【 サステナブル素材×フェムテック 】 豊島株式会社 Hogara ブランド開発ストーリー

「Hogara(ホガラ)」は、豊島株式会社の有志社員で構成されたチームが“私たちのほしいもの”をコンセプトに商品開発を行うブランドだ。
フェムテック市場の急速な成長により、大手アパレルブランドも続々と吸水ショーツの開発・販売に乗り出すなか、豊島はいち早く、高機能かつデザイン性に優れた吸水ショーツを商品化した。サステナビリティ推進や環境・社会課題の解決に貢献する幾多のプロジェクトやパートナーシップ連携により、ブランド認知をひろめつつある。

オーガニックコットンやトレーサビリティ、あるいは女性エンパワーメントやフェムテック・フェムケア、多様性、レジリエンス、食品ロス etc.. サステナブルな社会の実現にむけて欠かせないキーテーマが、Hogara の商品開発やブランド展開に多く内包されている。

若手~中堅社員をコアメンバーに時代のニーズに応えるイノベーションが生まれた背景。どんな思いからHogaraが誕生し、これからどのような顧客へ届けたいのか。Hogaraというブランドを通じて伝えたいことは何か。Hogaraを率いる豊島株式会社 東京二部二課 大川侑穂氏に取材した。



ストーリー・オブ・セルフから生まれたフェムテックブランド


「なぜ、私たちが我慢しなければならないんだろう?」

グローバルに繊維を扱う商社である豊島株式会社で働く女性社員たちは、国内外への出張も多い。海外出張などで長時間移動をする際に、男性が多い環境下では「トイレに行きたい」と言い出しづらい状況も多々あったという。生理中にナプキンを交換できなかったり、清潔とはいいがたいトイレでナプキンを捨てることができず、ホテルに戻るまで自分のバッグにしまって移動したこともあった。出張だけでなく、長い会議の間にナプキンの交換ができないことや、敏感肌の女性にはムレや痒みなど更なる不快をもたらす。

これまでは我慢するのが当たり前と思っていた彼女たちが、生理について、とりわけ生理が女性におよぼすネガティブな影響についてメンバーで共有し話し合う過程から、先述の想いが浮き彫りとなった。

ただでさえモヤモヤとする生理の間、ストレスを少しでも減らして快適にすごしたい。我慢しなくていい。そんな商品を作りたい、という彼女たち自身から湧くニーズがモチベーションとなって、豊島の素材知識や技術を活かした開発に至った。200名近い女性社員に実施したアンケートでも生理への関心が高かったことが、彼女たちの背中を押したという。



クラウドファンディングで5,000%以上の達成率


テストマーケティングとして2021年2月19日から4月20日までの期間限定でクラウドファンディングを実施したところ、10万円の目標金額に対して、800名以上ものサポーターから計約590万円もの金額を調達。5,800%という驚異の達成率を記録した。

女性活躍推進法によりジェンダーをめぐる問題が顕在化したり、フェムテックがトレンドとして生活者に浸透するタイミングとも重なり、「こんな商品を待っていた!」という女性たちの期待感が、この結果に表れていると見て取れるだろう。

「サステナブルに興味はあるけれど、何が良いのか、何をして良いのかわからない時に定期的に訪れる女性のライフルーティーンに1着取り入れることにより、廃棄物を少なくするアプローチになると知りました」
クラウドファンディングに参加した応援者からは上記のようなメッセージが寄せられた。

快適に使えるという機能的な実用性だけでなく、洗いながら繰り返し使えることで、これまでの使い捨てナプキンの廃棄も減らせる。自分にも心地よく、環境問題にも配慮できるエシカルなアクションを日常のなかで続けられることも支持される理由となっているようだ。

ムダや廃棄を減らす意識は細部にまで行き届いており、たとえば商品パッケージには、ショーツを洗う際に洗濯ネットとしてそのまま使用できるよう工夫されている。



繊維のプロゆえの技術で差別化


“私たちのほしいもの”でありながら、繊維のプロならではの取り組みと密接に結びついている点が、Hogaraの独自性を生み出している。
Hogaraの吸水ショーツは、それぞれに豊島の技術が活かされた4層レイヤーから成る。素早く水分を吸収する「吸水速乾シート」、2層目には抗菌防臭加工を施した吸水シート、3層目では防水布でモレを防ぎ、4層目となるショーツ本体生地にはオーガニックコットンを使用している。

