【三越伊勢丹 think good 】暮らしのなかでの選択について考える、 百貨店だからできるサステナビリティ

(2022.10.28.公開 )

買い物をする楽しさと、サステナビリティへの貢献がトレードオフの関係になってしまわないように、どうバランスをとるか。エシカル消費やSDGsが大事である一方で、顧客である生活者に何らかの制約や不便さを強いるものであってはいけない。これは小売業やサービス業にとっては重要な課題だ。

義務感や危機感といったネガティブな原動力ではなく、日々のくらしのなかで自然に選べる、自分の心地よさや高揚感を満たしてくれるといったポジティブな原動力であること。エシカルやサステナビリティが“押しつけ”ではなく、“自発的・能動的”な選択になるためには、まずは人の心が「これ、いいな」と動くことからはじまる。そこにソーシャルグッドな要素を、どのように盛り込めるか。それが課題解決の糸口になるのではないか。

三越伊勢丹は22年9月、“めぐる、まわる、つなぐ。“をキーワードに、首都圏5店舗(新宿・日本橋・銀座・立川・浦和) で「三越伊勢丹の考えるサステナブル」を届けることを目的に、think goodキャンペーンを開催。「暮らしのなかで、ひとつひとつの選択に想いをめぐらせること」をテーマに掲げ、“循環”につながる三越伊勢丹らしい商品やサービスの企画を提案した。


(出典:株式会社三越伊勢丹ホールディングス プレスリリース

衣食住を楽しみながら、自分ができることを考える

「think good」は、彩りある豊かな未来へ向けて、「想像力を働かせ、真摯に考えることからスタートする」という想いがこめられた合言葉だ。この合言葉のもと、これまでに3回のキャンペーンが開催されてきたが、第4弾となる今回は2022年9月7日(水)~10月4日(火)の期間中、伊勢丹新宿店をはじめ首都圏の5店舗でキャンペーンが展開された。

衣食住を楽しみながら、持続可能な社会の実現のために、ささやかでも自分にできることで貢献したい。ひとつひとつの選択に思いをめぐらせ、暮らしのなかの選択を少しだけサステナブルな視点で考えてみる。それは地球に、環境に、社会に配慮されているか。長く大切に愛用しつづけられるか。もう使わなくなったときに、捨てる以外の選択肢がないだろうか。すべての人にとって心地よい社会をつくるための循環は、ひとりひとりの意識と、その意識から生まれる選択や行動によって推進されていく。

環境や社会にとっての「good」を考えてみる。「good」な選択をしてみる。そんな意識や行動変容のきっかけとなる数々のプロダクトやサービス、取り組みを、三越伊勢丹は本キャンペーンで打ち出した。

ブランドの周年企画とコラボレーションしたアップサイクル

「3歳から100歳までの人が楽しめるデザインを」をブランドビジョンに掲げる「mintdesings(ミントデザインズ」は、2022年で20周年という節目を迎えた。その節目に、ブランドとしての新たな試みである”Wrapping Project”を伊勢丹新宿店にて開催した。
廃棄予定だった小学校の椅子、使われなくなったドリンクのボトル、傷や気泡が入ってしまったビーカーなどを、ニットやオリジナルテキスタイルで包み、家具やオブジェとして新たな命を吹きこむというものだ。

その他にも「日常生活の時間を豊かにするデザイン」というブランドコンセプトのもと、ウエアや雑貨などさまざまなグッズが並んだ。


(出典:株式会社三越伊勢丹ホールディングス プレスリリース


眠っている宝石を人気ブランドのジュエリーに変身させる


使わなくなったジュエリーをリメイクすること自体は、珍しいことではない。しかし伊勢丹新宿店で実施するのは、顧客が持ち込んだジュエリーを、「カオル」や「ポンテヴェキオ」といった人気のジュエリーブランドが今の気分にフィットするデザインへと生まれ変わらせるというコラボレーションとなっている点がユニークだ。ブランドとの長きにわたって培われた関係性があってこそ実現できる、三越伊勢丹の強みを活かしたサービスだと言える。

これによってジュエリーや宝石をより長く愛用することに繋がるのはもちろん、次の世代へ受け継いでいくことにもなり、プロダクトそのものに新たな価値をもたらす。

老舗「京都紋付」との協業で、持続可能なファッションを

「KUROZOME REWEAR」とは、よりサステナブルな社会のために、お気に入りの一着をずっと大切にするために、黒染めによるリウェアという選択肢を届けるサービスだ。汚れて着ることができなくなってしまった大切な服や色あせてしまってクローゼットの奥にしまったままの服を、黒く染めることにより、新しい服としてもう一度着られるようにする。黒紋付の染め上げ技術を持つ京都紋付との協業により、服を大切にしたい、これからもずっと着続けたいというファッションをこよなく愛するお客さまの想いに寄り添う。



