Upcycle by Oisix期間限定ショップ「アップサイクルマーケット」が有楽町マルイで開催

(2022.4.30 公開)

#フードロス #アップサイクル #ヴィーガン #廃棄問題 #エシカル消費


面白い! めずらしい! と通りすがりの買い物客が足を止め、商品を手に取る。

そんな新しい顧客との接点を創出する「場づくり」として、オイシックス・ラ・大地 株式会社が手掛ける「Upcycle by Oisix(アップサイクルバイオイシックス)」は、初めてとなるコンセプトショップを有楽町マルイ1Fに展開した。2022年5月15日までの期間限定で開催される。


フードロスに、新たな価値を


・食べられないと思われていた部分が、おいしく食べられる

Upcycle by Oisix(アップサイクルバイオイシックス)は、食のサステナビリティを推進しながら新しい食の楽しみ方を広げる、フードロス解決型ブランドだ。畑や加工現場から出た廃棄食材を活用し、より環境負荷が低く、新たな価値を加えたアップサイクル商品を開発して提供する。2021年7月にサービスを開始した。



・ここも食べられる、という新しい「おいしさ」の発見

たとえば冷凍ブロッコリーのカット工場で花蕾をカットしたあとに残る茎や、大根の漬物の製造工程で発生した大根の皮を、独自の製法で食感豊かなチップスに仕上げている。冷凍揚げなすの生産工場で年間約1.4トンもの量が廃棄されているなすのヘタも、黒糖で味付をして、かりんとうのような感じで食べやすいアップサイクル食品に昇華した。

・「あなたは野菜をどこまで食べますか?」調査から見えてきた本音と実態

オイシックス・ラ・大地が、契約生産者50名と20〜59歳男女523名を対象に行った2021年8月の調査では、ブロッコリーの茎を「食べている」と回答する一般家庭が61%と多数派を占めた。


(出典:オイシックス・ラ・大地株式会社 プレスリリース, 2021年)

一方で、ほうれん草や小松菜の軸は70%の生産者がそのまま食べているのに対し、一般家庭では32%しか食べておらず、可食部分に関する知識とそれをおいしく食べるための調理方法などの情報提供に課題があることが分かった。


(環境省「令和2年度食品廃棄物等の発生抑制及び再生利用の促進の取組に係る実態調査」, 2021年)

環境省による調査でも、野菜や果物の皮を厚く剥きすぎるなど、食べられる部分まで過剰に除去して廃棄する「過剰除去」の改善が、全体のフードロス削減を牽引していることが見て取れる。

生活者の側には「もったいない廃棄を減らすために、もっといろんな食べ方を知りたい」というインサイトがあると、これらのデータから読み取れないだろうか?
ここも食べられるとは知らなかった。こんなおいしい調理方法があったなんて。そんな発見を生活者も求めているのかもしれない。

生活者起点のサステナブルプロダクト開発

・母の日ギフトにも新しい選択肢を

「アップサイクルマーケット」の開催期間が2022年4月27日(水)から5月15日(日)ということもあり、母の日にむけたギフトセットの提案も行う。



ギフトセットのバリエーションは、ヘルシー志向のおやつセットやおつまみセットなど。

ブロッコリーの茎チップスと、廃棄されるパンの端材などを利用したビールのセットは、いつもの「おつかれさま」の習慣をちょっと変えてみるだけで、食生活がヘルシーになったりフードロス削減に貢献できる。

健康を気遣うと同時に、「このチップスでフードロス削減できるんだよ」とか「茄子のヘタが食べられるって知ってた?」など、家族でフードロスについて話し合うきっかけにもなるはずだ。

・ヴィーガンを気軽に楽しめるミールキットも

梅酒づくりに使われた梅は、おいしく食べられる食材でありながら、加工の難しさゆえに利用される機会がほとんどなかった。Upcycle by Oisix ではそれをセミドライフルーツとして食べられるよう商品開発。その「梅酒の梅」を活かした Purple Carrot(パープルキャロット)によるミールキット「梅香る練りあげマヨ丼」が、期間限定で店頭で販売される。


(2022年4月27日(水)〜5月3日(火)までの期間限定販売されるミールキット)

Purple Carrotは、アメリカ発のヴィーガンミールキットブランド。オイシックス・ラ・大地の100%子会社として、日本にローカライズしたミールキットを展開する。

Purple Carrotの利用者の8割以上はノンヴィーガン、つまり、ふだんは肉も魚も乳製品も食べている。自分のライフスタイルに合わせて「時々」ヴィーガンの食生活を楽しむ人々は「フレキシタリアン」とも呼ばれる。

ヴィーガンは厳格に食を制限するものではなく、健康のためやサステナビリティの日常的な実践として徐々に浸透しつつあり、食の楽しみ方の可能性をひろげるものとして生活者に受け入れられ始めている。

・ブームの裏で発生してしまうフードロスにも着目

おからは大豆の搾りかすであり、豆腐や豆乳を作る際に大量に発生する。
豆腐店の店頭で販売されたり、卯の花やおからドーナツなどの商品を目にすることも多いが、実は食用に活用されているのはわずか1%以下(2013年 日本豆腐学会調べ)。その多くは家畜の餌や肥料になったり、ただ廃棄されてしまっている実状がある。

