【サーキュラーエコノミー共創】 産業廃棄物処理業がつなぐ「ゴミ」と「リサイクル/アップサイクル」の接点とは

(2023.3.23. 公開)

#サーキュラーエコノミー #アップサイクル #ゼロウェイスト #廃棄削減


私たちは、ゴミを出さずに生きていくことはできない。にもかかわらず、ゴミのことを実はあまりよく分かっていない。捨てた後に、それがどう処理されるのか。どのようなものがリサイクルされて、どういう素材や状態だとリサイクルできないのか。

「捨てる側と処理をする側がそれぞれ一方通行だったことが、ゴミについて分かりづらくなっている一因。そうではなく、ゴミの課題に対して一緒に共創できるといい。」そう話すのは、株式会社浜田で新たに立ち上げられた『サーキュラーエコノミー共創推進室』チームリーダー 寺井正幸氏だ。

株式会社浜田(以下、浜田)は幅広い廃棄物処理を事業の中心として行う一方で、昨今はサーキュラーエコノミー共創事業に注力する。2022年1月から『サーキュラーエコノミー共創推進室』を立ち上げ、廃棄物処理会社としての強みを活かし、多くのパートナーと連携し、未来のあるべき姿を構築するための実験を行っている。目指すのは、ゴミを資源として今よりもっと循環させていける社会の実装だ。


そもそもゴミ・廃棄物のことを、よく理解していないという課題

・なぜ『サーキュラーエコノミー共創推進室』を立ち上げたのか

浜田は1979年の創業以来、環境ソリューションのファーストコールカンパニーとして、企業や自治体に対して最適な廃棄物処理スキームの提案を行ってきた。その過程で見えてきたのは、ゴミを廃棄する企業や販売店や自治体が、ゴミの廃棄を減らしたいと思いながらも、そもそもゴミについて理解していないという現状だ。「メーカーと自治体との接点がなかったり、市民と自治体との接点がなかったり。それゆえに、ゴミに関する課題解決が進まない」と寺井氏は指摘する。
「浜田としても、そういう課題があることは把握していながら具体的な課題解決にまではこれまで踏み込んでこなかった。あるいは他の業者も取り組めなかった問題だけれども、浜田としてまずはこの課題をどうやったら解決できるかについての実験をして、未来につながる技術や仕組みをつくっていこうと活動している。」寺井氏は、『サーキュラーエコノミー共創推進室』が立ち上げられた経緯について、そう語った。

言うまでもなく、サーキュラーエコノミーは今後あらゆるビジネスにおいて必要とされるスキームだ。企業や地域の課題に対して、浜田はさまざまなパートナーと連携をしてまずは実証実験を行う。サーキュラーエコノミーやアップサイクルに関する取り組みを事業化する前に、まずはそこにどんな課題があるかを掘り下げ、調査を行った上で、技術や仕組みを提供する。


(浜田『サーキュラーエコノミー共創推進室』の活動内容)


循環型社会システムにむかって大きく舵がきられるなか、環境負荷の低減や資源効率を向上させるために、企業には環境配慮型の商品やサービス開発が求められている。環境に配慮した商品開発の場合、考慮すべきは製造プロセスだけにとどまらない。原材料の調達から、生産、流通、使用、廃棄に至るまでの製品ライフサイクル全体をとらえることで初めて、リサイクルやアップサイクルしやすい環境配慮型の商品を設計できる。また、LCA(ライフサイクルアセスメント)の観点から、商品が環境に与える影響度を定量的に整理して、評価することも大切だ。

・太陽光パネルのリサイクルとアップサイクル

浜田では、太陽光パネルのリサイクル事業について約7年の歳月をかけて研究を進めており、ここ数年で少しずつ実績が出てきたところだという。使用済みの太陽光パネルを「ホットナイフ分離法」という技術を用いて、ガラス部分と発電用シートとに分別をして、100%リサイクルしていく。ガラスの部分は断熱材にリサイクルされる。現在は東京と京浜島の2拠点で回収と処理を行うが、今後は需要の高まりに応じて、もっと多くを手掛けられるようにネットワークを構築していく構えだ。


(浜田ホームページ、「太陽光パネルリユース・リサイクルサービス」について)


