【サステナブルブランド国際会議2022横浜】Focus on Equality~DE&Iは私たちの生命線

(2022.4.1 公開)

#DE&I #ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン #グローバル #リジェネレーション

DE&Iという言葉をご存知でしょうか?DE&Iは多様性(ダイバーシティ)・公平性(エクイティ)・包摂性(インクルージョン)の頭文字をとった言葉で、昨今企業のDE&Iへの取り組みも増えてきています。先月開催された「サステナブル・ブランド国際会議2022横浜」でも企業のDE&Iに関するセッションがありました。異なる国籍、民族、性別、障がいや年齢といった多様な人材を包摂していくこの考え方は、今後労働人口が減っていく日本では益々重要になってきます。企業はどのようにDE&Iに取り組めるのか、セッションでの企業事例をまとめました。

DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは

ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン。全く聞いたことがないという方も、1つだけは聞いたことがあるという方もいるかも知れません。

・各言葉の意味

ダイバーシティ(多様性)は、国籍・民族・宗教・年齢・性別・性的指向・性自認といった様々な違いを持った人を尊重し、組織やグループでその能力を活かすことを意味します。

エクイティ(公平性)は、上述したような個々人の違いによって生じる差に対してそれぞれに適した支援をすることで、誰もが同じ土俵で能力を発揮できる環境を整えることを意味します。エクイティと似た言葉でイクオリティ(平等 / Equality)といった言葉がありますが、エクイティとイクオリティの違いは下記を見ていただくとわかりやすいと思います。



(画像出典:“ Interaction Institute for Social Change | Artist: Angus Maguire.” January 13, 2016

イクオリティでは、個人の違いやその差に関わらず全員に等しく同じものが提供されているのに対し、エクイティでは個人の違いに着目しそれぞれに合ったサポートを提供しています。

インクルージョン(包摂)は、組織内の多様な人材がみな、組織に受け入れられ認められていると実感できる状態を意味し、ダイバーシティとセットで取り組みが必要です。

・D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)からDE&Iへ

以前は企業が多様性に取り組む際、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)と呼ばれていましたが、近年E(エクイティ)の概念が加わりDE&Iと呼ばれることが増えました。多様な人材を組織に内包し平等にサポートしたとしても、それによって個々人が能力を発揮できるかは生まれ持った属性や経験・能力といった個々人の出発点によってしまうためです。

個々人の違いに合わせたサポートをすることで能力が発揮できる環境を整え、違いを強みとした組織の成長につながっていきます。

DE&Iに取り組む企業事例

・株式会社QVCジャパン:個々の違いを理解するセミナーや勉強会




(画像出典:株式会社QVCジャパン

テレビやインターネットを通したショッピング事業を展開する株式会社QVCジャパンは、有志によるDE&I推進グループの発足が取り組みの始まりとなりました。グループでは、①民族・人種 ②LGBTQ+ ③ジェンダー ④メンタルヘルス ⑤障がい・年齢といった5つのテーマを設けています。

推進グループ発足後、具体的な取り組みとしては勉強会やセミナーを開催してきました。例えば2021年6月のプライド月間では、社内外の当事者や活動家を招いてLGBTQ+のセミナーを開催。また社内で働く外国籍の従業員に対し異国で働く上での悩みや苦労についてインタビューを実施。内容をまとめた記事を社内で公開しました。他の5つのテーマに関しても同じように取り組まれています。

DE&Iの実施というと制度や施策の導入に目が行ってしまいますが、QVCジャパンはまず違いを「知ること」「理解すること」といった面にフォーカスして取り組みをされていると感じました。これはエクイティやインクルージョン実施の際に柱となる重要な部分ではないでしょうか。

有志のグループが発足できた理由としては、グローバル企業というのも1つ大きな点だと考えられます。QVCのグローバル共通の行動指針には「ACT WITH EMPATHY 共感をもって行動する」といった項目があり、属性にとらわれず誰に対しても共感を持って行動することが、グローバル共通の文化として根付いているそうです。

・大和ハウス工業株式会社:高齢者も障がい者も別け隔てなく働ける場づくり



(画像出典:大和ハウス工業株式会社ウェブサイト

大和ハウス工業は「誰もが感動を育める街づくり」を掲げ、開発に関わる街の新たな魅力や価値を作り出すLIVENESS TOWN(リブネスタウン)事業に取り組んでいます。そのうちの1つに今回のセッションでお話された「COCOLAN(ココラン)」があります。

