【 トップインタビュー 後編 】 再生パソコンで地方創生、DX推進、ESDへ貢献するソフマップ

(2022.2.10 公開)

#地方創生 #ウェルビーイング #女性活躍 #DX推進 #ESD


「リユース、リサイクル、というだけでなく、どこかで不要になっているものをもっと活用していただけないだろうか、という想いが原動力になっています」株式会社ソフマップ 代表取締役社長 中阿地(なかあじ)氏は、そう語る。

不要なPCは置き場所を取る、捨てるのにもお金がかかる上、データセキュリティ上の適切な処理を行わずに廃棄すれば機密情報の漏洩リスクも孕む。

そういった不安やリスクを一挙に解消し、しかも社会や地域へ貢献でき、廃棄削減や3Rといった環境課題の改善にも役立つ。企業や自治体にとって非常にメリットの多いサービスだと言えるだろう。

後編では、BtoBにおける一例として山形県最上町との事例を軸に、ソフマップがこれから目指していくリサイクル・リユース構想を聞いた。

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企業・自治体むけセミナーから見えてきたニーズ

2021年6月、ソフマップは地方自治体に向けて「ITADサービスを活用したリユース事業」のセミナーを開催。情報セキュリティポリシーに関する対応方法を伝えるとともに、自治体で不要となったパソコンを再生させて地域社会で再利用するというITAD事業のスキームを説明した。


(画像引用:株式会社ソフマップ公式サイト)

約50もの参加自治体からそれぞれの課題をヒアリングした中から、連携パートナーとして山形県最上町が決定した。実証実験としてできるだけ早くやりたい、という意向とが双方でマッチしたのが大きな理由だ。

最上町では、役場の内部情報が処分されないままの業務端末が多数保管されていたという。
それらをITADサービスを活用して再生し、地域の福祉施設、教育関連、商店、町内会などで活用を図るとともに、資源の有効活用や町民のデジタル化推進を目的とした実証実験が行われた。


再生パソコンが導く、地域社会のDX促進

「ITADサービスはこれまで法人営業に注力しており、自治体に向けた取り組みは初の試みでした。
21年6月に開催したセミナーで全国の地方自治体ご担当者様から様々なお話を伺うなかで、廃棄も活用もできないまま多くのパソコンが眠ってしまっているという課題があることを知りました。
その中でも山形県最上町の町長様・ご担当者様は情報セキュリティや環境貢献、社会貢献への意識が高く、実証実験に前向きにご協力いただけました。

また、町長様は最上町の活性化についても懸念されていて、リサイクルパソコンを寄贈により住民のデジタル化を促進できることにも期待を寄せておられました」

ITADサービスに長年たずさわってきた法人営業課の原田氏に、この取り組みについて詳しく話を聞いた。


( 株式会社ソフマップ原田課長 , ソフマップ本社オフィスにて撮影, 2021年12月 )


「最上町様との取り組み事例を見て、同じような悩みを持つ他の自治体の方にも興味を持っていただけるようになりました。総務省のデータセキュリティガイドラインがより厳しく変更されたこともあり、データの処理方法に悩んでいるご担当の方が多いようです。
例えば、データ消去の工程を詳細かつ明確にすることが求められるため、機器の追跡サービスが営業のフックになっています。他にも、実証実験での気づきを活かし、一緒に取り組んでいただける自治体を地道に探し、増やしていきたいです」


地方創生、地域社会への貢献のきっかけに

ソフマップ代表取締役社長 中阿地(なかあじ)氏からも、リユース事業を通じて社会や環境に役立てることを拡張していきたいという真摯な想いがあふれる。

「たとえば発展途上国にデジタル機器を寄付する、というのもグローバルな貢献活動かもしれませんし、それも非常に有意義な活動であることに異論はありません。
しかし私は、日本のなかでもリサイクルパソコンや中古デジタル機器の活用方法はまだあると、自分たちの足元で貢献できることがもっとたくさんあるのではないかと思っています。

それを新たに、他の企業様や自治体とパートナーシップ連携することで見つけていきたいんです。
そのためのアイディアをいただけるのであれば、パソコンなどのデジタル機器は、まとまった数量でなくとも(たとえば3~5台程度であっても)対応させていただきたいですね」


( 株式会社ソフマップ中阿地社長 , ソフマップ本社オフィスにて撮影, 2021年12月 )


雇用創出、女性活躍、ウェルビーイングへの貢献も

コロナ禍によってリモートワーク導入などの働き方改革が進んだことを受け、都市で仕事をする必要性そのものを見直す動きが広がりつつある。

2023年3月卒業・修了予定の大学生ならびに大学院生を対象とした調査では、約4割の学生がIUターンや地方での就職を希望しており、この割合はコロナ禍の初期、2020年6月に実施した調査結果と比較すると16.9ポイント増加した。


(画像引用:株式会社学情 プレスリリース, 2022年)


IUターンや地方で働くという選択肢を下支えするのは、言うまでもなくデジタル機器やインターネット環境の普及だ。

「リサイクルパソコンがもっと地方で活用されれば、地方にいても都市部と同じように仕事ができる。リモートワークが可能になって働き方の選択肢が増えれば、時間的な制約がある方でも出来ることが増え、仕事の幅が広がります。

仕事に限らず、“地方だから”と諦めることなく自己実現できる機会と手段を提供することで、地方で暮らすことのよさを発展できるのではないでしょうか」



リサイクルパソコンなどデジタル機器を、必要な地域に行きわたらせることで、過疎化や人口流出を止めるだけでなく、地域の活性化にも貢献したいのです。
地方における雇用創出、女性活躍、ウェルビーイングと、サステナビリティ活動とも結びつく新しいビジネスモデルとしての可能性をすごく感じています」と、中阿地社長の言葉にも熱がこもる。


