【サステナブル・チャネル・ブランディング】 地球のための、お洒落でカッコいい発信基地「レッド、ゴールド&グリーン(Red, Gold & Green)」


(2023.3.3 公開)

#サステナビリティ #ファッション #環境汚染産業 #気候変動 #社会問題 #LGBTQ+


表参道に位置する、モードなファッション系セレクトショップかと見まがうブティック「レッド、ゴールド&グリーン(Red, Gold & Green)」。それもそのはず、店舗を手掛けるのは、国内外のファッションマニアやクリエイターから支持を集めるビジュアルファッション誌「コモンズ&センス(commons&sense)」です。2022年10月にオープンしたコンセプトブティックが扱うのは、地球環境に配慮した化粧品、食品、ライフスタイル雑貨など。なぜいま、コモンズ&センスがコンセプトブティックを営む意図や、実際に運営してみての手応えや今後の展開について、コモンズ&センス編集長の佐々木香氏に話を伺いました。



ファッションはやめられない。では、どうする?

佐々木氏:これまでファッションが大好きで雑誌をつくってきたが、大きく言えば、それも地球が存在しているからできること。人間がいろんな活動をできるのは、地球あってこそ。アル・ゴアの「不都合な真実(2006年公開)」を観た時に、当たり前の存在で永遠に続くものだと思っていた地球が、もしかしたら壊れてしまうかもしれないと衝撃を受けた。先進国の、とりわけ都会の人間が好き放題やってきた罪は計り知れない。このままでは大好きなファッション、音楽、アートがなくなってしまうかもしれない。「そんな世界ありえない、何とかしなくちゃ」と思ったけど、生まれた時から享受してきた利便性や都会を捨てて、エコ素材の服だけを着て、という生活を送ることは、自分にはとうてい無理。「じゃあ、どうしたらいいんだろう?」と真剣に考え始めた。

自分を支えて育ててくれたファッションが、世界2位の環境汚染産業だという事実もショックだった。「ファッション誌なんてやめてしまおうか…」と考えたこともあった。悩み続けて、ファッション以外の生活の部分で環境負荷をかけないようすることで、なんとかプラスマイナスゼロまでもっていこうと思い、自らのライフスタイルチェンジはもちろん、「コモンズ&センス」「コモンズ&センス マン(commons&sense man)」で気候変動をはじめとする環境問題や社会問題について取り上げてきた。

そんな時たまたま、ニコライバーグマンのギャラリーだったスペースが空いたという話を聞いた。場所が良かったので、何をやるかを決める前にまず物件を借りた。10ヶ月もの間ただ家賃を払っていたが、表参道というファッションの中心地で、これまで誌面で紹介してきたような気候変動や環境保護に関する情報やアイテムを発信していったらいいのでは?と思いついた。ファッションや音楽が大好きな自分たちのフィルターを通して、表層的なパフォーマンスではない地球のための活動をこの場所でしようと決め、「コモンズ&センス」のコンセプトブティックである「レッド、ゴールド&グリーン」を2022年10月22日にオープンした。


什器もポップもショッパーも すべてリサイクル

「レッド、ゴールド&グリーン」を訪ねた方々から、「カッコいい」「アートギャラリーみたい」「ナチュラルセレクトのお店だと思わなかった」そんな声をもらうけど、奇をてらったわけではなくて、ファッションのフィルターを通して、セレクトしたアイテムを表現したらこうなった。黒をベースに、店名であるレッド(私たちの気持ち)、ゴールド(ファッション)、グリーン(地球)の3色をあしらっている。地球を存続させるための活動をコアにおいているから、POPに使っているアクリルも、商品がディスプレイされている什器も、すべてユーズドのものをカスタマイズしており、新しいものは使っていない。ショッパーも用意していなくて、お客様の自宅にある紙のショッパーをもってきていただき、こちらでオリジナルステッカーを貼りつけて再利用している。実はファッション自体が、完全に新しいところから生まれてくるということはなくて、ほぼすべてにオマージュとなるものやソースがある。既にあるものからインスパイアされて新しいものを生み出し、楽しむことを、このブティックでもやっていきたい。



カッコいいものだけを並べたい

ブティックでは、1階はスキンケア、ボディケアやフレグランス、2階はヘアケアやオーラルケアなどの日用品、地下1階はフードやドリンクと約800品目を扱っている。ナチュラルやオーガニックが好きという人から「初めて見た」と言ってもらえるブランドも多い。扱うアイテムは独自の厳しい基準をもとにセレクトしており、『レッド、ゴールド&グリーン』が発行するマガジン内に記載されている取扱いブランドの説明には「FT(フェアトレード)」「PFI(無農薬原料)」「PLF(プラスティックフリー)」など各ブランドが取り組んでいる基準を明記している。そういった選別を行ったうえで、製品のファッション的な要素も大事にしている。自分たちの雑誌も表紙自体がインテリアになることを意識して創ってきた。ファッションが好きな人に「部屋にあって嫌じゃないな」と思ってもらえるような製品を「レッド、ゴールド&グリーン」に並べることで、これまでビジュアル面でナチュラルやエシカルな製品に興味をもてなかった人たちにも、手に取るきっかけをつくれるのではないか。扱うオーガニックワインやクラフトビールも、成分以外はジャケットで選んでいる。ピンとくるものを選んで飲んでみて好みの味じゃなかったとしても、それはそれで経験として楽しいものなんじゃないか。お客様からは「ラインアップ数がすごいですね」「全部おしゃれ。見てて楽しい」「ポップの説明が詳しくて一つひとつじっくり見たくなる」といったうれしい声をいただいていて、実際、滞在時間はかなり長いし、ギフトのために買い物する人も多い。

