【 急拡大 フェアトレード市場 】さまざまな業界にひろがるフェアトレードの取り組み事例

( 2022.6.2.公開 )

#フェアトレード #エシカル消費 #コスメ業界 #ジュエリー業界 #エコツーリズム #アップサイクル


毎年5月の第2土曜日は「世界フェアトレードデー」です。それに合わせ5月の1ヶ月間はフェアトレード月間と呼ばれ、世界各地でフェアトレードに関するイベントが行われます。日本では、認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパンがフェアトレードの周知・浸透促進のためのキャンペーンを行っており、別記事でまとめていますのでぜひご覧ください。

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日本でも拡大するフェアトレード市場

まず改めてフェアトレードとは何かについて簡単にまとめたいと思います。フェアトレードとは、生産者や環境に配慮して作られたものを適正な価格で取引し、生産者の持続可能な生産と生活向上を支援する仕組みです。

フェアトレードではない取引では、生産者は市場価格の情報や販売先の選択肢を持たないことから、不当に安い価格で買い叩かれてしまうことがあります。結果として、生産者の生活水準の低下やそのためコスト削減を目的とした児童労働などが起こってしまいます。フェアトレードの商品を買うことは、こうした問題を解決することに繋がります。

2019年度の消費者庁の調査によると「フェアトレード」という言葉は、近年聞くようになった「サステナビリティ」や「エシカル」と比較すると消費者の認知度が高いとされています。しかし、それでも数値としては回答者の27.3%と決して高い数値とはいえません。しかし、コロナ禍を経てその数値の改善も期待されます。

フェアトレード・ラベル・ジャパンの最新の発表によると、2020年から2021年にかけての1年はフェアトレードの国内市場が大幅に拡大した年となりました。2020年の131.3億円に対して2021年は157.8億円と、20%も増加がみられます。



(画像出典:【2021年フェアトレード国内市場規模発表】国内フェアトレード市場規模158億円、昨年比120%と急拡大 , フェアトレード・ラベル・ジャパン)


背景には、コロナ禍における家庭用フェアトレードコーヒーの売上拡大(フェアトレードコーヒー市場は前年比+21%)等が考えられます。また、イオングループを始め小売大手各社のサステナビリティへの取り組みが増加し、プライベートブランドでのフェアトレード商品の拡充がありました。欧米では過去に、小売大手のフェアトレード商品拡充により市場が大きく拡大したこともあり、日本でのさらなる市場拡大にも期待が高まります。

フェアトレードというと、チョコレートやコーヒーのイメージが強いですが、それ以外の業界でもさまざまな角度から企業はフェアトレードに取り組むことができます。ここからは、そのヒントとなるような企業事例をご紹介していきます。


フェアトレード原料を仕入れる

サプライチェーンが世界中に広がる現代では、ものづくりをしている多くの企業が関係するのが原料調達の部分です。


化粧品業界の事例

北海道発のスキンケアブランドである「SHIRO」は、製品に使用するシアバターをガーナの女性団体から仕入れています。SHIROは素材にこだわったシンプルな発想の製品を提供することで知られており、生産者との出会いがものづくりの第一歩だといいます。

シアバターに関しても、直接現地を訪問し女性たちの丁寧なものづくりを見て、ブランド設立当初から直輸入を継続しています。長くガーナに暮らし、ガーナの発展と国交に尽力した日本人が経営する代理店を通して、フェアトレードの基準を満たした直接取引をしています。


(画像出典: ガーナから届く自然のままのシアバター , SHIRO)


他にも化粧品業界ではフェアトレード原料の採用が進んでおり、オーガニック原料にこだわるコスメブランド「amritara(アムリターラ)」では、製品に使用する複数の原料、例えばアフリカのシアバター、モロッコのアルガンオイル、イランのダマスクバラ花油、マレーシアのパーム油などをフェアトレードで仕入れています。「Ash」など美容院を展開するアルテサロン ホールディングスのヘアケア&スキンケアブランド「ennic (エニック)」では、天然の界面活性剤をフェアトレードで仕入れています。製造はインドで行われ、カーストに関わらず貧困層を受け入れ現地に雇用を生み出しています。


ジュエリー業界の事例

ジュエリーは、環境・人権問題と密接に関係しており、例えば原石を採るための大規模採掘による生態系破壊、安価な労働力としての児童労働や安全性の担保されていない労働など、原料の調達において決してフェアとはいえない状況が蔓延しています。

ジュエリーブランド「EARTHRISE」は、貴金属や原石を採掘する人、職人、身に付ける人、すべての人が喜びや誇りに満ちた生き方を送ることの出来る世界を目指しています。EARTHRISEの使用する原石や貴金属は、フェアマインド認証ゴールドとフェアマインド認証シルバーといったフェアトレードのものを使用しています。フェアマインド認証の鉱物取引には、プレミアム(奨励金)が上乗せされ、鉱山労働者の地域発展(教育・衛生など)のために使用されます。EARTHRISEでは、ゴールドやシルバー製品に100%フェアマインド認証素材を使用することにより、フェアな労働環境の実現に寄与しています。


