとして、紙パックリサイクルの推進プロジェクトを協働する全国牛乳容器環境協議会によって選定・表彰される。受賞した千代田エリア(ザ・キャピトルホテル 東急 オールデイダイニング「ORIGAMI」/中国料理「星ヶ岡」/日本料理「水簾」)は、この紙パックの回収リサイクル活動に、ホテル内各部門が一丸となって取り組み、かつそれを継続して行っていることが高く評価されての受賞。業態柄、宿泊客の協力を得る難しさが推進の課題になる中でも、ホテル全体として継続的な実践がなされている様子からは、スタッフ一人ひとりにまで意識と行動が浸透していることが窺える。
BESTフェアトレード賞/生活者の認知度・関心を高める積極的な活動
本賞は、SRAジャパンと協働する特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパンによって選定・表彰される特別賞。5月に実施された「フェアトレードミリオンアクションキャンペーン」に参加した飲食店の中から、本年は小川珈琲 本店(京都府京都市)が受賞した。
小川珈琲では20年前からフェアトレード商品を取り扱っているというが、キャンペーン期間中には特に、店舗での訴求強化や、各所イベントへの参加を通じ広くフェアトレードの啓発に力を注いだことが、受賞に繋がった。
コーヒー豆は産地の多くが発展途上国であり、劣悪な労働環境での生産や不適正な価格での取引が問題となっている。小川珈琲株式会社 取締役の小川雄次氏は受賞コメントに際し「近年ではこうした問題の社会認知・関心も徐々に広まっているが、一般の生活者の中ではまだまだ認知度が低い。今後もフェアトレード活動を積極的に進めて、広めて行きたい。」と展望を語った。
※続く後編記事では、表彰式と合わせて行われた「未来のレシピコンテスト」の受賞者発表の様子、また今年授与された特別賞の様子などをお伝えする
>> 後編につづく
【関連記事】
・食のサステナビリティをリードする 【 FOOD MADE GOOD JAPAN Awards 2021 】レポート
・巻き込み力で好影響が波及 FOOD MADE GOOD Japan Awards 2022 サステナビリティに配慮した飲食店を表彰
【参考ページ】
・一般社団法人 日本サステイナブル・レストラン協会公式ページ
■執筆:contributing writer Ryoko Hanaoka