EVに特化した体験型ブランドスペース Volvo Studio Tokyo が、 サステナブル・ブランディングの発信拠点に

「Volvo Studio Tokyo(ボルボ・スタジオ・トーキョー)」が、2023年4月8日に東京・表参道にオープンした。「ボルボ・スタジオ」は東京の他にも、ストックホルム、ニューヨーク、ミラノ、ワルシャワ、上海とワールドワイドに展開しているが、EV(電気自動車)に特化しているのは、この「Volvo Studio Tokyo」が世界初となる。日本国内におけるEVに特化したスペースとしても、国内最大級の規模を誇る。ボルボの価値観、そしてサステナビリティの取り組みが「Volvo Studio Tokyo」の至るところに反映されている。その全容を取材した。

サステナブル・ブランディングの拠点として機能する「販売しない」ショールーム

オムニチャネル化の浸透により、昨今では車の検討もオンラインが主流だ。実際の色を確認したり、乗り心地を体感したりという、オンラインで伝えることが難しい”五感”で感じる体験が、リアル店舗に求められる役割といえるだろう。
また、「Volvo Studio Tokyo」の特筆すべき特徴として、従来のショールームにありがちだった敷居の高さを払拭すべく、ここでは車の販売を行わない。セールススタッフの代わりに常駐するのが、“ブランド・アンバサダー”と呼ばれる、ボルボブランドとEVそして、スウェーデンの文化に精通したスタッフだ。EVについて知りたい、たまたま近くを通りがかった、北欧家具やファッションに興味がある、新しいデジタル体験に興味がある…など、購入段階にはないものの何かしらのきっかけでボルボブランドと新しく「つながる」タッチポイントとして、この場が機能する。

ボルボの価値観、そしてサステナビリティはいずれも、人にとっても地球環境にとっても”ウェルビーイング”であることに基づいており、それが「Volvo Studio Tokyo」での体験にも組み込まれている。

たとえばスウェーデンのライフスタイルに根付いた「FIKA(フィーカ)」とは、単なる”カフェタイム”ではなく、心身のリフレッシュやコミュニケーションを活性化するために大切にされている文化だ。「Volvo Studio Tokyo」でも、ストックホルムの特別なコーヒーを味わえるだけでなく、テーブルに設置されたマーカーをアプリで読み込むと、スウェーデンの原風景をイメージした愛らしいモニュメントが出現し、北欧文化を学べる。



デジタルネイティブ世代にフォーカスした体験型コンテンツ

デジタルネイティブな若い世代とのタッチポイントとして、最新のデジタルテクノロジーを融合させ、五感でボルボの世界観を体験できるよう設計されているのも、「Volvo Studio Tokyo」のもう一つの特徴と言えるだろう。「Volvo Studio Tokyo」の入口に設置されているQRコードからアプリをダウンロードすれば、ARを駆使したデジタル体験を通じて、ボルボのフィロソフィーや歴史にふれ、ボルボのサステナビリティについてのトリビアクイズにチャレンジできる。車に関する情報のみならず、創業の地スウェーデンの文化に触れられる体験型の仕掛けも充実している。


(アプリをインストールしたスマートフォンをかざすと、AR技術によりオーロラが表示される)

また、ボルボ車に搭載されたGoogleアシスタント機能により、まるで日常の延長線上にドライブ空間があるかのような親近感と利便性も体感できる。

さらに、展示されているEVの目の前には大きなスクリーンが設置され、実際に車に乗り込んで、臨場感あふれるバーチャルドライブを体験できるようになっているのだ。音声ガイドに誘われながらストックホルムの名所を巡る、約7分間におよぶこのバーチャルドライブは、実際にストックホルム市内を走行しているような感覚を味わえる。


(バーチャルドライブでは、ストックホルムの名所や文化拠点を巡ることができる)

サステナビリティ先進国の「本気」が注ぎこまれたボルボのEV

2040年までに完全な循環型ビジネスにすることをボルボは目標に据える。具体的には、2025年までにボルボの新車に使用される素材の25%をリサイクルおよびバイオ由来で構成する構えだ。また、気候変動対策としてボルボが掲げる「クライメートニュートラル」の実現にむけても、すべてのサプライチェーンと企業活動で発生されるCO2の削減にも取り組む。それにはサーキュラーエコノミーの実践が欠かせない。ボルボは2025年までに、すべてのサプライヤーが100%再生可能エネルギーを使用することも目標に定めている。

また、車内についても足元のカーペットにはペットボトルからリサイクルされた素材が採用されている他、アニマルウェルフェア(動物福祉)そして温室効果ガス削減のために、完全なるレザーフリー化にも積極的に取り組んでいる。そして、それらが単にリサイクル素材だからいい、というのではなく、洗練された上質なインテリアに仕上がっていることがブランドのファンを惹きつける要素になっているのだ。