(画像出典:フェアマインド認証(フェアトレード)ゴールド・シルバー , EARTHRISE)


フェアトレード製品を仕入れる

ここまでは、ものづくりの際の原料調達においてフェアトレードを実践している企業をご紹介してきました。続いては、ものづくり企業以外も実践できる取り組みをご紹介します。


ホテル業界の事例

5月のフェアトレード月間に合わせて「フェアトレードステイ*」を提案したのは、リックス・ホテルマネジメント株式会社が運営するホテルJALシティ羽田東京。フェアトレードステイではホテルでの滞在中、客室内の備品や朝食で提供される国際フェアトレード認証製品を通してフェアトレードに触れることができます。

*正式なプラン名は「泊まることがサステナ!国際フェアトレード認証製品に触れてみる特別ステイ」

客室では、ホットマン株式会社の日本製フェアトレードコットンタオル、ベルギー王室御用達のチョコレート・オーガニック原料を使用したウェルカムスイーツ、有機JAS認証コーヒー、スリランカ産の最高級茶葉のみを使用したオーガニックティーなどを楽しめます。朝食では、カカオ農家が経営するDIVINE(ディバイン)のチョコレート、スリランカのウバ地方で栽培されたウバティーなど、フェアトレード食材を使用したメニューが用意されており、滞在中さまざまな製品に触れる機会が設けられています。


(画像出典:【ホテルJALシティ羽田 東京】サステナブルなグッズとともにホテルステイを楽しむ宿泊プラン「フェアトレードに触れてみる特別ステイ」を販売開始 ,オリックス株式会社)


他の企業でも同様の取り組みがされており、例えばリーガロイヤルホテル京都では、アメニティなしの「エコツーリズムプラン」が販売されています。この滞在ではそれに加えてエシカル消費につながる製品がセットになっており、その中には小川珈琲のフェアトレードコーヒーも含まれています。他にも、横浜ロイヤルパークホテルでは、ホテル内レストランやグループホテルなどで国際フェアトレード認証を受けたコーヒーやワインの提供を始めるなど、こうした取り組みは今後も増えていくと期待されます。


フェアトレードの仕組みをつくる

少し難易度が上がりますが、現地でフェアトレードの仕組みを自ら作った事例もあります。

日本で初めて紙製品で国際フェアトレード認証を取得したのが、株式会社ワンプラネット・カフェの「バナナペーパー」です。バナナペーパーとは、これまでは廃棄されるだけだったオーガニックバナナの茎の繊維に古紙もしくは森林認証パルプを加えて紙にしたものです。

ワンプラネット・カフェのバナナペーパーは、アフリカザンビアのエンフエ村で作られており、女性たちがバナナの茎の繊維に含まれる水分を除き乾燥させる作業を行っています。これが現地の安定的な雇用創出になり、その収入は子どもの就学に繋がっています。


(画像出典:基本情報 │株式会社ワンプラネットカフェ

バナナペーパーは、名刺や包装紙、紙ハンガー、紙袋、大学の卒業証書など幅広い用途が見込まれ、採用している企業も多く存在します。企業の名刺として取り入れてみるのも第一歩として良いかもしれません。

フェアトレードをどう取り入れるか

今回挙げたのは企業事例の一部ですが、それぞれ違った角度からフェアトレードに取り組んでいました。日本のフェアトレード市場は欧米と比較するとまだまだ小さいですが、SDGsへの高まりやコロナ禍の消費行動の変化、若い世代の消費への参加により、今後も市場は成長していくことが期待されます。自社でどのようにフェアトレードを取り入れられるか、少しでもそのヒントとなれば幸いです。



【 参考サイト 】

フェアトレードとは? │ フェアトレード・ラベル・ジャパン

「倫理的消費(エシカル消費)」に関する消費者意識調査報告書 │ 消費者庁

ガーナから届く自然のままのシアバター │ SHIRO

アムリターラの取り組み │ amritara

フェアマインド認証(フェアトレード)ゴールド・シルバー │ EARTHRISE

【ホテルJALシティ羽田 東京】サステナブルなグッズとともにホテルステイを楽しむ宿泊プラン「フェアトレードに触れてみる特別ステイ」を販売開始

【リーガロイヤルホテル京都】ホテルに泊まってエシカル消費!「アメニティなし」のエコツーリズムプラン+(プラス) ~ホテルでエシカルステイ~ 販売

バナナペーパー │株式会社山櫻





■執筆:contributing editor Eriko SAINO
#ファッション #トレーサビリティ #エシカル消費 #人権 #フェアトレード #気候正義







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