三越伊勢丹×都立青山高校「衣服のセカンドライフを見届けたい」 産学連携で4Rに新たな価値提供を

(2022.9.8.公開)

#リサイクル #リユース #サステナブルファッション #ESD #Z世代 #産学連携

百貨店初の常設買取・引取サービスとして三越伊勢丹が運営する「i’m green(以下、アイム グリーン)」は、 産学連携のサステナビリティ活動の一環として、顧客から引取った衣服や小物を東京都立青山高等学校(以下、都立青山高校)に無償で提供する。三越伊勢丹がアイム グリーンを通じて提供したファッションアイテムは、生徒自らがリメイクをし、9月3日 (土)・4日(日)に開催された文化祭「外苑祭」で上演される演劇の衣装に生まれ変わった。

三越伊勢丹 営業本部 オンラインストアグループ デジタル事業運営部 神谷友貴氏と、都立青山高校「外苑祭」担当委員 森本健太教諭、そして実際に衣装を活用した都立青山高校の生徒に取材した。


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(今回の産学連携の取り組みについて話す 左:神谷氏 と 右:森本教諭 )

引取した衣類の、その先までを透明性をもって見届けたい

・歴代生徒たちの“悩み”解決に貢献するインサイト

都立青山高校の「外苑祭」は、生徒による演劇の上演が伝統行事だ。衣装をはじめ、舞台道具なども、 生徒たちがすべて手作りで作り上げていく。しかし決まった予算のなかですべてを用意しなければならず、衣装を生地から制作したり、新たに購入したりといったプロセスが生徒たちに大きな負荷となっていた。そのうえ、コストをかけて用意した衣装にもかかわらず、一部は記念として保管される場合もあるが、多くは廃棄されてしまっていた。

一方、アイム グリーンに寄せられる品物のなかでも衣類の一部は「買取」の対象にはならず、株式会社JEPLAN(旧社名:日本環境設計株式会社)へリサイクルを委託していた。

>>「JEPLAN(旧社名:日本環境設計)」取材記事はこちら


今回の取り組みは、アイム グリーンを担当する神谷氏が同校出身であったことから、引取った衣類・小物の新たな活用方法として「高校時代の文化祭で、使われなくなった衣料の寄付があったら良かった」という自身のインサイトにもとづく発想が起点となっている。

「リサイクルや寄付と言っても、どういう仕組みで、その後どのように使われているのかが見えないことに、もどかしさを感じていました」と神谷氏は話す。「ニーズとしては小さくても、本当に必要としているところ、役立ててもらえる人に届けたいと思ったんです。」

・品物のセカンドライフを提案する事業として

「お客さまはご自身の大切 にしていたお品物に大変思い入れをお持ちです。アイム グリーンの事業を進めるなかで、三越伊勢丹に持ち込んだ後、どこに行くのか、どう扱われるのか、お品物の”セカンドライフ”に想いを馳せておられる方がとても多いことに気が付きました。そんなお客さまの想いを受け、アイム グリーンが実施する寄付は、実際にどこに渡り、どのようにリサイクル・リユースされたのかを透明性をもって真摯にお伝えしたいと考え、今回の取り組みの実現に至りました」


(母校での新しい取り組みへの想いを語る、アイム グリーン担当の神谷氏)


Z世代がこの取り組みを通じて感じたこと

・「未来が楽しみ」と思えた

実際に衣装のリユース、リメイクに携わった都立青山高校の生徒たちは、今回の取り組みをどう感じたのだろうか?


