【サーキュラーエコノミー】ガンプラも、紙おむつも、消化器も。 消費者と協働で目指す、循環型の社会づくり

(2023.11.6. 公開)

#3R#循環型の社会#サーキュラーエコノミー#デジタルプロダクトパスポート#紙おむつ#おくすりシート

10月は、国民や事業者に対して3R(リデュース・リユース・リサイクル)に関する理解と協力を求める3R推進月間です。昨今では、不要なものをもらわない「Refuse(リフューズ)」や修理して長く使う「Repair(リペア)」を入れて5Rと呼ばれることもあります。世界全体がものを作って捨てる時代から、捨てるものを減らし循環させる時代へと移行しようとしています。


世界全体が目指す、サーキュラーエコノミーへの転換

サーキュラーエコノミーの先進地である欧州では2015年、サーキュラーエコノミーを2030年までの成長戦略の要として位置づける「サーキュラー・エコノミー・パッケージ」を公表。2020年には、「新サーキュラーエコノミー行動計画」が公表され、54の具体的な行動の策定に踏み込みました。消費者が製品を長く使えるよう、修理や部品、耐久性に関する情報にアクセスできる「修理する権利」を強化した他、重点分野として7つを定めました。EUではサーキュラーエコノミーの転換により、2030年までに、0.5%のGDP増加、70万人の雇用創出に繋がると言われています。

さらに2022年に発表された「持続可能な製品イニシアティブ」で注目されているのが「デジタルプロダクトパスポート(DPP)」です。これは、デジタル技術を使い、製品の原料の調達から廃棄後の再資源化まで、ライフサイクル全体に渡る製品の持続可能性を証明するための仕組みです。例えば、再生素材はどれだけ含まれているのか、修理は可能か、耐久性はどうかといったサーキュラーエコノミーに関しての情報も含まれます。欧州では、現在市場に導入するための法整備が進められています。日本でも、丸紅などが日本市場へ導入した際の対応を想定したシミュレーションを始めており、今後の展開にも注目です。

(画像出典:「プラスチック資源循環戦略」について│環境省

日本では、2022年に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環法)」が整備されました。これまでのリサイクル法では、特定の製品(家電や自動車など)に対して、事業者に回収やリサイクルの義務を課していました。プラスチック資源循環法では、プラスチックという「素材」を使用した製品全般で、環境配慮設計の促進や回収・リサイクルの仕組みづくりを目指します。背景には、海洋プラスチックが国際的な問題となっていることや、これまで廃棄プラスチックを輸出していた諸外国が規制を強化し始めたことがあり、国内でのプラスチック資源循環体制を強化する狙いです。

資源循環体制を強化するためには、消費者の行動変容も欠かせません。例えば、資源を循環させるためには、確立されたリユース・リサイクルルートに消費者が使用後の製品を持ち込む必要があります。一部の消費者や企業は、すでに循環の仕組みづくりに取り組み始めています。


ファンとともに循環させる、ガンプラリサイクルプロジェクト

バンダイナムコグループ4社は、2021年に共同での大型企画「ガンプラリサイクルプロジェクト」を公表。このプロジェクトは、ガンダムシリーズのプラモデル(以下ガンプラ)のプラモデルの枠部分(以下ランナー)をファンの協力を得て回収し、新たなプラモデル製品へと生まれ変わらせることを目指しています。

(画像出典:ガンプラのマテリアルリサイクル(エコプラ)│バンダイスピリッツ

バンダイナムコは、全国に約200ヶ所ある直営のアミューズメント施設に回収ボックスを設置。ガンプラを購入したファンは、組み立て終わった後に残るランナーを、回収ボックスに持ち込みます。持ち込まれたランナーは、一部はガンプラの生産工場で出る廃プラスチックと合わせてケミカルリサイクル実現のための実証実験用に、残りはマテリアルリサイクルやサーマルリサイクル用に再利用されます。

ガンプラのマテリアルリサイクルでは、集まったランナーをそのまま粉砕して溶かし、プラモデルの成型機に入れます。こうしてできたリサイクル素材のガンプラを「エコプラ」として販売しています。リサイクル活動を啓発するガンダムR作戦の一環であるプラモデル組み立て体験会でも約9万個を配布しました。マテリアルリサイクルは、新品のプラスチックのように色を再現するのが難しく、また強度が弱いという課題があります。

