いま知っておきたい B Corp認証
取得方法やメリットがよく分かる解説と事例

(2022.8.30. 公開)

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SDGs、サステナブル、エシカル。こうした言葉が多くの人の目に触れるようになり認知度が拡大している一方、社会・環境への配慮を謳う商品が市場に溢れ、関心の高い消費者は、どの企業やブランドが本当に社会や環境に配慮しているか、判断に迷うようになっています。その迷いを払拭できるのが、今回紹介するB Corp認証です。B Corp認証とはどのようなものなのか、その意味するところやメリット、世界や日本での広がりについて紹介します。

B Corp認証とは

B Corp認証はアメリカの非営利団体B Labが運営している国際認証で、公益性の高い優良企業の証として知られています。商品を評価するものではなく企業のあり方自体を評価するもので、社会環境に配慮した事業を行う、透明性や説明責任等に関する厳しい基準をクリアした企業に与えられます。世界83カ国150以上の産業で5000以上の企業が取得しています。

認証取得のメリット

その厳しい基準から認証取得のハードルが高いことでも知られるB Corp認証ですが、取得することで様々なメリットがあります。

関心が高い消費者の信頼

まずは、サステナブルやエシカルに関心の高い消費者からの信頼が得られるという点です。冒頭でも述べた通り、近年日本でもサステナブルやエシカル、SDGsを謳う商品が市場には溢れています。関心の高い層は、表面上ではなく本質的にサステナブルに取り組んでいる企業の商品を望んでおり、本質的に取り組んでいるかどうかを、ホームページや認証マークをチェックして判断しています。企業のあり方自体を厳しく評価するB Corp認証は、そうした消費者の信頼獲得に繋がります。

国際的視点・コネクション

B Corp認証取得により、国際的な視点を得ることができます。社会・環境・透明性・ガバナンスなど、認証取得の過程では様々な角度から自社を知ることになるため、自社と国際的な基準との間にどれほどギャップがあるのかを理解することができます。世界では5000以上の企業が認証を取得しているように、すでに海外展開をしているまたは今後海外展開を考えている企業は特に、認証取得により海外市場からの信頼獲得に有効です。また認証を受けた企業同士で情報交換をし、類似事例を自社に活かす等、B Corpのコネクションは事業と社会性の両立を加速させていく助けにもなります。

SDGsとの親和性

国連に加盟するすべての国が取り組むべき共通目標であるSDGs。SDGsの17の目標のうち関連する目標を見つけ取り組んでいる企業も多いと思いますが、目標及びターゲットはスケールが大きく、中々実際の取り組みに落とし込むのが難しいのではないでしょうか。B Corp認証はSDGsとも親和性があり、SDGsと比較して客観的な指標と定期的な評価を受けられるため、SDGs推進の一貫としても有効です。SDGsやB Corpの推進は、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を評価軸とするESG投資にとっても一定の評価対象となり得ます。

認証の評価項目



B Corp認証の具体的な評価項目としては、「ガバナンス」「従業員」「環境」「顧客」「コミュニティ」の5つです。それぞれどのような評価を行うのでしょうか。

ガバナンス

社会・環境への配慮、透明性、企業倫理などが、企業のミッションや社内規定などにどう組み込まれているのか。また、それを本当に実行しうるかといった企業の能力等も評価します。

従業員

給与、心身の安全と健康の確保、キャリア形成など、企業で働く従業員の満足度やエンゲージメント等を評価します。

コミュニティ

地域の人々の雇用や地域原料の使用、多様性やインクルージョン、市民参加、ボランティア活動など、企業が活動する地域でのエンゲージメントや経済的貢献等を評価します。

環境

企業自体はもちろん、サプライチェーンや製品、サービスにおける、生物多様性、土壌、水、大気、気候など環境への影響や取り組み等を評価します。

顧客

製品やサービス、売り方、プライバシー、セキュリティなどを通して、顧客への責任を果たしているか、また製品やサービスが社会や顧客の課題解決のために提供されているか等を評価します。

B Corp認証を受けるには、まずこれら5つの分野に関する認証試験「B Impact Assessment」において、200点満点中80点以上を獲得することが要件となっています。


世界で存在感を増すB Corp認証



先程触れたように、世界ではすでに83カ国150以上の産業で5000以上の企業がB Corp認証を取得しています。ファッション関連ではパタゴニア、オールバーズなど、コスメ関連ではイソップやザ・ボディショップ、ダヴィネスなど、食品関連ではダノン、ベン&ジェリーズなど、私たちも知っている有名企業も多く取得しています。アメリカでは、認証を取得した企業が1500社以上あり、働く場所としてB Corp認証企業を希望するミレニアル世代も多いと言われています。