ディスコみたいな雰囲気の地下にはジュークボックスがあって、無料で好きな曲を再生できる。いまはなんでもデジタルだから、アナログなものが珍しがられる。だからこの店でも、ストリーミングの曲を流すのではなく、敢えてレトロなジュークボックスから流れるレコードの音を楽しんでもらうことにした。ギターのひずみを感じられるような、圧縮されていない音を体験しながら買い物したい人がこの店を訪ねるようになるかもしれない。そういうニッチな面白さを出していきたい。ファッション・音楽・アート・環境問題を行き来するような楽しみ方をしてもらえたらと思っている。


地球のための、お洒落でカッコいい発信基地

来店者は、最初はファッションやメディアの業界関係者が多かったが、最近は近隣の方やリピーターの方も増えて幅が広がっている。とはいえ、もっともっといろんな方に「レッド、ゴールド&グリーン」の存在を知っていただきたい。自分たちは26年ファッションに関わってきて、さまざまな人とのつながりがある。昔はチャラチャラしていた人間が、いま、自分と同じように意識変容して、「地球のために」とユニークなアイテムをつくるようになってきている。昨年12月は世界人権デーに合わせて、ロンドン発の日本未上陸フレグランスブランド『TIMOTHY HAN/EDITION(ティモ シー・ハン/エディション)』とLGBTQ+コミュニティーをサポートするロンドンのLittle Black Galleryによるプロジェクト『BOYS! BOYS! BOYS!(ボーイズ・ボーイズ・ボーイズ)』のコラボレーションキャンドルを販売した。また、バレンタイン期間は、生産量が全体の約3〜5%といわれる幻のカカオ「クリオロ種」と未精製黒糖のみで仕上げた『グリーンゴッド&フレンズ』のチョコレートのアソートセットを販売した。こういうのも全部、昔の仲間とのつながりだったり、そこから生まれた新しい出会いからだったりする。ずっとファッション業界でやってきて、いろいろなつながりがあるからこそ入ってくるエクスクルーシブな情報や製品を発信し、「レッド、ゴールド&グリーン」を、お洒落でカッコいい地球環境の発信基地にしていきたい。



気づきや意識変容のために大切なことは?

環境問題や社会問題についての番組を観ない、本を読まない、実態を知らない人がほとんど。自分だって、たまたま映像を観たからインパクトが大きかっただけ。気づきのために大事なのは、どんな入り口からでもいいから、まずは知ることなんじゃないか。地球環境に興味がなくても、まず「レッド、ゴールド&グリーン」に入ってみてくれたらいいなと思う。
この店の1階には「クライメート・クロック」(IPCCの“1.5℃特別報告書”において地球温暖化をストップするために残された時間をカウントダウンする時計)があり、地下には「触れる地球儀SPHERE(スフィア)」(地球上で起こっている現象や地球の体温と体調の変化を映し出す地球儀)が置いてあったり、NPOやNGOのリーフレット紹介コーナーがあったりする。そういったものに最初は気づかずに、製品だけ、ジュークボックスだけを楽しんでいってもらってもいい。店内のどこに行くか、何を見るかはその人の自由。でも、何度も訪れるうちにふと時計や地球儀に目がいく瞬間があるかもしれない。そこから気になり始めるかもしれない。だから、自発的に知ってもらえる仕掛けはしておきたい。



初心を忘れず、全国10都市を目指して

今後5年くらいの間に、「レッド、ゴールド&グリーン」を日本の大都市10か所くらいに展開していきたい。地球に負担をかけているのは先進国の大都市で、ここでの活動のために多大なエネルギーが必要になっている。そういう場所に「レッド、ゴールド&グリーン」が存在することで、意識や行動が変わるきっかけをつくっていきたい。「レッド、ゴールド&グリーン」のような店で買い物をする人が増えれば、メーカーも余裕ができて、販路が広がり、製品の価格が下がっていく。そうしたら、いまはちょっと手が届かないという人達にも使ってもらえるようになるはず。
一番大事なのは、初動の気持ち。なぜやりたいと思ったのか?「地球、このままじゃ良くないよね」という部分は崩したくない。どんなことでも最初に決めたコンセプトを貫き続けるのは大変だけど、楽な方、儲かる方に流されてしまったら面白くない。最初の想いが大事。想いがないと続けられないし面白くない。
自社のスタッフの幸せを考えたうえで、目先のことや楽な方に流されず、ぶれずにやっていくことが何より大事だと想っている。



深く響くメッセージとともに大阪弁でテンポよく繰り広げられる佐々木さんの話。なかでも、「一番大事なのは初動の気持ち」という言葉は、特に重みを感じました。
「ファッションを楽しみたい気持ちと気候変動は相容れないから、いったん保留しておこう」と思考停止してしまうのではなく、自分たちにやれることを、自分たちらしいスタイルで実践していく「レッド、ゴールド&グリーン」が次はどんなものを生み出していくのか?従来の形に縛られない彼らの活動にワクワクしながら注目していきたいと思います。


■執筆:contributing editor Chisa MIZUNO
#ウェルネス #ビューティ #コンセプトメーカー #全国通訳案内士

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