・トレーサビリティを保証した「TRUECOTTON」(トゥルーコットン)」

オーガニックコットンは豊島が特に力を入れている重要素材だ。
トレーサビリティを保証することが極めて難しいとされるオーガニックコットンにおいて、トルコの紡績グループ「UCAK TEKSTIL(ウチャクテクスティル)」と日本国内向けの独占販売契約を結び、農場と紡績工場の特定を可能にしたトレーサブルなオーガニックコットン糸を実現した。
言うまでもなく、トレーサビリティが保証されたオーガニックコットン糸を選ぶことは、農薬や土壌、生物多様性といった環境問題や人権デューデリジェンスに代表される社会課題の解決に貢献できる。



・「使う人の気持ち」で重視した消臭効果

下着は部屋干しする女性は多い。また、長期の出張や旅先で下着を浴室に干す場合もあるだろう。そんなときに気になるのが、いわゆる「部屋干し臭」だ。

豊島が独自開発した素材「Repur(R)」は消臭と抗菌防臭機能を併せ持ち、臭気成分の分解ならびに臭いの元となる菌の増殖を抑制する。また、洗濯耐久性にも優れ、繰り返し洗濯しても効果が低下しない。
消臭スピードが早いのも特徴で、実際に使用している大川氏も「旅先だと、充分に乾ききらないうちに取り込まないといけない場合もあるが、そんな場合でも臭いが気になることはない」と話す。



「Repur(R)」は、エビデンスとしても、第三者機関による検査の結果、基準測定時間(120 分)よりも早いスピードで、一般社団法人 繊維評価技術協議会が定める基準を達成する。また、抗菌防臭加工・制菌加工・抗ウイルス加工についての認証(SEKマーク)も取得している。


パーパスドリブンにより、サステナブル素材を次々と創出

・意思=「MY WILL」がサステナビリティ推進の原動力に

豊島は1841年創業という長い歴史のなかで、時代の変化に応じて事業領域を拡大してきた。2019年からは「MY WILL(マイ・ウィル)」をステートメントとし、サステナブルなライフスタイルを提案するために、テックベンチャーへの投資や他企業との連携により、スマートウェアの開発や新たな素材開発・提供を推進している。

・オーガニックコットン普及プロジェクト「ORGABITS(オーガビッツ)」

オーガニックコットンを選ぶ、というエシカル消費を通じて、みんなで“ちょっと(bits)”ずつ地球環境と社会 に貢献しようという想いからはじまったプロジェクト「ORGABITS(オーガビッツ)」。SDGsが国連で採択されるより10年も前から、豊島はこのオーガニックコットン普及プロジェクトを展開してきた。




オーガニックコットンが生活者へ普及するきっかけづくりとして、オーガニックコットンが使用されたアイテムの売上の一部をオーガニックコットン原産国農家やNPO法人に寄付する仕組みだ。1枚の服を通して日常的に参加できる社会貢献活動として約135を超えるファッションブランドが参加し、オーガニックコットンを使用したアイテム数は累計930万点以上にのぼる。

地球環境や生産者の人権に配慮し、オーガニックコットンを含む商品の購入を通じて、日常的に社会貢献活動に参加できる点こそ、ORGABITS(オーガビッツ)プロジェクトの狙いだ。生活者のひとりひとりが小さなアクションを積み重ねること が、大きな社会貢献へのインパクトを生み出す。これは、サステナブルな社会の実現において必要不可欠な要素とも通底する。

・食品ロスを救うアップサイクル繊維「FOOD TEXTILE(フードテキスタイル)」



FOOD TEXTILE(フードテキスタイル)は、ファッション業界から廃棄予定食材を再活用するプロジェクト。ふぞろいな規格外食材やカット野菜の切れ端、コーヒーの出涸らし など、従来捨てられてしまっていた食材原料を食品関連企業や農園から買い取り、食品に含まれる成分を抽出し、それを染料として生地や糸を染め上げ、新しいアイテムに生まれ変わらせる。

深刻な食品ロス問題にイノベーティブな解決方法でアプローチ するだけではない。
抹茶・ブルーベリー・赤カブ・レタス・コーヒーなどから抽出した色は、どれも優しく個性的な発色で、衣・食・住の生活シーンをファッショナブルに彩るという「快」の価値も提案する。
染料の加工は日本の独自技術で行われ、天然染料を90%以上使用しているにもかかわらず色落ちしにくいのも特色だ。