リサイクルだけでなく、アップサイクルにも太陽光パネルの可能性を模索する。2021年秋には、「LOVE is SUSTAINABLE.(ラブ イズ サステナブル)」をテーマに渋谷スクランブルスクエアで開催されたイベントで、浜田が回収した廃棄太陽光パネルを展示テーブルとしてアップサイクルした。


(株式会社博報堂が社会実装を行うSDGsアクションプラットフォーム「EARTH MALL」で使用された、廃棄太陽光パネルを用いた展示テーブル)

100%リサイクルの実現にむけたメーカーとの共同

製品の設計段階からサーキュラーエコノミーの視点を取り入れられないか、との相談をメーカーから受けることもある。たとえば、自社で生産する製品を自社内でリサイクルできるようなものづくりがしたいと考えているものの、リサイクルが上手くいかないという課題だ。浜田では、そうした課題を解決・改善するために伴走型でメーカーと一緒に取り組んでいる。

メーカーから自社商品の100%リサイクルの実現に向けて何をすべきか? という相談も入ってきている。その際には、実際の商品の解体・破砕等を通じて、100%リサイクルできる商品開発に必要なデータや製品の組成レポート等の提供を行っている。靴、家電、家具などリサイクルに課題が残る商品は複数の素材か組み合わされていることが多く、リサイクルが難しい。パーツそのものを自然由来等のサステナブルな素材に変えることはもちろんだが、素材の組成や製品の構成要素をどれだけシンプルにできるかが、サーキュラーエコノミーの視点においては重要となる。

ゼロウェイスト・タウンを支えるモチベーションの可視化

自治体との取り組みでは、ゼロウェイスト・タウンとして知られる徳島県上勝町と、2022年12月に包括連携協定を締結した。これは、徳島県上勝町が実施するゴミ分別の成果を可視化することにより、ゼロウェイストと豊かな町づくりの実現を加速させることを目的としている。「ゴミの45分別」を行った成果についての調査及びデータ化を浜田が担う。社会・環境・経済の3つの視点から調査を行い、成果を可視化することで、今後の町づくりについて最適なバランスを考えるための判断材料に活用する狙いだ。

徳島県上勝町は2003年に「ゼロウェイスト宣言」を打ち出しており、長年にわたって取り組んでいるだけに、分別するという行動そのものは進んでいる。一方で、リサイクル率や経済要素やCO2排出削減量など、「分別した結果、何がどれだけよくなっているのか?」を具体的に可視化できていないという課題があった。
それらを定量化する指標を作成し、その指標を判断基準として、分別の種類をもっと増やすのか、あるいは減らしてもいいのかといったことを協働で検討していく。


(浜田、徳島県上勝町との取り組み事例について)


過去に行われた町民への調査では、「何かの役に立っているということが具体的にイメージできるといい」との声が多く聞かれた。45もの分別を行うのは非常に手間がかかることだが、ゴミ分別の「大変さ」を「楽しい」に変えるモチベーションは何だろうか。町民にとっての「理想の循環フロー」を書いてもらった中では、「自分がリサイクルしたものが、まわりまわって子どもの文房具になっているとわかると、誰かのためになっていると感じられて嬉しい」という意見があったという。


イベントでの「ゴミゼロ」推進

多くのゴミが発生してしまう機会といえば、多くの人が集う大規模イベントがある。そして飲食を提供するイベントの場合、そこで発生するゴミや食品残渣は、ほとんどが焼却処分されているのが現状だ。
そうした現状を打破したいという想いから、2022年7月に茨城県つくば市で開催された「つくばクラフトビアフェスト」では、アサヒユウアス株式会社・三井化学株式会社と協働して、飲料プラスチック容器を回収し、アップサイクルするという試みを行った。

具体的にはイベント会場内にアップサイクルステーションを設置。そこで使用済みの使い捨てプラスチックカップを回収し、それを浜田が回収・分別・粉砕したあと、三井化学の超大型3D プリンタを活用して「座れるモニュメント」へとアップサイクルするというものだ。


(回収したプラスチック容器をアップサイクルした “座れるモニュメント” )

