コンビニでオーガニックのタッチポイントを拡大
コスメキッチンの新たな挑戦


(2023.6.20. 公開)

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2022年10月にコスメキッチンとファミリーマートの協業でスタートしたオーガニックスキンケアブランド『ミティア オーガニック』。広く普及するには価格がネックといわれてきたオーガニックスキンケアの概念を覆す、手に取りやすい価格と機能性を実現し、20-30代の女性を中心に人気を集めている。
コンビニエンスストアとのコラボレーションの背景や、製品づくりの裏側、そして発売から半年以上経過した現在、ユーザーからどのような反応を得ているかについて、ブランドディレクターの倉田翔子氏(ブランド企画1部部長)にインタビューを行った。


20~30代女性の幸福度が、社会全体の幸福度につながる

コスメキッチンを傘下におくマッシュホールディングスは企業理念に「私たちの発想を形にし、人々に幸せを届ける。」を掲げている。ミティア オーガニックは、この企業理念を体現する新ブランドとして、ホールディングス社長特命でスタートしたプロジェクト。担当の倉田氏は「企業理念である『幸せを届ける』ためにはどうしたらいいかと考え、多くの女性が1日2回行うスキンケア時間に着目しました。スキンケアの時間を充実させることで、肌に触りながら自分の心を感じる、自分に向き合う時間をつくることができる。それにより、女性たちに幸せを届けられると思いました」と語る。

この発想のヒントになったのは、ウェルビーイングを提唱する予防医学者の石川善樹の研究だ。研究によると、20-30代の女性の幸福度を上げると社会全体の幸福度(ウェルビーイング)が上がること、幸福度を上げるには自分の時間をもつことが大事であることがわかっている。そこで、「スキンケアタイムを、心と向き合う、自分を大事にする時間にしてほしい。そして、自分の心と肌に触れると同時に、地球に触れる時間にしてほしい」という願いを込めミティア オーガニックの開発がスタートした。


ブランドディレクターの倉田翔子氏(ブランド企画1部部長)

オーガニックライフへのタッチポイントを増やす

ミティア オーガニックの大きな特徴として、ファミリーマートとの協業という点が挙げられる。1日1,500万人が訪れるファミリーマートの約16,600店舗で、1,000円台に価格をおさえたナチュラルオーガニックスキンケア製品を販売するというのは、物量面でも価格面でも非常に厳しいハードルがあったことは想像に難くない。

「当社としては、いままでオーガニックに触れたことがない方にもオーガニックライフを広めたいという想いがありました。コスメキッチンやビープルに来店される方々はオーガニックに対して理解と共感を示している方が多い。しかし、すそ野を広げていくためには、もっと気軽に触れていただくための機会と製品が必要だと感じていました。新たな接点を求めて様々な協業先様を検討しましたが、重視していたのはオーガニックと地続きとなるサステナブルに対する協業先様の姿勢です。ファミリーマート様は『持続可能な社会を実現し、家族のようにつながる、親しみのあるコンビニエンスストアになること』を、コスメキッチンは『オーガニックなライフスタイルを日本中に届け、人々をHAPPYにすること』を目指しており、両社の見据える方向が合致していると感じ、プロジェクトがスタートしました。コンビニエンスストアという身近な売り場で、ミティアオーガニックがより多くの人々にとってサステナブルなオーガニックライフに触れるきっかけとなることを目指しています」(倉田氏)。



クオリティは諦めない。想いの強さを形に

オーガニックライフへのタッチポイントを増やすというブランドの役割を叶えるために、最も苦労したのが、製品の品質だったと倉田氏は語る。

「私は前職ではハイプレステージのスキンケア製品を開発しており、理想の品質を追い求めて数万円の化粧品をつくってきました。ミティア オーガニックに関しては、価格は1,000円台だとしても、品質の突き詰め方については決して妥協したくないという想いがありましたし、ハイプレステージスキンケアと同等のクオリティを実現したいと考えていました。たとえば、ローションなら浸透感、保湿感、重ね使いしたときの肌への入り方、翌朝の感触といった細かいマップをつくり、理想へと近づけていくために、130回もの試作を重ねました。一般的な成分で行うとしても相当なチャレンジだったと思いますが、オーガニック成分を用いて、ナチュラルオーガニック処方の自社基準に準拠しながらつくりあげるということは、非常に高いハードルでした。正直、他社では2,000円を切る価格でこの機能性と品質は担保できないと思います。よく『どうしてこの品質でこの価格を実現できたんですか?』と聞かれるのですが、利益を圧縮してでもオーガニックライフのすそ野を広げることを現段階では会社として優先している、というお答えになるかと思います。マッシュホールディングスは、企画への想いの強さ、想いを形にすることを大切にしてくれる会社なので、このブランドにかける想いを会社にくみとってもらったという方が正しいかもしれません」