株式会社京都紋付は、日本の伝統的な正装である“黒紋付”だけを100年間染め続けた京都の老舗企業だ。現在は一般顧客向けにも黒染めサービスを展開することで、卓越した黒染め技術の継承とともに、環境問題解決の一環として、廃棄衣料の削減に取り組んでいる。「大切な服を長く着られるようにすることで、サステナブルな社会を実現したい」という三越伊勢丹の想いに京都紋付が共鳴し、パートナーシップを結ぶ運びとなった。2021年3月にサービスを始めたところ、予想を上回る申し込みがあったという。

また同年10月には、伊勢丹新宿本店3階の自主編集売り場「リ・スタイル」の25周年イベントの一環として、企画に賛同した8ブランドの過去シーズンの在庫やサンプルなどを買い取り、“深黒(シンクロ)加工”と呼ばれる黒染め技術を施して販売するという企画も行った。


若手社員が手掛ける等身大のサステナブル・コンテンツ

サステナビリティやSDGsという言葉の認知度は高い一方で、「専門的な知識がないといけない」「自分には完璧にやれる自信がない」など、実践においてはハードルが高いと感じている生活者は多い。

サステナビリティを身近に、気軽に。「こんな小さなことでも貢献できるんだ」という気づきや小さな一歩につなげてもらえたら、との想いから、三越伊勢丹の販売促進部メンバーが中心となって『金曜日のサステナブル』という連載コンテンツを、三越伊勢丹オンラインストアで展開している。


(出典:MITSUKOSHI ISETAN MAGAZINE


愛用している洋服を大切にケアして長く着られるようにする工夫や、日用品も職人の手仕事が光るものを選ぶ。繰り返し洗って使えるストローを探す。ベランダ菜園やベジブロスにトライしてみる。バレンタインデーのチョコレートをフェアトレードにする。

おうち時間や仕事、友人や恋人と過ごす時間など、日々のリアルな暮らしのシーンから綴られるストーリーは、「やらなくちゃいけない」というよりは、「できることから始めてみよう」という気軽さを重視。加えて、「#金サス」という固定のハッシュタグもつけて、SNSでシェアしたくなるような工夫をしている。

三越伊勢丹の社員が自発的に「サステナビリティ」を自分ゴトとして捉え、それを等身大のメッセージとして発信するこのコンテンツは、他の従業員からの評判もいい。さらにそれが「こんなサステナビリティなら私もやってみよう」という顧客の行動や、三越伊勢丹各店で取り扱う商品やサービスへの興味・関心をも喚起するきっかけに繋がれば、顧客へのアプローチとしても大きな効果を生むのではないだろうか。


(出典:株式会社三越伊勢丹ホールディングス プレスリリース

「think good」を合言葉に、みんながつながっていく

三越伊勢丹では「think good」のステートメントとして、「地域産地支援・環境・生態系保護のためのサステナブルな品揃え」「資源循環のための4Rの推進」「文化継承のための文化・技術・感性の発信」を3本柱として表明している。

アートとサステナビリティとの関係性については今後、注目が高まる分野だが、三越伊勢丹では呉服・美術品を長年にわたって取り扱う実績から、伝統工芸の展覧会をはじめ、社会・環境課題と向き合う美術家の展覧会など、文化・芸術を通じてサステナビリティの興味や理解が深まるような機会を設けていく考えだ。

三越伊勢丹には、ファッションやライフスタイルを大切にする延長線上に、サステナビリティやエシカル消費への取り組みを意識するお客さまが多い。
株式会社三越伊勢丹 MD戦略統括部 MD計画部 MD施策担当 若田部氏によると、「さまざまな売り場において、お客さまのサステナビリティへの関心や注目度は上がっていると日々、感じています。think good キャンペーンが一つのきっかけとして機能していて、実際にキャンペーンの回を重ねるごとに参加いただく方も増えています」とのことだ。

バイヤーもサステナブルな商品を探してきたり、イベントを企画したり、サステナビリティへの貢献意識をもってお取組先や生産元など、サプライチェーン上の情報もしっかりチェックしているという。そうした主体的な取り組みの積み重ねがあるからこそ、「think good」という言葉に込めた想いが響いてくる。

バリエーション豊かな選択肢の中から、自分の心の琴線にふれたものを選ぶ。これは買い物における醍醐味のひとつだ。そうした選択肢のなかにサステナブルやエシカルなアイテムが充実してくることも、サステナビリティが日々のくらしの中に浸透するために、とても大事なことだ。

そうした選択肢を充実させるため、また「think good」にもとづく活動機会を拡大するために、伊勢丹新宿本店、日本橋三越本店、三越銀座店、三越伊勢丹オンラインストアを中心に、年に数回"think good"を掲げたキャンペーンを開催している。そのキャンペーン企画のプロセスでは、数多くの企業および団体との連携が欠かせない。
次回の「think good」キャンペーンは2023年4月に開催予定だ。




【参考サイト】

めぐる、まわる、つなぐ。暮らしのなかでの選択について考える。百貨店だからできるサステナブル

"think good"についての考え方

mintdesigns 【Wrapping Project for Isetan Living】

眠っている宝石がブランドのジュエリーに変身

KUROZOME REWEAR

金曜日のサステナブル




■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
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