しかし、回収する場合も、ただ回収ボックスに入れればいいというわけではない。カップに煙草の吸殻が入っていたり、食品の油が付着していたりするとリサイクルが難しくなってしまうのだと寺井氏は説明する。「イベント参加者が、カップを回収ボックスに入れる前に汚れを拭き取ったり、異物を取り除いたり、という小さなアクションが必要。そしてイベントを主催する側や回収する側も、なぜそのひと手間が必要かという情報発信や、行動を促す呼びかけを行うことがとても大事だ」と指摘した。

サーキュラーエコノミーの実現に必要なこと

日本ではゴミの焼却率が8割にものぼる。つまり、大半が100%リサイクルされていない状況だ。この現状をどうにかしたい、リサイクルやアップサイクルしやすい商品開発をしたいというメーカーは、どんなことに注意したらいいのだろうか?

「廃棄する際や、廃棄後の処理方法をイメージしづらいという悩みをメーカーの方からよく聞く。廃棄物処理業を営む自分たちが、うまくその接点に立てたらいい」と寺井氏は応えた上で、続けて「ものづくりの現場においても、新しく分別が必要となるような素材を開発するのではなく、すでにあるリサイクルの仕組みにうまく乗るような商品設計をするといいのでは」と示唆した。

また、生活者の側のパーセプションにおいても、「古きを大事にする、という価値観が日本には元々ある。そこに立ち返るようなものづくり、新しい価値観として訴えかけるようなコミュニケーションを目指していけるといい」
と語り、ゴミを正しく分別する姿勢がカッコいいとされたり、アップサイクル製品が魅力的とされたりといった“新しい価値観”が出ていくことに寺井氏は期待を寄せる。

多様な「ゴミ」の課題にパートナーシップで取り組みたい

「私たちができることは、アップサイクルをしたいと考えている企業や自治体に、うまくパスを出していくこと。新しい仕組みを作ろうとする、その流れを整えていくこと。私たちがアップサイクル市場を開拓していくというよりは、開拓を志す企業や自治体のサポートを行っていきたい」と寺井氏は、リサイクルやアップサイクルの手前にある工程の重要性を強調する。入口での調査や設計がしっかり成されるからこそ、出口のプロダクトが素晴らしいアウトプットになるというわけだ。


(浜田がサーキュラーエコノミー共創推進事業において目指すスキーム)


浜田には「環境ソリューション」への強い思いが根底にある。蛍光灯リサイクルやバッテリーのリユースなど、初期の段階ではたとえ投資額の費用対効果が合わなくても、社会の課題解決に取り組むことで業績を伸ばしてきたという自負がある。「よいも悪いも、まずはやってみようという風土がある。儲けはもちろん大事だが、それよりも、面白いとか社会のためになっているかということに重きを置いて判断している。経済との両立は意識しながらも、原点にある思いは大事にしたい」と寺井氏は言う。
太陽光パネルのリサイクルも7年の歳月をかけて事業化してきた。幾つか、新たな事業構想もある。サーキュラーエコノミーの海外での展開も視野に入れる。そのためにもカギとなるのはパートナーシップ連携だ。

「ゴミのことで悩んでいる企業や自治体の方がいれば、どんなお悩みでもいいので、まずは私たちに相談をしてみてほしい。難しい課題であればあるほど面白いし、やりがいになる。その課題を深堀りするところから一緒に取り組みたい」と寺井氏の言葉に熱がこもる。
メーカーであれば、先述のような環境負荷をかけない商品開発ということになろうが、それだけでなくホテルやモール、イベント会場など、お客様の出したゴミを分別やリサイクルしたいというニーズもあるだろう。漁業や農業などの生産現場で出るゴミの処理問題もある。ゴミの悩みは多様だ。
「ニッチな領域にこそ、私たちが入っていく意義があると思っている」そう語る浜田の『サーキュラーエコノミー共創推進室』は、環境問題が深刻化するこれからの社会において活躍の場をひろげていくにちがいない。



【参考サイト】

株式会社浜田

太陽光パネルリユース・リサイクルサービス

「サステナブル」テーマのイベントに展示テーブルとして廃棄太陽光パネルを提供

上勝町と包括連携協定を締結しました

「つくばクラフトビアフェスト」で飲料容器のゴミゼロに協力 プラカップの回収/リサイクルで貢献



■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
#アート #くらし #哲学 #ウェルビーイング #ジェンダー #教育 #多様性 #ファッション


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