【サステナブル・ブランド国際会議2024】伝わっている?「JSBI」を活かしたサステナブルコミュニケーションのすすめ

(2024.4.23. 公開)

#サステナブル・ブランド国際会議2024 #SB国際会議 #JSBI #SDGs # #森林資源 #生物多様性 #温室効果ガス排出量 #サステナビリティ #水と衛生 #ウォーターポジティブ


2024年2月21・22日に、東京国際フォーラムにてサステナブル・ブランド国際会議2024東京・丸の内が開催されました。

サステナブルブランドジャパンの調査によると、生活者の約9割が知っている言葉となった「SDGs」。企業がSDGsを意識したコミュニケーションを行うことは、その企業の社会的な責任を示すと同時に、生活者からの信頼を得る手段となり得るため、ますます重要になっています。今回は、企業が自社のサステナビリティ活動を生活者に伝えていく際のポイントや、その際に役立つ「JSBI」について議論が交わされた、以下のセッションを紹介します。

セッション『JSBIを活かしたサステナブル戦略とは』

登壇者
• 県立広島大学 江戸 克栄氏(ファシリテーター)
• サントリーホールディングス株式会社 北村 暢康氏
• nest [SB Japan Youth Community] 入江 遥斗氏
• nest [SB Japan Youth Community] 藤井 玲緒氏




企業のサステナビリティコミュニケーションに役立つ「JSBI」とは

セッションではまず、県立広島大学の江戸氏よりJSBIの詳細についての説明がありました。

JSBI(Japan Sustainable Brands Index)は、生活者から見た企業のSDGsに対する取り組みやブランドイメージを調査・分析し、指数化しているものです。この調査の特徴は、SDGsやサステナビリティ活動に対して関心の高い生活者(消費者)の視点を重視し、彼らのその認識が実際の購買行動などにどのような影響を及ぼすのかを分析している点です。

(JSBIについて説明する県立広島大学の江戸氏)

JSBIでは、2つの得点を算出しています。まず1つ目は、生活者が企業に対して「SDGsに貢献していそうだ」というイメージを持っているかという「SDGs貢献イメージ得点」。そしてもう1つが、企業の具体的なサステナビリティ活動の内容を認識しているかという「SDGs評価得点」です。この2点の評価を比較することで生活者とのコミュニケーションの課題が見えてくると言います。詳細な仕組みは以下の図のようになっています。


例えば、以下の図はSDGsの17の目標に関して、企業が取り組むべきと生活者に思われている項目と、企業が取り組んでいると生活者に思われている項目の比較ができる図となっています。図の中で、赤線が、企業が取り組むべきと思われている項目で、棒グラフが、企業が取り組んでいると思われている項目です。


赤線で示された結果は、時代の流れも反映され、例えばコロナ禍では健康の項目が高くなっていたと言います。「このギャップを見ていただくと、世の中で注目されているにも関わらず、企業がやりきれていないところがわかる」と、江戸氏はその活用方法について話します。また、時系列でデータを見たり、同業他社との比較でデータを見たりといった活用方法も紹介されました。


サントリーのJSBI結果とサステナビリティの取り組み



企業の分析例として、サントリーの結果が紹介されました。生活者からサントリーが取り組んでいると思われている項目で高かったのが、「水と衛生」や「健康」「飢餓」で、これは業界全体で同様の傾向があると言います。

サントリーのJSBIの結果を受けて北村氏は「我々はリサイクルの取り組みも力を入れているので、「消費と生産」も少し高くなっている。「水と衛生」や「陸の保全」といったところが高い点に関しては、天然水の森活動など、森を守る活動が生活者にきちんと伝わっているのではと解釈している」と話しました。

(サントリーのサステナビリティ活動を語る北村氏)