その課題を補うのが、いま実現を目指しているケミカルリサイクルです。ケミカルリサイクルでは、回収したランナーをプラスチックの原料に戻し、そこからもう一度新品のプラスチックに再生することができます。このプロジェクトの初年度回収実績は約11トン。バンダイナムコは、消費者を巻き込みながら、循環型社会への取り組みを進めています。


市民の手で、ゴミを資源に。レッツ紙カップリサイクル

日本で高いリサイクル率を誇る、ペットボトルや古紙。一方で、「雑がみ」のリサイクルは未だ浸透しているとは言えません。実は雑がみが回収されるようになったのは2000年以降と比較的最近で、まだ可燃ごみとして捨ててしまっている人も多いのが現状です。清掃工場に搬入される可燃ごみを見てみると、生ゴミと並び、雑がみがその多くを占めています。

雑がみのリサイクルが浸透しない理由として、どんなことが考えられるでしょうか。そもそも、紙をリサイクルできることを知らず、紙は燃えるからという理由で可燃ゴミとして捨てている人も多いかもしれません。これに対しては、可燃ごみの「燃やせるゴミ」「燃えるゴミ」といった名称を工夫することによってリサイクルを推進できる可能性があります。例えば、徳島市では可燃ごみの呼称を「燃やせるごみ」から「分別頑張ったんやけど、燃やすしかないごみ」に変更しました。他にも福岡県柳川市や京都府亀岡市なども可燃ごみの名称変更をしています。

また、リサイクルできることは知っていても、「雑がみ」にどの紙が含まれるのか含まれないのか、分別が覚えられず複雑なためリサイクルが浸透しないという可能性も考えられます。事実、回収時に「雑がみ」という言葉を用いるより、「雑誌、その他の紙」といった具体的に連想しやすい言葉を用いた方が雑がみを多く回収できたという結果もあります。一見リサイクルできそうな紙コップなども内側に防水加工紙が使われているため、雑がみでは回収できない禁忌品となります。しかしいま、こうした禁忌品をリサイクルしよう、という動きも出ています。

(画像出典:使用済み食品用紙容器リサイクル事業 ”レッツ紙カップリサイクル”│J4CE

内側に防水加工が施されたヨーグルト、アイスのカップや紙コップ。通常はリサイクルできず廃棄されるこれらのカップをリサイクルしようとする取り組みが、2021年静岡県浜松市で始まった「レッツ紙カップリサイクル」です。

浜松市の環境啓発施設「えこはま」に用意された専用回収ボックスで、使用済み紙コップを回収。鍵となるのは、「洗って、乾かして」ゴミを資源に変えている市民です。回収された資源は、紙部分は厚紙の原料として、プラスチック部分は厚紙を製造する際のエネルギーとして活用されています。

適切に分別することで資源としてリサイクルできることを実証するとともに、可燃ゴミの削減や消費者のリサイクル意識向上に貢献しています。活動が目標とするのは、全国への取り組みの拡大と、それによる使用済みの食品用紙容器類が再生利用される社会の実現です。


自治体や地域住民と取り組む、世界初の紙おむつリサイクル

(画像:使用済み紙おむつは、もう“ごみ”じゃない 図解でわかるユニ・チャーム紙おむつリサイクル│ユニ・チャーム )

ユニ・チャームは、自治体や地域住民、教育機関と協力し、世界で初めて紙おむつの循環型リサイクルモデルを実現しました。様々な素材が何層にも重なった複雑な構造の紙おむつは、リサイクルが難しく、使用済み紙おむつの本格的なリサイクルは、世界でもほとんど事例がありません。ユニ・チャームは、北海道大学等の協力も得て独自の技術で特別な処理を施し、安全できれいな状態の素材に戻すことに成功しました。

2016年には、全国でも有数のゴミの分別回収を実施する鹿児島県志布志で紙おむつのリサイクル実証実験を実施。住民は、使用済みの紙おむつを専用の袋に入れて回収ボックスに入れます。リサイクルの効果を調べたところ、リサイクルをしない場合と比べて、CO2などの温室効果ガス排出量を87%も減らせることがわかりました。紙おむつは木材のパルプを主成分として作られているため、繰り返し使うことで森を守ることにも繋がります。

