「ソジ(SOGI)ハラ」とは何ですか?

(2022/3/18 公開)

#ジェンダー #LGBTQ+ #DE&I


学校や企業で「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉が認知され、人々の意識が高まる中、「ソジ(SOGI)ハラ」について、あらためて理解を深めていこうという動きが広がっている。


Q.「ソジ(SOGI)ハラ」とは何ですか?

A.

SOはセクシャルオリエンテーション(性的指向)で好きになる相手の性を意味する。GIはジェンダーアイデンティティ(性自認)で自分自身の性の認識のことで、男性か女性かだけでなく、どちらか決められない、またどちらでもないも含む。これらの性に関して、差別的な言動や嘲笑、いじめや暴力などの精神的・肉体的な嫌がらせをすること(ハラスメント)を表す言葉が「SOGIハラ」だ。

無意識のうちに「SOGIハラ」しているかも。

では、どのような行為が「SOGIハラ」なのか。実は知らず知らずの間に誰もが当事者を傷つけている場合があるようだ。「なくそう!SOGIハラ」実行委員会のサイトでは、5つの場面を漫画で分かりやすく紹介している。

(1) 差別的な言動や嘲笑、差別的な呼称
(2) いじめ・無視・暴力
(3) 望まない性別での生活の強要
(4) 不当な異動や解雇、不当な入学拒否や転校強制
(5) 誰かのSOGIについて許可なく公表すること(アウンティング)

例えば、(1)差別的な言動や嘲笑、差別的な呼称 では、ある大学生のゲイの体験談が描かれている。当時高校生だった彼は、仲間外れにされたくないという思いから友だちが何気なく発した「ホモは気持ち悪い」という言葉に、違和感を感じながらもその場で同調する。しかし、後にこの時自分自身を傷つけていたことに気づく。


(画像出典:なくそう!SOGIハラ /「なくそう!SOGIハラ」実行委員会より抜粋)

まさか友人たちもいつも身近にいる彼のことを当事者だとは思っていなかっただろう。ましてや彼を傷つけようとも、実際に彼が傷ついたことなど思いも及ばないはずだ。このように日常でありがちな場面で「SOGIハラ」は行われている。今一度、自分ごととして振り返ってみる必要がありそうだ。

これって「SOGIハラ」?という場面に出会ったら

2018年2月に放送されたNHKのTV番組「ハートネットTV」では、「SOGIハラ」についてさまざまな視点から意見が交わされた。

まず、広く知られるようになったLGBTとSOGIの言葉の意味と違いを解説。LGBTは、それぞれレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーを指すようにカテゴライズを並べた言葉で、いわゆる“心の性”と呼ばれるものだと説明。対してSOGIは、性的指向あるいは性別に対するアイデンティティ、つまり性的なあり方全般を意味する言葉であることから、全ての人が自分のこととして語ることができると説明している。
「SOGIハラ」という言葉の発案者の一人であるセクシャルマイノリティーの当事者からは、「現状に起こっていることを知ってほしい」という思いが語られた。

続いて、先の「なくそう!SOGIハラ」実行委員会のサイトで公開されている漫画や作者本人の意見、番組へのカキコミなど具体例を紹介しつつ、誰もが無意識に当事者を傷つけている可能性を示した。さらに家族や友人・知人間だけでなく、教育現場での問題点も指摘する。
統計上、一定数の当事者がどの学校、クラスにもいることは確かなのに、学校側の理解不足から適切な対応が行われなかった場合、間違った価値観を子どもたちに植えつけてしまう可能性があるからだ。

そして、実際に「SOGIハラでは?」と思われる場面に出会った時に、どのように対応すればよいかについて提言している。
まず、自身がSOGIハラに加担しないこと。後でその場面を振り返ってみることも重要だとする。また、SOGIハラを疑われるような話題が続きそうな場合は、その場の話題を切り替える人=スイッチャーになることなどを勧めている。


誰もがありのままの自分でいるために、まずは他者を知ることから

番組では最後に、当事者に対して、自分に非があると思わないことや、SOGIハラの場面に遭遇した時は「これはSOGIハラなんだ」と思うことで、心にワンクッション置くことができ、自分を守ることができるとアドバイスする。

番組を通して、まず、全ての人がSOGIハラという行為がこの世の中にあることを知ることから始めなければならないと痛感する。当事者もそうでない人も、幅広い情報を得ながら、さまざまな場面での対応力を身につけていきたい。



誰ひとり取り残さない、もちろんLGBTも

近年、日本の社会でも浸透してきたSDGsの視点から「SOGIハラ」を見つめてみると、より広い視野で全体像が理解できるかもしれない。
SOGIによる格差のない社会をつくり、次世代につないでいこうと活動するNPO法人「虹色ダイバーシティ」は、SDGsの17のゴールに沿って、LGBTであることがマイナス要因とならないように、あらためてLBGTとの関連性と具体的な取り組みを示している。

例えば、SDGsの1つ目のゴール「貧困をなくそう」では、LGBTが直面する環境として、家庭、学校、職場、地域から疎外されることで、貧困につながるとしている。学校での環境に馴染めず教育の機会を奪われ、非正規雇用の割合が高くなることや、職業選択の限界を感じたり、職場でのハラスメントによる離職など、貧困につながる状況が現実に起こっている。
これに対し、虹色ダイバーシティは、アンケート調査等による学校や職場におけるLGBTの課題の可視化と分析を行い、その結果をサイトで公開している。

また、14の「海の豊かさを守ろう」では、LGBTを抑圧する言葉として「自然に反している」と言われることがあるが、同性間で性行動を行ったり、性別を変えることは、多様性がある生物界では特別なことではないと、新たな視点を提示している。


生物界にSOGIハラは存在しないようだ

これらの提言やデータを学校や企業など私たちが暮らす社会にどのように活かしていくことができるか。研修を行い、新たな制度をつくるなど具体的なアクションを起こしていくことで、誰もが生きやすい社会の形成につながっていくのではないだろうか。



【参考サイト】
なくそう!SOGIハラ /「なくそう!SOGIハラ」実行委員会
“SOGIハラ”って何? / NHK福祉情報サイト「ハートネット」
NIJIIRO DIVERSITY / 認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」


■執筆:Sustainable Brand Journey 編集部



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