ジェンダーレスコスメで性別に縛られず自分らしいメイクを楽しもう

(2024.2.14. 公開)

#ジェンダー#ダイバーシティ#ジェンダーレス #コスメ #多様性 #LGBTQ+ #Z世代 #性的マイノリティ 

ここ数年、「ジェンダー」という言葉を耳にする機会が増えているのではないでしょうか?
ジェンダーとは、生物学な性とは違い、男らしさや女らしさなど、社会的・文化的に作り出された性のことを指します。「子育ては女性中心で行うもの」「男は外で働くもの」といった文化的につくられた性の意識や先入観を、わたしたちは知らず知らずのうちに受け入れてしまいがちです。
こういった社会的・文化的につくられた性別(ジェンダー)を問い直し、すべての人がジェンダーによる差別や暴力をうけることなく、のびのびとその人らしく生きることができる社会にしていこうという動きが、世界的に起こっています。


ジェンダーレスとは?

ジェンダーレスもその考え方の一環であり、「男女の区別をなくす」という意味で使われています。たとえば、男性は青色、女性は赤色、男性はパンツ、女性はスカートといった決めつけをせず、好きなものから選ぶことができるようにするのはジェンダーレスな考え方です。


ジェンダーフリー、ユニセックス、ジェンダーニュートラルとの違いは?

ジェンダーレスと似た言葉として、ジェンダーフリー、ユニセックス、ジェンダーニュートラルなどがありますが、根底に流れる「性差に縛られず、その人らしく生きることを尊重する」という考え方は共通しています。
ジェンダーフリーとは、言葉の通り、社会的・文化的性差から自由になること、性差の概念に縛られないことを指します。
ユニセックスは「男女兼用」「男女の区別がない」という意味でファッションアイテムに用いられることが多い言葉です。
ジェンダーニュートラルとは文字通り性的に中立ということであり、ジェンダーにとらわれない中立的な考え方を指します。ジェンダーレス、ジェンダーフリーは和製英語なので、海外ではジェンダーニュートラルという表現が一般的です。


ジェンダーレスな商品が支持を集めている

これまで、性別は男性と女性のみであることを前提とした考え方や制度が社会に深く根付いていたため、性的マイノリティが疎外感や生きづらさを感じたり、また差別などを受けたりする原因となっていました。また、性的マイノリティでなくても、「デートでは男性が多く払うべき」「女性はニコニコとかわいらしくいてほしい」といった風潮を息苦しく感じる人も多く、「男らしさ・女らしさ」の固定概念で生きづらさを感じている人は多く存在しています。
いま、Z世代を中心に「自分らしさ」「自分の心地よさ」を大切にする人が増えており、自分らしさを表す一貫としてジェンダーレスな商品やサービスが支持を集めています。性別にとらわれることなく自分の好みに合ったものを選べ、自分らしくいることができる、そんなアイテムの需要はますます高まっていくことでしょう。


<参考>
Z世代のジェンダーに対する意識調査『SHIBUYA109 lab.調べ』
【電通総研コンパス第11回調査】ジェンダーに関する意識調査(2023年)



ジェンダーレスなメイクブランドが増加中

これまでスキンケアやヘアケアで増えていたジェンダーレスな製品ですが、メイクにも広がってきています。
アメリカの化粧品ブランドNARSは2020年から俳優の横浜流星をイメージモデルに起用していますし、イヴ・サンローランはJO1を起用しています。他にも、吉沢亮、SNOW MANのラウールなど著名な芸能人がメイクブランドの広告や女性誌・男性誌を問わず表紙に起用されています。最近では、男性向けの情報誌やサイトでメイクの仕方を開設するページも増えているほか、メイクの範囲も、ファンデーションやアイブロウにとどまらず、アイシャドウやリップにまで広がっている傾向です。
ジェンダーレスなメイクのトレンドや実際の購入層、プロモーションについて、ジェンダーレスコスメブランド<TOWI(トーイ)>を運営している遠藤礼菜さんにお話を伺いました。


