【後編】SDGs10〜17│企業の具体的な取り組み事例16選

(2022.10.14. 公開)

一般生活者の「SDGs」という言葉に対する認知度は86%に及び、目標達成を目指す2030年に向け、世の中の関心は今後さらに高まっていくことが予想されます。そんな中、自社ではどういった取り組みをすれば良いのか、考えを巡らせている方も多いのではないでしょうか。そんな方のヒントとなるよう、今回の記事ではSDGsに取り組む企業の具体的な事例をご紹介します。後編である今回は、SDGsの10〜17に対する企業の取り組み事例です。SDGs1〜9に対する企業事例は前編でまとめていますので、併せてぜひご覧ください。



SDGsはテーマが幅広く、17の目標と169個のターゲットが設定されています。予算や人員の限られた企業で取り組む際には、まず自社や業界に関連する目標を特定することが重要です。


「SDGs10. 人や国の不平等をなくそう」企業の取り組み事例



「SDGs10. 人や国の不平等をなくそう」では、「国内および国家間の格差を是正する」ことを目標としています。

①三承工業の外国籍の方のマイホーム購入支援

三承工業株式会社は、岐阜県岐阜市に本社を置き低価格・高品質の注文住宅「SUNSHOW夢ハウス」を販売しています。岐阜県の外国人比率は約1.8%で全国4位ですが、ローンが組みづらくマイホームが購入しづらいといった現状があります。三承工業は、そんな外国籍の方に対してローンのアドバイスやサポートに取り組み、今ではSUNSHOW夢ハウス購入者の3-4割が外国籍の方になりました。

②スターバックスのグローバル生産者基金

低収入国のコーヒー生産者の多くは、融資へのアクセスがなく基本的な生活費を稼ぎ家族を養うのに苦労しています。スターバックスコーヒーでは、「グローバル生産者基金」を設立し、小規模農家がコーヒー農園の整備や強化に使用できるよう投資を行っています。


「SDGs11. 住み続けられるまちづくりを」企業の取り組み事例



「SDGs11. 住み続けられるまちづくりを」では、「都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする」ことを目標としています。

①大和ハウスのリブネスタウンプロジェクト

大和ハウス工業株式会社では、「誰もが感動を育める街づくり」を掲げ、開発に関わる街の新たな魅力や価値を作り出すリブネスタウンプロジェクトに取り組んでいます。高齢化率50%の神奈川県横浜市のベッドタウンでは、商店街のほとんどの店が閉店し、高齢者が必需品の買い物に困っているという声がありました。プロジェクトでは、コンビニ併設型コミュニティ施設を建設することで、買い物だけではなく高齢者の見守りや住民の交流ができる場として活用されています。

②川崎フロンターレと富士通のバリアフリーマップ

川崎フロンターレと富士通株式会社は、誰でも安心してスタジアムに来場できるよう、街歩きバリアフリーマップを作成・配布する取り組みを行いました。武蔵中原駅、武蔵小杉駅、新丸子駅から等々力陸上競技場への徒歩ルートが対象で、スロープや段差の有無、多目的トイレの場所などバリアフリーの観点で実際に街を歩き作成しました。


「SDGs12. つくる責任、つかう責任」企業の取り組み事例



「SDGs12. つくる責任、つかう責任」では、「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」ことを目標としています。

①JTの持続可能な農業生産支援

JT(日本たばこ産業株式会社)は、2021年時点で世界各国の5万9,000戸以上の葉たばこ農家と直接契約を結んでおり、これによりトレーサビリティの担保を可能にしています。農家には、土壌、水、大気、生態系といった環境の保全や向上に配慮した上で農作物を生産する「GAP」を遵守することを求め、遵守している農家に対し資金・技術的な援助を行っています。

②ヤッホーブルーイングのフードロスの取り組み

株式会社ヤッホーブルーイングでは、フードロスに関する取り組みをいくつか行っています。2020年〜21年の新型コロナによる緊急事態宣言等で飲食店では多くのクラフトビールが余剰になりましたが、そのビールを捨てずにクラフトスピリッツ・クラフトジンとして生まれ変わらせました。また、品質の改善を積み重ね賞味期限を延長することで、店頭で販売できる期間も長くし売れ残りによる廃棄のリスクも抑えています。


「SDGs13. 気候変動に具体的な対策を」企業の取り組み事例



「SDGs13. 気候変動に具体的な対策を」では、「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」ことを目標としています。

①ユニ・チャームの海外工場含めた再エネ化

ユニ・チャーム株式会社では「2030年までに事業展開に用いる全ての電力に占める再生可能電力の比率を100%にする」という目標を設定しています。2017年1月のブラジルの工場の再エネ化を皮切りに、日本、タイ、ベトナム、アメリカと海外工場を含めた再エネ化を実施しています。

②SHIROのSHIRO ECOSYSTEM

自然素材にこだわったスキンケア・コスメ用品を展開するSHIRO株式会社は、お客様と地球環境を繋げる「SHIRO ECOSYSTEM」という取り組みを実施しています。これはお客様の「エシカルな選択」が地球環境に与える影響を見える化したもので、例えばエシカルな原料を使用した製品は、そうではない製品と比較した時にどの程度CO2排出量を削減できたのかが数値で表示されています。



「SDGs14. 海の豊かさを守ろう」企業の取り組み事例



「SDGs14. 海の豊かさを守ろう」では、「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」ことを目標としています。

①コーセーのSAVE the BLUE

株式会社コーセーは、2009年より沖縄のサンゴ礁を保全するためのSAVE the BLUEプロジェクトを実施しています。2021年度は、スキンケアブランド「雪肌精」の売上の一部を、サンゴを植えつける沖縄の有限会社「海の種」に寄付しました。2012年からは、全国のビューティーコンサルタントが沖縄で環境保護の大切さを学ぶ「サンゴ留学」を毎年実施しています。

