【RE100とは】企業の脱炭素経営とブランディングのヒント

(2022.10.28. 公開)

気候変動に関する国際的な会議であるCOP(コップ)が、今年も11月に開催されます。気候変動に関しては「世界の平均気温上昇を、産業革命前に比べて2℃より十分に低く保ち1.5℃に抑える努力をする」という世界共通の目的があります。世界的に脱炭素への動きが求められる中、企業の取り組みとして広がっているのが「RE100」です。「RE100って何…?」「RE100のメリットは?」など、今回はRE100を中心に企業の脱炭素経営やブランディングに役立つ内容をお届けします。

RE100とは


まず、RE100とは何かについてお話します。RE100は100% Renewable Electricityの略称です。事業で使用する電力の100%を再生可能エネルギーで賄うことを目標とする企業が加盟する、国際的なイニシアチブです。加盟時点で再生可能エネルギー100%を達成している必要はありません。しかしRE100に加盟する企業は、最低でも2050年までに事業で使用する電力の100%を再生可能エネルギーで賄うことが求められます。

世界と日本のRE100加盟企業

国際的なイニシアチブであるRE100の加盟数は、世界全体で385社、日本企業は2022年10月時点で74社が加盟しています。実際どのような企業が加盟しているのかというと、アップル、シャネル、ダノン、グーグル、エイチ&エム、ナイキなど世界の名だたる企業が加盟しています。日本企業では、リコー、積水ハウス、アスクル、パナソニック、アサヒグループホールディングスなど、こちらも大企業が名を連ねています。なぜ大きな企業ばかりなのかというと、加盟要件が関係してきます。

RE100の加盟方法

RE100に加盟するためには以下の要件を満たす必要があります。

1. 消費電力量が年間100GWh以上であること(日本企業は50GWh以上)
2. 自社事業で使用する電力(GHGプロトコルのスコープ2及び1の電力消費)の100%再エネ化に向け、期限を切った目標を設定し、公表すること
3. グループ全体での参加及び再エネ化にコミットすること
※一番上の親会社から見て、支配率50%以上の子会社全てがRE100の参加対象となります。

出典:FAQ よくあるご質問(RE100参加について)丨JCLP

年間の消費電力量の要件があるため、50GWhに満たない企業は加盟することができません。しかし、RE100に加盟できない規模であっても後ほど紹介する「再エネ100宣言RE Action」というRE100が推奨する他のイニシアチブに参加することができます。

RE100加盟のメリット


RE100は再エネ移行への具体的な目標設定を求めるため、地球環境視点では、脱炭素社会に向けた取り組みが促進されるというメリットがあります。企業視点では、以下のようなメリットがあると考えられます。

化石燃料価格高騰のリスク回避

現在の日本の主要なエネルギーは化石燃料を使用した火力発電由来のものです。化石燃料は、枯渇性資源とも呼ばれ有限な資源であるため、将来的に価格の高騰は避けられません。再エネ化の推進はそのリスク回避に繋がります。

また消費電力の大きな企業が再生可能エネルギーの調達を進めることで、供給側の変革を促すこともできます。再生可能エネルギーの市場規模が拡大すれば、今よりも安価で安定したエネルギー供給が可能となります。

投資家からの評価

投資にESGの視点を取り入れるESG投資が広がっています。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)それぞれの頭文字をとったもので、従来の財務情報だけではなく、これらの要素を考慮した投資のことを意味します。つまり、企業経営のサステナビリティを評価するという概念が近年普及しており、RE100への加盟やそれに伴う脱炭素経営は投資家からの評価にも繋がります。

社内外へのブランディング

RE100への加盟は、企業ブランディングにも繋がります。再生可能エネルギーへの移行の具体的な目標設定やアクションを社内外に公表することで、自社の社員や関心の高い消費者、取引先からの信頼に繋がります。実際に日本で初めてRE100に加盟したリコーでは、参加理由の1つに社内の意識付けを挙げています。

その他、欧米ではすでに再生可能エネルギーが従来のエネルギーと比べて安く調達できる国もあり、そうした国ではコスト低減もメリットに挙げられます。

日本企業の事例①:株式会社リコー

(画像引用:リコー、RE100目標達成に向けて生産拠点における再生可能エネルギー由来電力の活用拡大│株式会社リコー)


リコーは、2017年4月に日本企業で初めてRE100に加盟した企業です。それ以来、各地で自家発電施設の設置や再生可能エネルギー比率の高い電力への切り替え、徹底的な省エネなどを実施してきました。

新設する自社所有もしくは一棟借りの社屋においては「ZEB」導入を進めています。ZEBは、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称です。省エネに加えて太陽光発電などにより電力を自ら作りだすことで、建物内で年間に消費するエネルギー量を大幅に削減した建物のことです。

リコーは使用電⼒の再生可能エネルギー比率を、2050年までに100%、2030年までに50%にすることを目標に掲げています。2030年目標は当初「少なくとも30%」に設定していましたが、2021年に目標の引き上げを発表し、従来目標を8年前倒しして取り組みを加速させています。