―TOWIは「ジェンダーレス」「多様性」といったキーワードを掲げるコスメブランドですが、このようなコンセプトのコスメブランドを立ち上げた経緯を教えてください。

遠藤さん(以下遠藤):男性はこうあるべき、女性はこうあるべき、といったジェンダーの偏見や無意識のカテゴライズがない世界になれば、一人ひとりの個性や多様性が受け入れられて、どんな人でも生きやすくなるはずです。そんな世界をつくっていくことに、企業として貢献したいという想いがありました。性差にこだわる人はまだまだ多いとはいえ、ジェンダーレスを表現することがかっこいいという流れが生まれつつあるのは喜ばしいことだと思います。TOWIでは、ベースメイクアイテムよりもカラーアイテムの方がより自己表現につながりやすいのではという考えから、まずはリップティントを発売しました。洋服やアクセサリーと同じように、自分らしさを表現するための一つのツールとして、男女問わずリップを使うというカルチャーを広げていきたいです。

―リップティントの購入者はどのような方々ですか?

遠藤: 20代~30代前半の方々で、公式オンラインショップでの男女比は3:7くらいです。男性の購入者は美容意識が高い方やメイクに興味がある方、唇の血色が悪いため色味を足したい方などがいらっしゃいますが、全体としては、リップのカラーリングや、マスクにつきにくく色持ちが良いといった理由で購入される方が多いです。


―ジェンダーレスなメイクアイテムとしてどのような点を工夫されましたか?

遠藤:男女ともに手に取りやすいパッケージであるために、白を基調としたシンプルな外箱にしました。リップティントのカラー展開も肌になじみやすいニュアンスカラーを3色と、色味のないクリアの全4色展開として、色をつけるのはまだ抵抗があるが唇に変化をつけたいという方の要望に応えるようにしています。

マーケテストとして男性たちにリップティントを使ってもらったところ、重ね塗りで色の出方を調節できるため、赤身が強い色を気に入る方も多かったです。
また、ビジュアルイメージも男女それぞれのモデルを起用していたり、SNSの投稿写真も男性・女性の偏りがでないように配慮しています。


―ブランドを知ってもらうために工夫していることは?

遠藤:TOWIは日本と台湾で発売しているのですが、どちらの国でもインフルエンサーの影響が非常に大きいです。台湾は特にそうですね。
当社がもともとSNSやインフルエンサーを使ったマーケティングを行っている会社なので、その強みを生かして、美容、ファッションに強いインフルエンサーたちに商品をお渡しして感じたことをそのまま投稿していただきました。
インフルエンサーの方々に素の唇の色によるリップティントの色味の出方の違いや付け心地をリアルに表現してもらえたのはとてもありがたかったです。オンラインショップだけでは伝えることのできない細かい情報が、オンラインで購入する後押しをしてくれました。
男性の購入者をさらに増やしていきたいので、今後は男性インフルエンサーに使ってもらう機会を増やしていきたいと思います。
オフラインでは現在全国のロフトで展開中ですが、ポップアップも積極的に行っていきたいです。


―ジェンダー平等やジェンダーの多様性はどのような利点があると思いますか?

遠藤:性別の偏りがなくなることで、活動や選択の幅が広がるはず。私が子供の頃は女の子は赤いランドセル、男の子は黒いランドセルが主流でしたが、いまは性別にかかわらず水色、茶色、ピンクなど、子供たちが好きな色を楽しんでいる。小さいころからその時に自分が身に着けたいと思う色を取り入れる習慣はとても素敵なものだと思います。
当社は日本と台湾でビジネスを行っており、私自身も台湾に住んでいたことがあるのですが、台湾では多様な価値観が受け入れられていて、LGBTQ+に関していえば、男性同士、女性同士のカップルが楽しそうに手を繋いで歩いている姿をよく見かけます。周りの人も気にしない様子でごく自然な光景です。LGBTQ+に限らず、価値観や趣味・趣向、感覚の違いは人の数だけあると考えています。周りの目を気にすることなく自分を素直に表現できる世の中は誰にとっても居心地がいいでしょうし、TOWIを使うことで自分を自由に表現できるお手伝いをできればと思います。

ダイバーシティやインクルージョンにもつながっていくジェンダーにとらわれないという考え方。男女問わずメイクを楽しむことは、それぞれの価値観や好きなことを否定することなく、そのままであることや自分らしさの表現を後押ししてくれる行為として、これからますます拡大していきそうです。

■執筆:contributing editor Chisa MIZUNO
#ウェルネス #ビューティ #コンセプトメーカー #全国通訳案内士

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