ミティア オーガニックは肌にとって重要な「水」と「オイル」にこだわり、シンプルでありながら1品ずつ効果実感できることを目指している。全アイテムにオーガニックブナエキスをはじめとする20種類もの植物エキス・オイルを配合。


輸送やパッケージでもサステナブルを意識

日本全国約16,600店舗への流通ということも、大きなチャレンジだった。コンビニ流通では、配送の手間や間違いを減らすために、通常、輸送用の箱が必要になるが、輸送後にそれらはゴミになってしまう。不要なゴミをできる限り減らすために、輸送箱をそのまま販売什器として使えるようにデザインを工夫し、素材にはFSC認証紙を使用した。
各製品の容器についても、サトウキビの搾りかすでつくられたバイオマス樹脂や燃焼時に発生するCO2を削減するグリーンナノを採用。製品の外箱は排除し、箱が必要な場合は化学薬品不使用のナチュラルペーパー「コスキチペーパー」を使用している。

フランス郊外のかわいらしいお家とそこから見える豊かな自然をイメージしたパッケージ。


市場の反応は上々。手に取り、使い続けてもらうために
機能をわかりやすくアピール

ミティア オーガニックのコアターゲットは30歳前後の女性。ファミリーマート側も20-30代の女性のお客様を増やしたいという意向があった。実際、製品を購入しているのは20-30代の女性が多く、都市部はもちろん、地方の中規模都市でも売れ行きが好調だという。「コスメキッチンが出店していないエリアの、ナチュラルオーガニックに興味はあるけど使ったことはないという方に、手に取ってもらえている実感があります。1DAYトライアルセットはホテルが近くにある店舗で数を伸ばしており、急にスキンケア製品が必要になった時に、ある程度こだわりをもって選びたいという方にお買い上げいただいているようです」(倉田氏)。売れ行きも好調で、ブランド立ち上げ初年度として高い目標を掲げていたにも関わらず、達成の見込みだという。

ミティア オーガニックは発売して1年未満で既にリピーターが生まれている。「コンビニでたまたま手に取ったスキンケアを使ってみたら、きちんと効果実感がある。調べてみたら、オーガニックでサステナブルな製品でもある。だったら使い続けてみようというお客様が多いのではと予測しています。サステナブルな意識や倫理観で製品を購入する方は少数派。お客様が気になるのは、まず機能、そしてデザイン。ミティア オーガニックでは、機能を伝えるアイキャッチとして、「角栓・黒ずみオフ」「薬用シミ予防」「薬用シワ改善」といったシールを製品に貼っています。オーガニックだと知らなくても、機能・パッケージ・価格でまずは選んでいただき、しっかりと効果を感じていただくことが大事。いいなと思ってブランドを調べたら、ストーリーやこだわりがわかって、ブランドが好きになる。サステナブルを一番に押し出すことが、ブランドを愛してもらうきっかけにはならないと思うので、ブランドを愛してもらうための伝える順番を間違えないように注意しています」(倉田氏)。

この春には、お客様からのリクエストで洗顔料を新たに投入した。今後も、ブランドのコンセプトである「水」と「オイル」にこだわったシンプルなスキンケアのラインアップを主軸としながら、妥協のない製品開発やカテゴリー展開を検討していくというミティア オーガニック。
買いやすい場所、手に取りやすい価格、確かな品質で、今までオーガニックライフに触れてこなかった方々の初めの一歩になるブランドにしたいという想いは、確実に形になっている。



■執筆:contributing editor Chisa MIZUNO
#ウェルネス #ビューティ #コンセプトメーカー #全国通訳案内士

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