【世界食料デー】プラントベースや野菜中心の食生活がもたらすメリットとは 企業は人々をどう促せるか

(2023.10.13. 公開)

#世界食料デー #プラントベース #気候変動 #カーボンフットプリント #サステナブル #食の持続可能性


10月16日は、世界の食料問題について考える世界食料*デーです。世界人口が80億人に達する中、気候変動の影響もあり、今後世界全体の穀物収量は減少傾向が予測されています。そんな中、膨大な量の穀物や水を消費しているものの1つとして、牛肉の生産があります。1kgのトウモロコシを生産するには1,800リットルの灌漑用水が必要ですが、牛はこうした穀物を飼料として大量に消費するため、1kgの牛肉を生産するには、その約20,000倍の水の量が必要になると言われています。今後も世界人口が増え、食肉需要が増加していく中で、限りある資源をどのように分かちあっていくべきなのか、考えていく必要があります。

このような背景から注目が集まっているのが、野菜を中心とした食生活です。健康意識の高まりから、世界でも野菜を中心とした食生活を送る人の数が増加しています。今回は、肉食から菜食中心の食生活へシフトした場合のさまざまなメリットや、企業の取り組みを紹介します。

*「食料」のほかに「食糧」という言葉があります。一般的には、「食料」が食べ物全てを指すのに対し、「食糧」は主食、つまり米やトウモロコシ、小麦などを指すと言われています。


野菜中心の食生活は、病気を予防し、死亡リスクを下げる

(画像出典:野菜、食べていますか? - e-ヘルスネット - 厚生労働省


野菜はビタミンやミネラル、食物繊維を多く含み、野菜を多く食べる人は、脳卒中や心臓病、がんにかかる確率が低いことが多くの研究で示されています。バランスの取れた日本型の食生活は、日本が世界有数の長寿大国となるのに貢献したとも言われています。

しかし、食のライフスタイルが多様化している現代において、日本人の野菜の平均摂取量は目標に届いていません。国民の健康増進のために策定されている「健康日本21(第2次)」では、健康な生活を維持するためには「1日に野菜類を350g以上取ること」が目標とされています。しかし、私たちの野菜類の平均摂取量は、男性が約290g、女性が約270gといずれも目標に達していないのが現状です。

(画像出典:Michael A Clark, Macro Springmann, Jason Hill, and David Tilman“Multiple health and environmental impacts of foods”

食品ごとの死亡リスクと環境へのインパクトについて調査した研究では、野菜や全粒穀物、果物は環境インパクトが小さく、死亡リスクを下げるのに対し、赤肉(unprocessed red meat)や加工肉(processed red meat)は環境へのインパクトが大きく、死亡リスクも上げるということがわかっています。


肉食から菜食へのシフトは、気候変動の抑制にも貢献する

(画像出典:Greenhouse gas emissions per 100 grams of protein│Our World in Data


毎日の食事に野菜を積極的に取り入れることは、気候変動の抑制にも貢献します。というのも、世界の温室効果ガス排出量のうち、3割が食のサプライチェーンから排出されています。さらにその4割ほどが畜産によるものとされ、中でも牛肉のカーボンフットプリントは際立って大きいことが指摘されています。カーボンフットプリントの大きい肉の消費を減らし、野菜や植物由来の食品を中心とした食生活へのシフトを進めることは、人々の健康に良い影響をもたらすのみならず、気候変動の抑制にも繋がります。


サステナブルな食への移行は始まっている

(画像出典:日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査 by Vegewel、17/12は2017年12月調査、19/12は2019年12月調査、21/12は2021年12月調査、23/1は2023年1月調査を表している)


大和総研のレポートによると、1998年から2018年のベジタリアン等の年平均増加率は、中南米を含むアメリカで3.9%、ヨーロッパで2.6%となっています。ドイツでは、すでに国民の半数以上がフレキシタリアン、つまり肉や魚といった動物性食品を減らし、植物性食品を中心とした食生活を送っているとされています。日本で2023年に約2400人を対象に行われた調査でも、週に1回以上意識的に動物性食品を減らす食生活を送るフレキシタリアンは、全体の19.9%にのぼることがわかっています。

英国で行われた調査では、ベジタリアンのメニューを25%から50%に増やすと、ベジタリアンのメニューを選ぶ人が8〜15%程度上昇したという結果が出ています。またスウェーデンでは、学校の給食で牛肉等を減らし、野菜を増量するなどのメニューを3週間導入した結果、生徒の満足度は変わらずに温室効果ガスの排出を40%程度減らすことができたといいます。野菜や植物性食品を中心とした生活へのシフトはすでに始まっています。


人々を野菜中心の食生活へと促す企業の取り組み事例


(画像出典:OFFICE DE YASAI | オフィスで野菜を食べて健康に)


