【 トップインタビュー 前編 】 デジタル機器のリユースで循環型社会の実現を目指すソフマップ

(2022.2.10. 公開)

#循環型社会 #3R #データセキュリティ#データプライバシー #デジタルディバイド


( 株式会社ソフマップ中阿地社長 , ソフマップ本社オフィスにて撮影, 2021年12月 )


「パソコンをゴミにはしたくないんです」
代表取締役社長 中阿地(なかあじ)氏の言葉通り、株式会社ソフマップは、基幹事業となるデジタル家電販売事業のなかでも、とりわけリユース(中古販売)に力をいれている。
買取専門アプリ「ラクウル」や中古専門のECサイト「リコレ!」など、中古商品を生活者が売買しやすいプラットフォームも充実させてきた。
使われなくなったデジタル機器や家電をゴミとして捨てるのではなく、再利用によって、廃棄削減や資源の有効活用に貢献できる。
何万台ものデジタル機器を商品としてよみがえらせ、市場で循環させている。


(画像引用:株式会社ソフマップ,  ビジュアル制作 YUIDEA )


その循環型ビジネスのスキームを支えるのが、ITAD(アイタッド:IT Asset Disposition)と呼ばれるIT資産の適正処分サービスである。
パソコンの他、スマートフォン、デジタルカメラ、ゲーム機など、重要な個人情報を含むデジタル機器においては、とりわけ高い精度のデータ消去とトレーサビリティの徹底が利用者の不安を払拭するために必要不可欠だ。

ソフマップは「お客様が安心して売却・再利用できることがわれわれの強み」という自負を持って、このITADサービスの推進を強化している。
その背景や狙いを、代表取締役社長 中阿地(なかあじ)氏に聞いた。


リユース、リセール、リサイクルで循環型社会の実現へ

ほとんど使っていないけれど、なんとなく持っている。
捨て方がわからないから、そのままにしている。
私たちの身のまわりにも、そんなデジタル機器のひとつやふたつ、きっとあるはずだ。

「それらを捨てずに循環させることで環境への負荷を減らしたいという想いがあります」と、代表取締役社長 中阿地(なかあじ)氏は語る。

「環境問題が深刻さを増す中、サーキュラーエコノミーの重要度は高まっています。販売業であるからこそ、廃棄やリサイクル・リユースは率先して取り組むべき課題だと捉えています。やればやるほど、そしてそれが生活者のみなさんにも浸透すればするほど好循環な環境につながっていくので、そのためにも責任と誇りをもって、リユースすることが当たり前になる時代を切り拓いていきたいんです。

そのために大事なのが、中古品の品質を高めること、トレーサビリティを確立すること、そして何よりも、機密性のレベルに応じて個人情報等のデータを適切かつ完全に消去することだと考えます」


( 株式会社ソフマップ中阿地社長 , ソフマップ本社オフィスにて撮影, 2021年12月 )

・リスクマネジメントというビジネスチャンス


ソフマップが提供する ITAD(アイタッド)とは、IT資産の購入から買取・リサイクルに至るまで、IT資産をライフサイクル全体でサポートするサービスを指す。

とくに企業や自治体が使用したIT機器は個人情報などの機密情報が保存されており、機器を廃棄する際は総務省の情報セキュリティガイドラインに則って、データ消去や記憶装置の物理的な破壊といった処理が求められる。

ITADサービスでは、初期化だけでは不十分なデータ消去を復元できないレベルで行う他、追跡管理や消去証明書を発行し、適正なリサイクル処理を行っている。

「大手企業は、社会的責任感に対する意識が根付いているので、情報漏洩を絶対に起こさないというデータセキュリティに対する姿勢・考え方はすばらしいものがあります。一方で、どう処分したらいいかわからないと二の足を踏む企業や自治体もあります。情報セキュリティのガイドラインに記載された消去レベルのどれに該当するかわからないというお悩みや、費用感はどのくらいかといったご相談が寄せられています」


・データプライバシーやコロナ禍など時代のニーズを受けて


マイナンバーの普及、個人情報保護の意識向上、情報セキュリティ強化への対応など、さまざまな理由でデータプライバシーに対する関心や必要性の高まりが見込まれる。

「時代の変革を真摯に受け止め、確実にお客様の安心を得られるために何ができるか、ということを考えたのがITADサービスの始まりでした」

そうして、情報セキュリティガイドラインにどこよりも対応できるセンターを設立。2006年にはプライバシーマークも取得した。中古商品の取り扱いが増えるのに伴い、いつ、どの店舗で、だれが買い取り、どのように商品化したかを一元管理することで、中古商品のトレーサビリティを確立したこともソフマップの強みとなっている。