サントリーにとって水は最も重要な資源であり、地域との貴重な共有資源です。そのため、2003年から水を育む森自体を育てる「天然水の森」活動を行っています。使う量を上回る水を大自然と一緒に育む「ウォーターポジティブ(Water Positive)」を掲げ、工場で汲み上げている地下水(天然水)の2倍以上の水を涵養すべく、全国22箇所で土壌保全型の環境林整備を行っています。

「こうした取り組みを生活者の身近な商品と結びつけ、しっかりと伝えていくことも大事にしている」と北村氏は話し、会場ではタレントを起用してウォーターポジティブについて訴求するテレビCMが流されました。

他にもサントリーでは、2030年に自社の温室効果ガスの排出を2019年比で半減させるという目標を掲げ、CO2排出量ゼロ工場の新設やグリーン水素技術の工場への導入等の気候変動対策を進めています。しかし、JSBIの結果を見ると、生活者からはその取り組みが認識されておらずギャップを埋めていく必要があるということがわかります。


どうすれば企業の取り組みは生活者に伝わるのか


生活者は、企業の広報や宣伝を、どんな媒体で受け取っているのでしょうか。性別や年代別の情報収集媒体を見てみると、どの年代においてもテレビが第1位となっています。「若者はテレビを見ないと言われて久しい。たしかに家でテレビが流れていてそれを見るというのは減ってきていると思うが、スマートフォンやパソコンなど依然としてテレビはさまざまな形で触れている人が多いと思う」とSustainable Brands Japan のユースコミュニティであるnestの入江氏は話します。

同じくnestのメンバーであり現役高校生でもある藤井氏も、テレビCMで流れる企業のキャッチコピーや伝えたいメッセージは頭に残っていると言います。一方で、実際に何か商品を買おうというときは、SNSやGoogleで検索をしているとも。さらに、なにか商品を選択する時に、サステナブルかどうかといった軸で選択する人は藤井氏も含めて少ないのではと、若者の購買行動についてリアルな声を届けました。

(若者の購買行動について話す藤井氏)

一方の入江氏は、サステナブルかどうかといった軸で商品選択をする機会はあるものの、商品パッケージのみを見てそれが伝わるかというと難しい、と日頃感じている課題感を語りました。この話を受けて北村氏は、「サステナビリティに関して何かニュースリリースを出す時や、報道で取りあげられる時は、大体サントリーなどの企業名が主語になる。しかし、世の中の生活者の身近にサントリーはいない。身近にあるのは商品だったりする。商品とサステナビリティ活動をつなげて生活者に伝えていく必要がある。」とサステナビリティを生活者に伝えるときの主語の大切さを語りました。

また、生活者への長期的なコミュニケーションの必要性についても触れられました。「例えば高校生だと自分の意思で使えるお金というのは限られている。これから先、大人になり、買い物の選択肢が増えてきたときに頭の中にブランドや企業のサステナブルなイメージや愛着が形成されていることが大事だと思う」と、入江氏は語ります。

(長期的なコミュニケーションの必要性を話す入江氏)

これを受けて北村氏も「15秒のテレビCMのメッセージ1回で伝わるわけではないし、やり続けて、言い続けることが大事。水と生きるというキャッチコピーを言い始めたのは2005年くらいだったと思う。20年ほど言い続けてやっと人々の頭の中に残り始めているので、それなりの時間は必要だと捉えている。」と、息の長いコミュニケーションについて語りました。

多くの企業が取り組みを本格化させているサステナビリティ活動ですが、生活者とのコミュニケーションに悩む企業も多いのではないでしょうか。今回のセッションで紹介されたJSBIは、企業の取り組みが生活者に伝わっている分野や伝わっていない分野、取り組みの優先度が高くなかったけれど、生活者からは期待をされている分野など、企業の発信と生活者の間にあるギャップを把握するのに役立つものと言えます。


■執筆:contributing editor Eriko SAINO
#ファッション #トレーサビリティ #エシカル消費 #人権 #フェアトレード #気候正義

お問い合わせはこちら