Hogaraのラインナップにも、マッチャ・アカカブ・サクラの3色が新色として加わった。




地方自治体への貢献や国際団体とのグローバルな協業も

・平和への祈りをサステナブルな活動につなげる

Hogaraの取り扱い説明書には、折り鶴再生紙が使用されている。

広島市にある平和記念公園には世界中から毎年約1,000万羽もの折り鶴が届けられ、それらは一定期間展示されたのちに長期保管される。管理する広島市では「折り鶴に託された思いを昇華させるための方策」を検討課題に掲げており、その取り組みのひとつが「折り鶴から作られた再生紙」だ。



「Hogaraは、私たちの色んな想いをこめた商品なので、そのメッセージを載せる紙も特別なものを選びたかった。環境に配慮した再生紙というだけでなく、多くの人の平和を願う想いがこめられた折り鶴に私たちの想いを重ねて、もっと多くの方のもとに届けられたら」と大川氏が語る通り、HogaraのSNSでは、製品タグにまで一貫して行き届いたHogaraのフィロソフィーに共感の声が寄せら れ、ファン顧客の醸成に繋がっていることが伝わってくる。

・ORGABITSを通じ、企業として東日本大震災の被災地を支援

東日本大震災での被害を世代を超えて語り継ぎ風化させないために、津波の到達地に桜を植樹する「桜プロジェクト」がある。ORGABITS(オーガビッツ)プロジェクトを通じて、桜の植樹を行う団体へ寄付をし、その寄付金で植樹を行う取り組みだ。

震災から10年目を迎えた2021年には、「未来のさくらキャンペーン」として、SNSに #未来のさくらチャリティ を付けて投稿されたさくらの写真1枚につき 500円を寄付するキャンペーンも開催した。

・女性の差別、偏見、格差を解決するグローバルキャンペーン

「世界の女の子を応援する活動」は、国際NGOプラン・インターナショナルによるグローバルキャンペーン。子どもの権利を推進、とりわけ女性や女児の支援に注力し、貧困や差別のない社会を実現するために世界70カ国以上で活動を展開する。

「女の子だから」と機会を奪うのではなく「女の子だからこそ」必要な教育やチャンスを与え、世界を変える力になっていってほしいとのキャンペーン理念は、Hogara の開発に携わる女性たちとの想いともリンクするだろう。

ORGABITS(オーガビッツ)と、このプロジェクトに賛同するアパレルブランドがコラボレーションした商品の売上の一部を寄付することで、“誰ひとり取り残さない”女性と女児のエンパワーメントに貢献している。


女性エンパワーメントへの貢献

・HAPPY WOMAN AWARD 2022 for SDGs 企業部門で受賞

「 HAPPY WOMAN AWARD 2022 for SDGs 」は、国際女性デーおよびSDGsの認知拡大と同時に、女性のエンパワーメント推進と社会活性化に寄与することを目的に 2019年から開催されているイベントだ。

女性の活躍推進に寄与し、持続可能な社会づくりにむけて挑戦や活動を行っている企業部門の4社のなかに豊島が選ばれ、2022年3月8日に表彰された。
サステナビリティが大きな潮流となるよりずっと以前から多種多様な素材開発や仕組みづくりを推進してきたことも理由のひとつだが、やはり新たな価値創出を行ったHogara の活動が高く評価されたと言うべきだろう。



フェムテックや吸水ショーツの、さらなる先へ


Hogaraが注目されるにつれて、「吸水ショーツのブランド」と思われることが増えてきたと大川氏は話す。しかし“私たちのほしいもの”はショーツだけにとどまるはずもない。
既に、自分の体温で身体をあたためるナイトブラや、オーガニックコットンで肌ストレスを格段に軽減する着圧ソックス、天然由来成分の洗剤を商品化し、リリースしている。

Hogaraのブランド名は「朗(ほが)らかに光り輝き広く晴れ渡る」という日本古来の言葉に由来する。
開発に携わる女性たちの実体験の他、社会のあちこちから寄せられる幅広い年代の女性たちの生の声をもとに、女性が心地よく毎日をすごすためのブランドを目指す。それはとりもなおさず、ターゲットは働く女性に限らない。

身体や心の成長に不安をおぼえるティーンエイジャー。産前産後や育児中のストレスを抱える女性。
ホルモンバランスが乱れる更年期の女性。エイジングの変化に戸惑うシニア層。あらゆる年代の、それぞれの価値観を持つ女性たちに、新しい選択肢や自己実現の可能性をひろげる。そのために Hogara の活動は、より多様で、社会の声を反映したものになっていくだろう。




■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
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