忙しい従業員の栄養状態を改善する置き型社食®︎

日々忙しく働く人にとって、日々の食事に野菜を取り入れるのは簡単なことではありません。自社の従業員の食生活や栄養バランスを改善するために、福利厚生として「置き型社食®︎」を導入する企業も増えています。置き型社食®︎は、惣菜などが入った冷蔵庫を企業がオフィスに設置し、従業員がそこから食品を購入できるというものです。例えば「OFFICE DE YASAI」や「オフィスおかん」は、オフィスに設置した専用冷蔵庫などに、新鮮なサラダやフルーツ、こだわりの惣菜などが届くサービスです。1つ100円で手軽に購入できるため、持参したお弁当に一品野菜を追加する、など柔軟な使い方ができるのが魅力です。昨今では健康経営を掲げている企業も多く、今後もこうした福利厚生の導入が進んでいくと予想されます。

インセンティブにより健康的な食品の選択を促す

「健康的な食事をしようとすると、お金がかかる」。そんなイメージもあるかもしれません。英国に本拠を構えるスーパーマーケット、テスコは、健康的な食品を値下げするイベントを毎年1か月間開催しました。通常の食品を購入するよりも健康的な食品を購入する方が価格が安くなる設計にしたことで、健康的な食品の売上高は、前年比で17%増加しました。

キユーピーの新たなブランド「GREEN KEWPIE」から発売された「植物生まれのごま/シーザーサラダドレッシング」も、通常のドレッシングと大差のない価格で販売されています。また、価格以外の訴求ポイントとしては「カロリーオフ」が挙げられます。シーザーサラダドレッシングでは、チーズの代わりに豆乳やみそを使用。これまでに培ってきた技術を活かし、チーズらしいコクとうまみを再現しつつも、通常のドレッシングと比べてカロリーを25%カット。通常のドレッシングを購入するよりも、植物由来のドレッシングを買ったほうがカロリーが低くなるため、普段は植物性食品を手に取らない消費者でも、購入する理由が生まれます。プラントベース市場では調味料のプレーヤーが少なく、「植物生まれのごま/シーザーサラダドレッシング」はグローバル展開も期待されています。

利用者との共創で新たな食習慣を浸透させるZENB

(画像出典:MORE ZENB│ZENB

スーパーフードである黄エンドウ豆でできた麺「ZENBヌードル」は、栄養を摂りながら、無理なくおいしく健康を維持できるのが最大の特徴です。ダイエットのために米やパスタなどの主食を我慢する人も増えていますが、『我慢するのではなく、日々の食生活でおいしく食べ続けることでより健康になれる主食を作りたい』そんな想いから作られました。

日本では馴染みのない黄エンドウ豆ですが、古くからロシアや北欧で親しまれ海外では一般的な素材です。黃エンドウ豆は、通常のパスタと比べて糖質は30%オフですが、植物性タンパク質や食物繊維が豊富で、食物繊維は1日に必要な量の半分が取れます。

一見パスタのようなZENBヌードルですが、実は和洋中さまざまな楽しみ方ができるという、これまでにないジャンルの麺です。そのため、ZENBヌードルを購入してもらうためには食べ方の提案が欠かせません。公式サイトでは、数多くのレシピが掲載されており、レシピを見て実際に作ってみた人がレビューを投稿できる仕組みになっています。さらに、SNSでのレシピコンテスト実施や、大学生とのレシピ開発など、利用者と共創している点も特徴と言えます。レシピ掲載プラットフォームである「クックパッド」でも、ZENBヌードルを活用したレシピが多く投稿されています。食べ続けることで健康になれる、新たな食習慣が広まりつつあります。


食の持続可能性に向けて

身体にとっても、地球環境にとっても持続可能な、野菜を中心とした食生活。従業員のウェルビーイング実現のため、企業は今後、従業員の栄養管理を含めた健康増進に一層取り組むことが求められます。肉食を減らし菜食を増やすという食生活のシフトは、いち個人が日常で取り組むことのできる行動でありながら、自らの健康だけでなく、世の中にも貢献できる行動です。食生活のシフトや多様化はすでに広まっており、企業も消費者とともに食の持続可能性に取り組んでいくことが求められています。


【参考】
Virtual water 世界の水が私たちの生活を支えています 環境省
(1)世界の食料の需給動向と我が国の農産物貿易 イ 食料需給をめぐる今後の見通し 農林水産省
野菜、食べていますか? - e-ヘルスネット - 厚生労働省
食システムの脱炭素化に向けた食行動 一般財団法人電力中央研究所
Plant-Based Food Goes Mainstream in Germany USDA
日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査 by Vegewel
なぜ今、ヴィーガン(ベジタリアン)なのか~重要な示唆は価値観の変化による行動変化~ 大和総研
OFFICE DE YASAI | オフィスで野菜を食べて健康に
公式サイト| オフィスおかん
自然に健康になれる持続可能な食環境づくりの推進に向けた検討会 報告書 厚生労働省
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