地方で見られた、リサイクルパソコンの多様な用途

最上町へ寄贈されたリサイクルパソコンは、公民館・温泉施設、商店、特別養護老人ホーム、NPO法人へ渡り、鳥獣被害対策の研修会や地域に住む高齢者の行政手続き支援など、それぞれが希望する用途で使われているという。他にも特別養護老人ホームではリサイクルパソコンを用いて、コロナ禍で面会ができない入居者とその家族をオンラインでつなぐ。

最上町の取り組みを担当したソフマップ原田氏によると、「当初は公共の施設などでの利用が中心になるだろうと想定していました。しかし実際は商店や宿泊施設、農家の方など想定外のところにもパソコン利用のニーズがあると分かりました。
オンラインショップ(ECサイト)開設や農業工程管理のIT化が、思っていた以上に地方では意識高く取り入れられていたのです」



ソフマップは、BtoCで培ってきた長年のサポート体制があるからこそ、「パソコンを使う人の気持ちが誰よりも分かる」ことが強みだと、中阿地社長も原田氏も声を揃える。

ITの知識やスキルがなくても、オンラインを活用した丁寧なサポートを提供することで利用者の不安を払拭し、リサイクルパソコンの活用や地域の活性化だけでなく、デジタルディバイドの課題解決にも貢献したい考えだ。

「地域ならではの課題として、思った以上にIT化が進んでいない。都心に住んでいると当たりまえに享受している環境が、地方では当たり前でないんだなという現実も知りました。インフラを含めて整備していくことが、我々にとってはビジネスチャンスであり、地方にとっては地方創生につながるという win-win の取り組みとして、今後も事例を増やしていきたいと考えています」と、中阿地社長はさらなる展望を語った。


リユース、リサイクルをサステナビリティの「架け橋」に

・都心から地方へ、新しい社会モデルの可能性

「デジタル化やデータプライバシーについて悩んだり、困ったりしているの地方だけではないはずです。東京都にもたくさんの自治体がありますので、『都心モデル』『地方モデル』という風にそれぞれの環境やニーズに対して様々な提案方法を模索していきたいとも考えています。
たとえば『都心モデル』でいうと、自分の生まれ育った地元に何か貢献したいという企業の社長様やご担当者さまが、ソフマップのITADサービスを利用してリサイクルPCを寄贈する、ふるさと納税のようなビジネスモデルも仕組みとして検討しています」


( 株式会社ソフマップ中阿地社長 , ソフマップ本社オフィスにて撮影, 2021年12月 )



・企業の「何かに役立ちたい」という想いまで支援する

地方創生を支援したい、という企業の想いを受け止め、その支援をITADでサポートする。

「寄贈を行う企業に対して、どういうところへ寄贈すればリサイクルパソコンを役立てることができるか、いい連携がうまれるか、というところまでもサポートすることが大事だと思うんです。

単純に、パソコンが欲しいという人に渡していくだけではなく、その自治体がどういうことをしていきたいか、そのために何が必要なのかまでを把握したうえで、適切に貢献できるような支援をしていきたいですね」

中阿地社長のこのフィロソフィーは、パートナーシップ連携のあるべき姿、ひいては、「つながって、ひろがっていく」というサステナビリティの望ましいあり方とも重なる。


「エコプロ2021」で感じた未来へのひろがり

・いい事例が、さらなるつながりを生む

ソフマップは2021年12月に東京ビッグサイトで開催されたエコプロ2021に出展した。
そこで最上町の取り組み事例を紹介しており、それを見た省庁の担当者からも「すごく面白い取り組みですね」といった好反応が多く見られたという。
さらに「興味がありそうな人を知っているので紹介させてください」など、他の自治体へつないでもらえる機会も得られた。


( エコプロ2021 株式会社ソフマップ出展ブースにて撮影, 2021年12月 )

「やっぱり目で見て分かっていただければ、自分たちもやらなきゃという気持ちになっていただけるんじゃないかな」と中阿地社長も手ごたえを感じていると言う。


・ESD推進の成果が早くも表れつつある

ESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育 )は、
環境や社会課題を自分事として捉え、その解決にむけて自ら行動を起こす力を身につけるための教育を言う。2020年度から新しい学習指導要領に盛り込まれて、全国の教育機関で順次実施されている。

その実践の一環として、エコプロには多くの中学生・小学生も来場していた。

「ソフマップの展示では特にSDGsゴールの何番という表示はしていなかったのですが、子どもたちの方から“これはSDGsの何番の目標と関係した取り組みですか”という質問が出てくるんです。SDGsや環境に関する教育がすごくしっかりしていて、子どもたちも私たち以上に吸収が早く、20年後、50年後はもっと楽しみになる、と感じました」
現地で子どもたちと接した感想について、中阿地社長はこのように話す。


( エコプロ2021 株式会社ソフマップ出展ブースにて撮影, 2021年12月 )

「エコプロ2021のような場に子どもたちを招待したり、当社のITADセンターへの見学を企画して、未来の日本が大きく変わっていくことに貢献できたらいいなと思います。ソフマップのサービスとしても、ITADだけでなく、リサイクルを通じていろんなことができるんだよ、ということを次世代を担う子どもたちにも伝えたいですね。

そして、ソフマップの社名を聞いたときに、再生パソコンやリユース商品を通じて環境問題に取り組む会社だと思い浮かべてくれる人が増えていけば、これほど嬉しいことはありません」



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【 参考サイト 】

最上町×ソフマップ 地域におけるリユースPC再利用の取り組み

総務省、コロナ禍で加速するデジタル化

総務省、誰一人取り残さないデジタル化にむけて




■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
#アート #くらし #哲学 #ウェルビーイング #ジェンダー #教育 #多様性 #ファッション


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