食べることで漁業と食卓の未来が明るくなる?
もっと知りたい、「未利用魚」のこと

(2024.11.28. 公開)

#未利用魚 #鮨ブーム #冷凍技術 #フードロス #漁獲量 #養殖生産量 #水産資源 #廃棄 #エシカル消費


せっかく水揚げされながらも、何らかの理由で市場に出回らない「未利用魚」の存在を知っていますか?

ヘルシーで栄養価が高いことや、グローバルな鮨ブーム、アジアやアフリカの経済成長に伴う購買力の向上、冷凍技術や物流の進化などにより、世界的により多く食べられるようになっている魚介類。

争奪の激しさから魚の価格は高騰しており、「そのうち高級魚は日本で食べられなくなるかも…」といった話もささやかれる中、味も鮮度にも問題がないのに廃棄される「未利用魚」の存在が注目を集めています。

この記事では、積極的な活用が漁業やフードロスに光をもたらすかもしれない未利用魚が注目されている背景や、商品やサービスへの展開例などについて紹介していきます。


食べても問題ないのに捨てられてしまう魚

未利用魚とは、漁獲されたにもかかわらず、様々な理由から価値が認められずに廃棄される魚のこと。日本では、水揚げ量の30~40%が未利用魚として廃棄されると言われています。

廃棄の主な理由としては、サイズや形(大きすぎる、小さすぎる、一部の欠損や形が整っていない)、消費者や市場でなじみがない(食べ方がわからない、骨が多い、味にクセがあるなど)、品質や鮮度(輸送中に鮮度が落ちやすい品種など)、流通コストなどがあります。


未利用魚の活用が漁業やフードロスの活路に

日本では、漁獲量と養殖生産量が年々減少しています。

2018年の漁業・養殖生産量は約424万トンと、ピーク時の1970年代(約1200万トン)に比べて大幅に減っていますが、この背景には、過剰漁獲や海洋環境の変化、漁業従事者の高齢化や新たな従事者の不足などの課題が存在します。

このような状況において、多くのメリットをもたらしてくれる存在として注目されているのが「未利用魚」なのです。

・持続可能な漁業に貢献
3割以上にものぼる未利用魚を廃棄せずに活用することは、水産資源の有効利用につながります。漁業者はこれまでと同じ収穫量で新たな収益を得ることができるようになるでしょう。また、未利用魚を活用してそのおいしさを広めることは、マグロ、鮭など乱獲の危機にある人気魚種に偏った漁獲を緩和し、海の中の生態系のバランスを保つことにもつながるはずです。

・フードロスの軽減
日本では年間約522万トンの食品ロスが発生しており、そのうちの一部が未利用魚などの水産廃棄物となっています。未利用魚を活用することで、食品廃棄物を大幅に削減できる可能性があります。

・地域振興への貢献
未利用魚を活用した缶詰やレトルト食品、ペットフードなどの開発が、地域にとって多様な収入源を生み出す可能性もあるでしょう。地域特有の未利用魚を使った郷土料理や新たなメニューにスポットライトがあたりブランド化されれば、高価格での販売が可能になることに加え、観光産業への波及効果も期待できます。

・豊かな食文化やエシカル消費の推進
消費者が未利用魚を知ることは、日本の漁業の現状を知ることや多様な魚種を楽しむ機会を提供することにつながります。未利用魚が流通していくことは、人々に気づきの機会を与え、環境や社会に配慮した選択を促すことにつながるはずです。


未利用魚を食べてみたいと思ったら
増えつつある商品や外食産業

個人、漁業、地域、環境など各方面にメリットが大きい未利用魚の活用ですが、実際に未利用魚を食べてみたいと思ったら、まずは通販を利用するのが一番の近道と言えそうです。

・通販やサブスクで新しい魚にチャレンジ
生産者と消費者を直接つなぐサービスを展開する「食べチョク」や「ポケットマルシェ」では、未利用魚の詰め合わせを購入することができます。一部の生産者は、珍しい魚の調理法やレシピなどを付けて販売。魚の種類を選べない分、やや割安であったり、珍しい魚を食べることができると人気を集めているようです。


食べチョクで届く未利用魚の詰め合わせセット 

株式会社ベンナーズの「フィシュル」は、全国各地で水揚げされた天然魚・未利用魚を活用したお魚ごはんのミールパックを届けるサブスクリプションサービス。獲れたての旬の魚を調理してミールパックで届けるだけでなく、アレンジレシピも添えることで、魚食普及も同時に目指しています。


毎回どんな魚が届くか楽しみになるフィシュル 

・レストランや回転寿司でも未利用魚が
まだ数は少ないものの、未利用魚を使ったメニューを提供する外食産業も登場しています。

麻布台ヒルズに店舗を構えるPizza 4P'sは、ゼロウェイストなど地域に根差したサステナビリティを実現するレストラン。こちらのグランドメニューのイカスミリゾットでは、三重県熊野の定置網漁で発生する規格外イカを使用しています。

また、大手回転寿司チェーンのくら寿司では、未利用魚や低利用魚を活用したお寿司を商品化しています。期間限定・数量限定で「キャベツニザダイ」や「シイラ」、「ボラ」などを提供し、利用客たちから「意外においしい」と好評を得たそうです。

くら寿司で提供された低利用魚「ニザダイ」の握り 


未利用魚を食べて、食の豊かさを体験しよう

未利用魚を食べることは、海の資源を活用して循環させる方法の一つです。

知らない魚を食べることや新しいメニューに挑戦することは、食生活を多彩にし、豊かにすることに一役買ってくれるはず。

そしてその行動が、漁業に携わる人や地域の活性、フードロス削減につながるとしたら、とても楽しい試みだと思いませんか?


参考:

数字で理解する水産業(水産庁)
漁業生産の状況の変化(水産庁)

■執筆:contributing editor Chisa MIZUNO
#ウェルネス #ビューティ #コンセプトメーカー #全国通訳案内士

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