②ニッスイの海洋プラスチックへの取り組み

海洋プラスチックゴミの一部は紛失・遺棄された漁具であることが判明しています。日本水産株式では、漁具の海洋流出・破損を防止するための管理ルールの強化を進めると共に、流出リスクの低い素材に切り替えるなどに取り組んでいます。2021年度は、山口県やその他企業と連携し海洋プラスチックゴミをスーパーマーケットの買い物かごにアップサイクルする取り組みも実施しました。


「SDGs15. 陸の豊かさも守ろう」企業の取り組み事例



「SDGs15. 陸の豊かさも守ろう」では、「陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る」ことを目標としています。

①ニチレイフレッシュの生命の森プロジェクト®

一般的なエビの養殖(集約養殖)では、海辺や森林を切り開き養殖池を整備していたため、環境への負荷が懸念されていました。ニチレイフレッシュでは、自然の地形を生かした養殖(粗放養殖)で育てたエビの取り扱いを増やすと共に、収益の一部をエビの産地であるインドネシアカリマンタン島のマングローブ植樹に寄付しています。

②サラヤのボルネオ環境保全プロジェクト

洗剤や食品など多くの製品に使用されるパーム油は、プランテーション拡大による熱帯雨林伐採やそれに伴う生態系の喪失が問題になっています。サラヤ株式会社は、持続可能なパーム油を調達すると同時に、マレーシアボルネオ島の環境保全にも取り組んでいます。緑の回廊プロジェクトでは、プランテーション拡大によって分断された森の間の土地を買い戻し再生する取り組みを、JICA(国際協力機構)やNGOと共に実施しています。


「SDGs16. 平和と公正をすべての人に」企業の取り組み事例



「SDGs16. 平和と公正をすべての人に」では、「持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する」ことを目標としています。

①アサヒホールディングスの責任ある金属供給

アサヒホールディングス株式会社では、貴金属リサイクルの拡大や、人・社会・環境にやさしい貴金属の供給に取り組んでいます。貴金属の採掘では人権問題や環境負荷が懸念されています。リサイクすることでそうした問題の懸念がなく、資源を繰り返し有効活用できます。金・銀は、国際規格に基づき定められた厳しい基準をクリアした認証を得ているものを供給しています。

②フェリシモの幸福のチョコレート

株式会社フェリシモが運営する「幸福のチョコレート」は、チョコレートバイヤーが世界を旅して出会った他にはないチョコレートが購入できます。すべての商品には「LOVE & THANKS基金」がついており、ガーナのカカオ産地で危険な児童労働をなくし子どもの教育を支援するプロジェクトに寄付されます。


「SDGs17. パートナーシップで目標を達成しよう」企業の取り組み事例



「SDGs17. パートナーシップで目標を達成しよう」では、「持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」ことを目標としています。

①UCCのJICAベレテ・ゲラ森林保全プロジェクト

コーヒー発祥の地とされるエチオピアには多くの原生林がありますが、住民はその木材で現金収入を得るために木々を伐採しており、環境破壊が懸念されていました。木材で収入を得る代わりにコーヒーで収入を得ることができるよう、JICA(国際協力機構)は「ベレテ・ゲラ森林保全プロジェクト」を実施。UCC上島珈琲株式会社は、コーヒーの品質を改善する専門家としてプロジェクトに参加し産業として定着させることができました。

②岡山大学のミャンマー医療教育支援

ミャンマーは軍事政権下の教育規制により、医療教育や臨床、研究に関するインフラが乏しく、安全で質の高い医療提供が難しい状況にあります。ミャンマーの未来の医療を担う人材育成のため、岡山大学医療系組織は約20年にわたり約100名の留学生や研修生を受け入れてきました。ミャンマー医療の質的転換と保健医療の充実、国際的なパートナーシップの確立を目指します。



今回は前編・後編に分け、SDGsの17の目標ごとに企業事例を紹介しました。17の目標の文言だけ見るとどうしても大きな話のように思えてきますが、企業事例を読み込むと意外と取り組みのイメージが湧いてくるのではないでしょうか。自社の業界や特性を改めて振り返るとともに17の目標をさらに細かくしたターゲットを読み込むと、SDGsの理解が一層深まります。自社の活動の一歩目としてぜひ取り組んでみてはいかがでしょうか。


>> 前編はこちら



【参考サイト】

・SDGs認知率は86%に上昇│日経ESG

・三承工業株式会社│おおさかATCグリーンエコプラザ

・ともにコーヒーのサステナブルな未来をつくる│スターバックスコーヒー

・上郷ネオポリス神奈川県横浜市│大和ハウス工業

・川崎フロンターレ×富士通株式会社「街歩きバリアフリーマップ」作成のお知らせ│川崎フロンターレ

・葉たばこサプライチェーン│JT

・ヤッホーブルーイングの「クラフトビールでSDGs」│ヤッホーブルーイング

・重要取り組みテーマ:地球の健康を守る・支える│ユニ・チャーム

・SHIROのエシカルな取り組み│SHIRO

・雪肌精“SAVE the BLUE”プロジェクト│コーセー

・サステナビリティレポート2022│ニッスイ

・生命の森プロジェクト®│ニチレイフレッシュ

・ボルネオ環境保全プロジェクト│サラヤ

・SDGsへの取り組み│アサヒホールディングス

・LOVE&THANKS基金│フェリシモ

・森林保全プロジェクト│UCC

・ミャンマー医療教育の質的転換を目指したミャンマー医療人材の受け入れ│岡山大学





■執筆:contributing editor Eriko SAINO
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