最近では、クロエが2021年にラグジュアリーブランドとしては初めてB Corp認証を取得しました。また、オーガニック原料やフェアトレード原料を使用したコスメを展開するWELEDAも、創立100周年となる2021年にB Corp認証を取得。

2022年には、B Corp認証を受けたビューティー関連企業が連合(B corp Beauty Coalition)を結成するなど新たな動きがありました。これは、業界をサステナブルなものにしていくためのイノベーションや研究、消費者の認知向上を目指すために結成されたもので、原料調達・責任ある梱包・環境配慮した物流といった分野に注力していきます。連合に参加する企業は約50社で、後述する日本企業も参加しています。

日本では認知度低く

実は日本ではまだまだ認知度が低いのが現状です。今回の記事で初めてB Corp認証の存在を知った方も多いのではないでしょうか。B Corp認証の制度自体は、2006年に米国で設立されましたが、日本でB Corp認証を取得した企業が現れたのは2016年。日本の認証取得企業を検索してみると、現時点(2022年8月時点)で取得しているのは、14社のみです。アジアの中では台湾が34社とその数でリードしています。

2022年に入り取得企業数が増加

ただ、B Corp認証は日本でもじわじわと広がりを見せており、今後もその増加が見込まれる可能性があります。さきほど日本での取得企業数は14社と書きましたが、実はそのうちの5社が2022年に入ってから認証を取得しています。2021年6月時点では、たった6社だったと言います。

2022年に入り認証取得をした企業の1つが、ビューティー企業のファーメンステーションです。さきほど触れたB corp Beauty Coalitionに参加しているのもこの企業。ファーメンステーションは、発酵技術で循環型社会を構築していくことを目指して設立されたビューティー企業です。岩手県の余剰水田で栽培したオーガニック米で天然由来のエタノールを製造しており、これまでに国際的なオーガニック認証も取得してきました。ゴミが出ない循環型のビジネスモデルが特徴で、エタノール製造の際に出る粕は、化粧品の原料や家畜の餌に活用、さらに家畜の糞は畑の肥料として活用をしています。創業以来、事業性と社会性の両面でインパクトを追求してきたファーメンステーションにとって、そのインパクトを客観的な視点で検証し、学び進化するためにB Corp認証を取得しました。

また、7月には日本のアパレルブランドで初めてCFCLがB Corp認証を取得しました。注目は、CFCLが2020年に設立された創業期の企業という点です。企業が大きくなり資金やリソースが充実してから認証に取り組むのではなく創業期から取り組むことで、B Corpの基準をベースとした就業規則やカンパニーポリシーの策定に取り組むことができ、むしろ近道に。また、創業期から国際認証へチャレンジすることで取引先からの信頼にも繋がったと話しています。

認知拡大のハードルは言語?

B Corpは今後日本でも広がりを見せるのでしょうか。これまで日本に浸透しなかった理由として、言語の壁があると、実際に認証取得に向けて動いている株式会社バリューブックスの鳥居さんは話しています。認証取得のための手続きやアセスメント、認証取得の入門となるハンドブック『The B Corp Handbook』など、認証にまつわる言語はすべて英語です。


(画像引用:B Corpハンドブック よいビジネスの計測・実践・改善 / 撮影:平松市聖 Ichisei Hiramatsu / 提供:バリューブックス・パブリッシング)

そんな言語の壁を取り除こうと、株式会社バリューブックスは『The B Corp Handbook』の日本語版の出版を決定。翻訳の過程も非常にユニークで、通常のように1人が翻訳するのではなく、業種も職種も立場も会社の規模も多様な約30名ほどが、ゼミという形で翻訳をしていきました。B Corp ハンドブックは2022年6月に発売されています。

「サステナブル」が溢れるこの時代、企業としての本質的な取り組みが求められています。B Corpハンドブックが発売されたことで、日本企業の認証取得ハードルの緩和や消費者への認知度拡大に期待が高まります。


【参考サイト】

・鳥居希:B Corp ムーブメントの希望

・B Corp 認証│FERMENSTATION

・「CFCL」がBコープ認証を取得 日本のアパレル初 「世界規模のコミュニティーの中で挑戦してゆく」

・B Corp│B LABO



■執筆:contributing editor Eriko SAINO
#ファッション #トレーサビリティ #エシカル消費 #人権 #フェアトレード #気候正義



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