不要なパソコンを貴重な「資源」へ再生させる

デジタル化推進の潮流を受け、バージョンアップのための買い替えなど、全国で不要となる情報機器は増加している。その一方で、情報漏洩のリスクが足かせとなり、処分したいのに「どうすればいいかわからない」と放置されてしまうケースがまだまだ多いという。


(画像引用:ソフマップ, ITAD Service


ソフマップのITADサービスは、機器の種類や機密レベルに応じて、国家機関でも採用されている消去ソフトウェアや機器を用いて確実なデータ消去を行う。作業プロセスは全てログ管理され、トレーサビリティーを確保。施錠可能なセキュリティカーゴで回収し、輸送中においても紛失・データ漏洩の防止策を徹底している。

データ消去作業の完了後は、適正に消去されたことを第三者証明する「適正消去作業完了報告書」を発行。この証明書は国際標準の長期署名企画(PAdES)に準拠した改ざん防止が施されており、安心と安全を担保する。

また、ソフトウェア消去方式ではなく、物理破壊方式の場合も、専用の機械を用いて確実にデータ消去処理を行う。こちらもHDDのシリアル取得後に破壊前と後の写真を撮影・保存し、その写真を証明として希望する依頼者へ提供するという。

「単にデータを処分するだけではなく、リサイクルPCとして再生させ、新たに必要とする人のもとで再び有効活用してもらえることで環境にも配慮できる点がITADサービスの本質です。ITADセンターで商品化されるパソコンを高品質な中古品としてリユース(再利用)することで循環型社会の実現、環境負荷軽減に貢献していきたいと考えています」


急騰するパソコン需要にも、リユース・再商品化が貢献

ソフマップがパソコンの買取をはじめたのは1980年代前半。
当時まだパソコンは非常に高価で、頻繁に買い換えられるものではなかった。熱心なカスタマーから「新しい機種が欲しいから、いま持っているものを買い取ってくれないか」と相談されたことをきっかけに買い取ったパソコンを店頭で販売したところ、まさに飛ぶように売れたという。その後、パソコンだけでなくオーディオやカメラへと買取の幅を広げることで、若い世代のニーズを掘り起こすことにも成功した。

そして時を今に戻すと、コロナ禍によってパソコンのリユース需要が急拡大した。
リモートワークや巣ごもり需要で、もはやパソコンは一人一台というレベルで必要になっているのに、半導体部品の不足の影響から新品のパソコンは供給が追い付かず、価格も高騰している。

長年にわたってリユース事業に取り組み、品質やデータ消去に対する信頼を培ってきているからこそ、自信をもってリユースの価値を訴求できる。ソフマップは、すべての中古商品に1ヶ月間の無料保証や10日以内の無料返品、1ヶ月以内のチェンジアップ(上位機種に差額で交換)が可能だ。
こうしたサービスを付加価値として提供し、「My First PC」「格安安心パソコン」など、リユース事業から生まれた新商品を送り出している。





「誰ひとり取り残さない」包括的なデジタル化を

さらにコロナ禍が引き起こした変化としては、言うまでもなく、世界中で否応なしにインターネットをはじめとしたデジタルツール活用の必要性が迫られたことに他ならない。

ショートメッセージ、チャットツール、テレビ電話等の各種デジタルツールによるコミュニケーションが増加し、ネットバンキング、ネットショッピング、ネットによる動画視聴など生活におけるデジタル化も急速に進んだ。



(画像引用:NRI, 新型コロナウイルス感染拡大で生活におけるデジタル活用が急進展,2020年)


多くの人がインターネットを通じて出来ることに新たな可能性を見出す一方で、インターネットを利用できる人とできない人の情報格差、いわゆる「デジタルディバイド」の課題も浮き彫りとなった。
経済的に困窮していてパソコンやタブレットが購入できなかったり、学校や職場で端末の配布があっても、インターネット環境が脆弱なために使用することができないということが起きている。

ネットを全く使わない(使えない)人からすれば、病院のオンライン診療や給付金申請やワクチン接種の申し込みがオンライン化されても恩恵を受けられないどころか、必要な社会的サービスさえも利用できないという不利益が生じてしまう。
デジタルツールの手段を持たない人は、極端にコミュニケーション量が減り、欲しい情報が得られないということもあり得る。
環境や属性によらず、すべての人のデジタル活用能力を高め、誰もが必要なデジタルサービスを受けられるようにする「デジタル・インクルージョン」が急務となっている。

そういった社会的ニーズを受け、不要になったパソコンをITADサービスを利用して処理するだけでなく、デジタルディバイドが課題となっている地方のDX推進に有効活用した取り組み事例を後編で紹介する。


>> 後編につづく



【 参考サイト 】

ITAD Service Sofmap

総務省、コロナ禍で加速するデジタル化

総務省、誰一人取り残さないデジタル化にむけて




■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
#アート #くらし #哲学 #ウェルビーイング #ジェンダー #教育 #多様性 #ファッション


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