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日本企業の事例②:アスクル株式会社

(画像引用:アスクルが目指す環境経営│アスクル株式会社)


通販大手のアスクルは、2016年に開催した「アスクル環境フォーラム2016」において「2030年CO2ゼロチャレンジ」を発表しました。これは、アスクルの事業活動に直接関係するCO2排出と、商品が原料メーカーからサプライヤーを通してアスクルの拠点に届くまでのサプライチェーンとしてのCO2排出の双方を削減していく取り組みです。

2017年にはRE100への加盟を発表し、2025年までに本社および物流センターでの再生可能エネルギー利用率を100%にする中間目標を経て、2030 年までに子会社を含めたグループ全体での再生可能エネルギー利用率を100%にする目標を設定しています。

アスクルは、全国各地の物流センターや事業所で使用する電力を順次再生可能エネルギーに切り替えており、2018年には4拠点、2020年には2拠点で再エネ化を行いました。2021年12月にはグループの中でも最大規模の物流センターで再エネ化を行い、グループ全体で57%の再生可能エネルギー導入率となる見込みです。

加えてアスクルは、事業運営に関する車軸を全て電気自動車にすることを目標とする「EV100」にも加盟しています。RE100で配送拠点の再エネ化が進むことで、電気自動車は充電から走行時までCO2排出をゼロにすることができます。2030年のCO2排出ゼロに向け、RE100とEV100の両軸で取り組みを進めています。

中小企業は「再エネ100宣言RE Action」


これまで話してきたRE100は、消費電力が50GWh以上の企業向けのイニシアチブでした。中小企業など消費電力がそれに満たない企業が参加できる同様のイニシアチブとして「再エネ100宣言 RE Action(以下RE Action)」があります。RE100と同様に、使用電力を再生可能エネルギー100%に変えていく意志と行動を示すものです。RE Actionへの参加はRE100からも推奨されています。

RE Actionに参加する要件は以下の通りです。

1. 遅くとも2050年迄に使用電力を100%再エネに転換する目標を設定し、対外的に公表すること。
2. 再エネ推進に関する政策エンゲージメントの実施
3. 消費電力量、再エネ率等の進捗を毎年報告すること。

出典:再エネ100宣言 RE Actionについて │ 再エネ100宣言 RE Action

RE Actionの場合は年間消費電力量の縛りはなく、企業、自治体、教育機関、医療機関等が参加可能です。参加要件の1では、設定した目標を対外的に公表すると記載されており、自社サイトやプレスリリースに宣言内容を掲載することで、企業ブランディングにも繋げることができます。

中小企業の事例:株式会社大川印刷

(画像引用:再生可能エネルギー100%企業になりました! │株式会社大川印刷)


1990年代から環境経営に注目していたという大川印刷は、横浜市で印刷業を営んでいます。大川印刷はRE Action発足時のメンバーで、2019年にすでに再生可能エネルギー100%企業になっています。

大川印刷では、本社工場の20%の電力を太陽光の自家発電で賄い、残りの80%をみんな電力株式会社で購入した青森県横浜町の風力発電で賄っています。太陽光の自家発電は、ソーラーフロンティア株式会社が横浜市の事業者向けに始めた初期投資0円で設置可能な太陽光発電事業を活用しています。大川印刷は太陽光発電で生まれた電力をソーラーフロンティアから購入する形をとっています。

大川印刷は以前から、印刷にかかったCO2排出をオフセットする「CO2ゼロ印刷」などにも取り組んできました。社会課題を解決できるソーシャルプリンティングカンパニーとして、地域や従業員、お客様、持続可能な社会のために活動してきた大川印刷。第2回ジャパンSDGsアワード「SDGsパートナーシップ賞(特別賞)」受賞や第1回横浜市SDGs認証制度"Y-SDGs"最上位「Supreme」認定、2015年度環境大臣表彰受彰などその活動は広く認められています。

実態を伴うブランディングを

今回は「RE100」や「再エネ100宣言RE Action」など、企業の脱炭素に向けた取り組みに有効なイニシアチブを紹介してきました。何事も目指すゴールを決めないことには実効性のある計画には落とせません。今後脱炭素経営へ舵を切りたい企業や、それをブランディングに役立てたい企業の方はぜひ参加を検討してみてはいかがでしょうか。



【参考サイト】

・サステナビリティレポート2021│リコー

・リコーの新しい環境経営目標とRE100参加について│リコー

・リコー、RE100目標達成に向けて生産拠点における再生可能エネルギー由来電力の活用拡大│リコー

・リコー、再生可能エネルギー使用率の2030年度目標を50%に引き上げ│リコー

・アスクルが目指す環境経営│アスクル

・気候変動・脱炭素│アスクル

・FAQよくあるご質問(RE100参加について)│JCLP

・再生可能エネルギー100%企業になりました!│大川印刷

・CO2 ZERO PRINTING│大川印刷


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■執筆:contributing editor Eriko SAINO
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