(AR技術によりスマートフォンに表示されるボルボのサステナビリティに関するトリビア)


車だけでなく、「ボルボ」ブランド全体にサステナビリティを行きわたらせる
「Volvo Studio Tokyo」が入るビルは、100%クライメートニュートラル電力(再生エネルギー)で賄われている。それが、ショールーム移設オープンの場所として選んだ理由の一つだ。さらに、「Volvo Studio Tokyo」のスタイリッシュな空間を彩る建材も、以前のショールームから使える建材を活かしており、可能な限りムダをださないように設計したという。カタログ、アンケート等もすべてアプリに集約され、ファックスも置いていない。DXにより、ペーパーレス化を徹底している。


(青山通りに面した「Volvo Studio Tokyo」の外観)


「ボルボ」というブランドの世界観やその提供価値を、車に乗らない人にも感じてもらえるよう、アパレル等のブランドグッズも展開する。もちろん、その多くはリサイクルや植物由来の素材から組成されている。Tシャツやハットはバンブービスコース素材を使用しており、環境に配慮されているだけでなく、なめらかな肌触りがストレスフリーな着心地をもたらす。バッグは、耐久性・防水性の高い100%リサイクルナイロンから作られている。


(リサイクル繊維や植物由来の素材でつくられたアパレル製品は、「Volvo Studio Tokyo」で実際に手に取ることができる)


EVの心地よさや利便性を感じてほしい

2040年までにクライメートニュートラルを目指すボルボは、業界のなかでもいち早く全車電動化を目指すことを発表した。2025年にグローバルでEV販売の割合を50%(日本国内では45%)まで伸ばし、2030年までにグローバルで販売するすべての新車をEVにするという高い目標を掲げている。

日本政府も2035年までに乗用車新車販売における電動車の比率100%を目標としている。その対策として、国は公共用の急速充電器3万基を含む充電インフラの数を2030年までに15万基設置を目標に、ガソリン車並みの利便性実現を目指すとしている。

インフラを整える側も努力をしている。一例を挙げるとENEOSは、電気自動車(EV)に急速充電器で経路充電サービスを提供する「ENEOS Charge Plus」を開始した。経路充電とは、目的地に到着するまでに足りない分を充電することを指す。基本料金無料の充電会員サービスで、利用料金は1分あたり49.5円。基本料金がなく使った分だけ請求される仕組みだ。既存のネットワークを活かして設置を拡大。2025年度で1,000基以上の設置を計画しており、並行してカーディーラーや商業施設、コンビニ等への展開も視野にいれる。

これらの動きを踏まえて、日本におけるEV市場の成長をボルボはどのように見通しているか? ボルボ・カー・ジャパンの皆木陽氏に現状を聞いた。
「特に輸入車は電気自動車の割合が高まっていて、ヨーロッパの2年遅れ位で普及が進んできている感じです。本格的に普及するフェイズに入ってきたのではないでしょうか。ボルボも毎年1車種の新型電気自動車を日本市場に投入予定で、順調に台数を伸ばしていけると思っています。」」

事実、国の対策として、EV・PHV・FCVを対象に購入補助事業をおこなっており、2022年度は予算額を拡充。補助の上限額を大幅に引き上げた。EVにおいては、これまで40万円だった補助金の上限が、倍額以上の85万円まで増額されている。



(出典:経済産業省 資源エネルギー庁「EV・PHV・FCVを対象に、購入補助事業」


EVを含む電動自動車が日本でどこまで普及するかは、すなわち日本がどのように変わろうとするかにかかっていると言える。私たちひとりひとりがサステナビリティに対して積極的に関わり、選択し、行動に移せるかにかかっていると言い換えることもできるだろう。

「環境配慮のためではなく、心地よいからEVを選ぶ。ここでボルボのEVを体験してもらうことで、そんな風に感じてもらえたら」と皆木氏は笑顔を見せる。

「サステナブルな移動手段のソリューション」は、私たちが生きたい未来をかたちづくる(Sustainable transportation solutions that will shape the world we want to live in.)。ボルボのブランドサイトでは冒頭でこのようなメッセージが謳われている。まさしく、私たちがひとりの生活者として、私たちのくらしが心地よくサステナブルであるために様々な選択肢があることを「Volvo Studio Tokyo」のようなタッチポイントで出会えるというのは、日本の未来にとっても大きな意味があると言えそうだ。



【参考サイト】

Volvo Studio Tokyo

Sustainable for Freedom

VOLVO, Sustainable Transportation

ボルボ・カーズ、動物福祉の一環として、すべての電気自動車でレザーフリーを推進

経済産業省 資源エネルギー庁、自動車の“脱炭素化”のいま

ENEOS Charge Plusについて




■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
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