(「外苑祭」副総務長を務める 左:津留桃子さん と 総務長を務める 右:髙橋里緒さん)

「これまで衣装は調達するのがすごく大変だったんです。外装や舞台セットには力を入れていたけど、正直、衣装はどうしようかな、という感じで。でも今回は、ふだん自分たちになじみのある系統とは違う洋服の中から衣装を選ぶことができて、衣装の準備がとても楽しかったですし、いいものができる! とワクワクしました」と、「外苑祭」総務長の髙橋さんは目を輝かせる。

副総務長の津留さんも「三越伊勢丹という有名な、高級な百貨店と取り組みができるなんて、すごいことだなって思います。演劇だから、日常とは違う服が必要なんです。たとえば華やかなドレスやアクセサリーは、社交界のシーンで使いたいなとか。あとは色も、今はベーシックな色の洋服が多いので、それだと舞台映えしないんです。バブル期に流行ったような華やかな花柄や鮮やかでカラフルな色のアイテムは、自分たちの周りでは入手しにくいので、このようなかたちで寄付していただけるのはとてもありがたいことでした」と歓迎する。


(1年2組『アラビアンナイト』の衣装に採用されたブラックのロングジャケット)

・演じる役の性格までイメージして衣装を選ぶ

冒頭の写真で紹介した1年4組の演目『銀河鉄道の夜』では、灯台守の役の衣装にグレーのコートを選んだ。
「寒い場所にいる役だから、襟が広いデザインのものを選びました。襟を立てたときのシルエットもカッコいいなと思って。あとは、この灯台守はどんな性格だろう? と想像しながら、彼の雰囲気に合う色や質感も意識して選びました。」


(衣装だけでなく、「外装」と呼ばれる看板もすべて生徒たち渾身の手作りだ)

衣服をそのままリユースするだけでなく、アレンジやサイズ調整なども生徒たちのアイデアで行う。別の演目を企画・実行した1年7組は、ワンピースを上手にリメイクしている。




(洋服のリメイクを担当した生徒:左 が、アレンジのポイントを解説してくれた)

ある意味、贅沢な体験だ。アイム グリーンに持ち込まれる洋服は、上質素材のアイテムも少なくない。そうした衣服に触れ、さらにそこに自分の想像力を重ねてリメイクするという体験が、生徒たちの創造性を刺激しないはずはない。

となると、この取り組みは、単にムダを減らし、循環型社会のトレーサビリティを高めるという環境面にとどまらず、教育の質の向上やESDの新たなアプローチといった点でも貢献しているとも言えそうだ。

総務長の髙橋さんも、サステナビリティへの関心を示す。
「私は外苑祭で出るゴミの管理もしているのですが、これまでは演劇で使った衣装がそのまま捨てられていたりして“これってまだ使えるのに…”とモヤモヤとしたこともありました。でも具体的にはそれをどう活用したらいいかも、その時はわからなくて。今回のリメイクやリユースを経験したことで、劇のために用意した衣装も、今度はどんな風に使えるかな? とか、できるだけムダにしないように考えるきっかけになったと思います。ムダをできるだけ減らしたいという想いはすごくあるので、ゴミやムダを減らすことにもつながったのが嬉しかったです。」

手と目が届くところからサステナビリティ活動を実践する

リサイクルは大事なことだが、それよりも重要なのは、そのアイテムの使命を全うさせること。あますところなく使い切る、長く大切に着ることだ。
「私たちが今所有している一着をできるだけ長くきましょう。たったそれだけで環境負荷が減らせます。現在よりも1年長く着ることで、日本全体として4万トン以上の廃棄量の削減に繋がります」と環境省も啓発する。


(画像出典:「SUSTAINABLE FASHION」環境省)

買取できずに引取になった品物を、学校法人や外部団体と協業し、リメイクやアップサイクルによって新しい価値に生まれ変わらせる。三越伊勢丹は「捨てる」選択肢をなくすことをゴールに、今後も取り扱いアイテムや資源の活用方法の幅を広げ、持続可能な社会・時代をつなぐ企業施策と連動してサステナビリティ活動の一翼を担っていく考えだ。

サステナビリティやSDGsをとりまく活動がさまざまに多様化するなか、「これをやっておけばいい」というような正解は存在しない。だからこそ、この「アイムグリーン」とZ世代の学生たちの想いが融合した取り組みは、「ムダにしない」とはどういうことかというシンプルな問いに対する、小さくとも重要な指摘を含んだ応え方だと受けとめられる。




■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
#アート #くらし #哲学 #ウェルビーイング #ジェンダー #教育 #多様性 #ファッション


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