ココランとは、大和ハウス工業が関わる住宅地内の施設で栽培されているミニ胡蝶蘭です。栽培施設はココランハウスと呼ばれ、障がい者や高齢者も分け隔てなく働けるインクルーシブ農園を目指しています。過去には、特別支援学校に通う生徒のインターンを受け入れ、2022年4月からはその生徒の就職も決まったそうです。その際、「ココランは人と人とをつなぐなくてはならないお花です。夢はみんなを引っ張っていける優しいリーダーになること、定年まで勤めたい」と仰っていたそうです。多様な人材の雇用、そしてその先の彼ら自身の成長といった部分も実現できる環境づくりをされていることがわかるお話でした。

ココランハウスはリブネスタウン事業の1つの事例であり、地域によって異なる様々な個性に合わせた街づくりを今後本格化させていくそうです。

企業のDE&Iをサポートする事業を展開

・株式会社商船三井:培ったグローバルな視点で外国籍の人材紹介




(画像出典:株式会社商船三井ウェブサイト

明治時代から続く海運会社である商船三井では、古くからグローバル・多様性といった視点を培ってきました。

商船三井では、人を乗せるフェリーから貨物を運ぶコンテナ船まで、全部で800以上の船を持っています。その全乗組員約2万5000人のうち9割以上が外国人で、中でもフィリピン人乗組員は6割を占めています。その他にも、インド・欧州・ロシアなど実に多様な国籍の従業員が働いており、インクルージョンな職場が実現していると言います。フィリピン現地では、元大統領のマグサイサイの人材紹介企業と協力し船の乗組員の育成にも力をいれています。

こうした実績を踏まえて展開するのが、企業への外国人人材の紹介サービスです。DE&Iに取り組みたい、外国人人材を登用したい、そう考えていても人材の採用に係る手続きや研修、フォローアップ等に課題を感じる企業も少なく有りません。そのような課題を抱える企業にとって、商船三井の人材紹介サービスは外国人のスムーズな登用をサポートしてくれる事業となっています。

・特定非営利活動法人WELgee:多様な背景を持つ「難民」と企業のマッチング


(画像出典:特定非営利活動法人WELgeeウェブサイト

WELgeeは「難民を超えて、社会のパイオニアへ」を掲げ、日本の難民をサポートする事業を展開しています。セッションでは、日本にいる難民を企業とマッチングするサービス「Job Copass(ジョブコーパス)」の取り組みが紹介されました。

取り組みの前に、日本における難民の厳しい現実が説明されました。紛争や災害により母国から逃れ、日本にも毎年多くの難民候補者がたどり着きます。彼らは入国後、正式に難民となるために国に申請をし認めてもらう必要があります。しかし、日本ではその認定数が極端に低く(約0.3%)、G7の中では最低の数値となっています。例えば2020年は約11,000件の申請に対して認定されたのはわずか47件。また認定されるまで平均で4年4ヶ月かかるそうです。

「その0.3%を目指して待ち続けなければならないのだろうか」

そんな想いから始まったのがWELgeeの取り組みです。実は難民となる人々は、プログラマーやジャーナリスト、起業家、医師、弁護士などユニークな経歴を持っている人も多く存在します。難民申請中の不安定な在留資格の人でも、企業が採用することで就労の在留資格に変更ができます。こうした人材と日本企業をマッチングさせるための事業がジョブコーパスです。これまで14名の難民が企業に正式採用、2名がインターンに採用されました。例えば、西アフリカ出身の元起業家の難民は大手バイクメーカーのアフリカ事業に採用、中部アフリカ出身のプログラマーは、IT系ベンチャーの開発チームに採用されました。

アフリカ事業にアフリカ出身の難民を採用するなど、企業にマッチした人材も見つかるかもしれません。一方、企業側の努力も必要だといいます。企業からは「日本語が使えるか」「優秀か」「日本人のカルチャーや価値観にフィットする人材か」などの質問を受けることもあるそうですが、多様な人材に対して画一性を求めるのではなく、その違いを強みに変えていくための環境づくりが企業側も必要になってきます。まさにこれは、エクイティの部分へどう企業が取り組めるか次第ではないでしょうか。

DE&Iはセットで考える

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン。これはまさに、制度や施策だけの実施に警鐘を鳴らすような概念ではないでしょうか。多様な人材を雇用するだけでは不十分であり、彼らが尊重し受け入れられていると感じられ、また能力を存分に発揮できるような環境づくりに同時に取り組むことが今後は必要になってくるのではないでしょうか。

■執筆:contributing editor Eriko SAINO
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