さらに昨今は健康志向の高まりや乳製品アレルギーへの対応などから豆乳がブームとなり、市場に多く出まわっている。豆乳の生産量が増えれば、当然ながらおからの廃棄量も比例して増加する。これを受けて Upcycle by Oisix が開発したのが、「豆腐づくりから生まれたおから入りパンケーキミックス」だ。



今回展開されるショップでは、ゴールデンウィーク中に家族でパンケーキを作って楽しんでほしいとの想いをこめて「ここも食べられるジャム バナナの皮」をセットにしたギフトとしても販売される。

売り場づくりの工夫

・敷居が高くならないように配慮された演出

売り場の演出は、食材にまつわる社会課題の解決に取り組む CRAZY KITCHEN(クレイジーキッチン) の協力を得た。オーダーメイドケータリングを中心に事業展開する CRAZY KITCHEN は、未利用魚や害獣を使用したケータリングサービス「サステナブルコレクション」を手掛けており、食にまつわる社会課題の解決に取り組んでいる。

今回のイベントではサステナビリティや食品ロスについて「知ってもらう」ことが大きな意味をもつため、ポップを「読ませる」工夫は非常に重要なポイントだ。大事なことを説明しようとするのではなく、手描きのポップや各商品のチャームポイントをイラストで表現するなど、ワクワク感を視覚的にも訴求し、自然なかたちで興味・関心を惹き寄せる。

また、至るところにドライフラワーがあしらわれており、売り場を華やかに彩っている。これらのドライフラワーは「ロスフラワー(廃棄されてしまう生花)」を利用したもので、ここでもロス削減に配慮されていた。

・フードロス削減を可視化する仕掛け

Upcycle by Oisix の各商品パッケージには、それぞれのフードロス削減量を記載している。

たとえば「ここも食べられる ブロッコリーの茎」は約300g、「ここも食べられるジャムバナナの皮」は約30g、「梅酒から梅酒から生まれたドライフルーツ」は約120g だ。


(会場のポップでも、商品ごとのロス削減量を目立つように訴求している)

これらを販売量から算出し、Upcycle by Oisix は、2022年3月31日時点で約27トンものフードロス削減を実現した。

会期中もコンセプトショップのレジ横にボードが設置され、来場者の購入数からフードロス削減量を表示し、デイリーに更新する。自分の買ったものがロス削減に貢献できることを可視化する仕掛けだ。



(毎日更新されるフードロス削減量。フードロス削減を一緒に盛り上げよう!と生活者の参画を促す)


エシカル消費がなかなか生活者に根づかないことが日本の課題とも言われているが、小さなことでも自分の選択や行動がサステナブルなアクションにつながっていると「見える化」すること、それを参加型のイベントで体感できることは、意識変容を促す効果が期待できる。

新しい顧客との出会いを求めて

今回のコンセプトショップ展開は、まだオイシックス・ラ・大地という企業、Upcycle by Oisix というブランドを知らない人たちとの出会いを大きな目的としている。

オイシックス・ラ・大地といえば、ミールキットの宅食や詰め合わせ食材のサブスクリプション型ビジネスモデルが主流だ。ファミリー層や中高年世帯がコアターゲットであり、顧客獲得の手法はターゲティング広告をはじめ、想定する属性をセグメントして発信するデジタルマーケティングがメインとなる。
そうしたアルゴリズムの枠内では出会えない新たな顧客層とのコンタクトポイントとして、Upcycle by Oisix においてはリアルチャネルを強化したい考えだ。

たとえばZ世代は環境問題やサステナビリティへの関心が高いが、20代前半の1人暮らしだと、サブスクリプションサービスは生活にフィットしない。
Upcycle by Oisix は気軽に買えるよう、ひとつひとつの手頃な価格設定にしている。気になったものを少しずつ試せる、おいしいからまた買う、という好循環をつくっていくことで、いつもの買い物が、フードロス削減やサステナブルな食生活につながることを体感できる。
そんな気づきや習慣が、より多くの生活者へ広がっていくきっかけとなることを、今回の「アップサイクルマーケット」では目指しているのだ。


(有楽町マルイ正面エントランスを入ってすぐの催事スペースで展開されている「アップサイクルマーケット」)

「アップサイクル」という言葉も、少しずつ浸透してきてはいるものの、まだまだ広く認知されているとは言えない。このイベントや Upcycle by Oisix の商品を通じて、ワクワク感を前面に押し出し、親しみやすく、生活に根ざしたサステナビリティを提案する。

そんな中で“アップサイクル”という言葉やその価値を知り、食生活に対する意識が変化していく。その小さな積み重ねから、フードロス削減のインパクトは創出されるのではないだろうか。

取材に訪れた初日も、平日の昼間でありながら、20~30代の女性を中心に幅広い年齢の男女が足を止め、スタッフの説明に興味深そうに耳を傾けていた。



【参考サイト】

Upcycle by Oisix

Purple Carrot

【野菜の日】「あなたは野菜をどこまで食べますか?」調査結果を公開 家庭では6割がブロッコリーの芯を食べていた(オイシックス・ラ・大地調べ)

令和2年度食品廃棄物等の発生抑制及び再生利用の促進の取組に係る実態調査,環境省



■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
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