日本では現在、ほとんどの紙おむつがごみ焼却施設で燃やされています。高齢化が進むとともに紙おむつの使用量は年々増加している中、ゴミを資源に変えるユニ・チャームのリサイクルシステムの確立に期待が集まります。


こんなものも?多方面で進む、意外なリサイクル

(画像出典:リサイクルの仕組み│消火器リサイクル推進センター

他にも、「こんなものもリサイクルできるの?」と思うような事例をいくつかご紹介します。1つ目は、世界初の「おくすりシート」のリサイクル。年間の生産・使用量は、国内だけで13,000トン。神奈川県横浜市の一部地域で実証実験を行っており、専用の回収箱で回収されたシートはアルミとプラスチックに分類され、新たなリサイクル製品に生まれ変わります。

廃棄される「マヨネーズ」をリサイクルしようというのはキユーピーです。製造過程で発生する食品ロスは堆肥化を進めていましたが、マヨネーズは微生物による分解が進みにくく、堆肥化できない分は焼却処分をしていました。そんな時、バイオガス発電に取り組む養豚農家と出会ったことがきっかけで、マヨネーズをバイオマス発電の燃料として役立ててもらうことに。この着想から5年後、廃棄マヨネーズの、バイオガス発電への活用が確立されました。

その他、「消化器」や「建材」もリサイクルされています。傷んだ消火器や耐用年数を過ぎた消火器は、特定窓口やゆうパックで回収され、約90%が再資源化されています。建材リサイクルの背景にあるのは、「建材のロス問題」です。工事現場では工期を守るため余分に建材を持ち込まざるを得ない状況があります。この状況をなんとかしようと、廃棄予定の建材を買い取り、必要な人に販売する動きも出始めています。


協働で、これまでにない社会の実現へ

欧州を始め、世界全体で目指している、資源が循環する社会。日本でも様々な分野において波及し始めています。循環型社会の構築には、消費者の行動変容をはじめ、自治体、企業、大学等さまざまな主体の協働体制が欠かせません。未来の持続的な社会を見据えたうえで、今を生きる私たちに何ができるのか、一人一人が考えなければなりません。


【参考URL】
欧州連合(EU) | Circular Economy Hub - サーキュラーエコノミー(循環経済)メディア (cehub.jp)
欧州委員会が新たな「Circular Economy Action Plan(循環型経済行動計画)」を公表 | Circular Economy Hub - サーキュラーエコノミー(循環経済)メディア (cehub.jp)
プラスチック新法とは?5分で学ぶ!│おしえて!アミタさん(amita-oshiete.jp)
プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律 | プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)の普及啓発ページ (env.go.jp)
ガンプラリサイクルプロジェクト~ファンと共につくる未来~ | 循環経済パートナーシップ (env.go.jp)
ガンプラリサイクルプロジェクト|バンダイ ホビーセンター (bandaispirits.co.jp)
ECOPLA エコプラプロジェクト (bandai-hobby.net)
自治体における「雑がみ」回収の 実態把握と回収量への影響要因の分析 (qcweb.jp)
京都市:「雑がみ」の分別・リサイクルの推進について (kyoto.lg.jp)
徳島市「分別頑張ったんやけど、燃やすしかないごみ」って何? | NHK(nhk.or.jp)
使用済み食品用紙容器リサイクル事業 ”レッツ紙カップリサイクル” | 循環経済パートナーシップ (env.go.jp)
使用済み紙おむつは、もう“ごみ”じゃない 図解でわかるユニ・チャーム紙おむつリサイクル-ユニ・チャーム (unicharm.co.jp)
おくすりシート リサイクルプログラム|第一三共ヘルスケア (daiichisankyo-hc.co.jp)
リサイクルの目的 | 消火器リサイクル推進センター (ferpc.jp)
マヨネーズで発電?「もったいない」を価値あるものへ | サステナビリティトピックス | キユーピー (kewpie.co.jp)
捨てられる「未使用の建材」に疑問を感じて起業│NHK(nhk.or.jp)


■執筆:contributing editor Eriko SAINO
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