【選ばれる企業へ】認証ラベル取得によるサステナブルブランディングとエシカル消費促進

(2022,1,19.公開 )

#認証ラベル #エコマーク #フェアトレード #エシカル消費 #サプライチェーン #人権


消費者庁が2020年に行ったエシカル消費に関する消費者意識調査では、「エシカル」「エシカル消費」ともに認知度が過去3年間で2倍以上になりました。また今後、消費の中心が若い世代に移っていくとともにこの傾向はより一層高まっていくと考えられます。エシカル消費の認知度が高まっていく中、消費者に選ばれる製品・企業になるための有効な手段となるのが、認証ラベル取得によるサステナブルブランディングです。今回は、そんな認証ラベルについて、認証ラベルの役割や種類、認証を取得することによるメリットや注意点をご紹介していきます。

認証ラベルは、なぜ必要?

認証ラベルとは、製品や企業のコーポレートサイトなどに載せられているマークのことです。企業が正しく環境・社会的配慮をしていることを証明するためのマークとも言えます。その多くは第三者機関等によって厳しい基準に基づき審査が行われ、クリアした製品や企業のみがラベル表示をすることが許可されます。

エコマークやグリーンマークは馴染みがある方も多いかもしれません。認証ラベルは環境に対するものだけではなく、オーガニックに関するもの、フェアトレードに関するものなど種類も様々です。

こうした認証ラベルは特にエシカル消費に対する意識の高い国や地域で、消費者が商品を選ぶ際に重要な指標の1つとなります。消費者からしてみれば、商品棚に陳列されている製品を見るだけでは生産背景がわからず、生産過程で人権侵害や環境破壊を行っていないかどうかが判断できません。認証ラベルが製品についていることで、その判断が可能となります。

日本でも今後エシカル消費が進んでいくと共に、その重要性は増していくでしょう。


どんな認証ラベルがある?

認証ラベルとは具体的にどのようなものがあるのでしょうか?ここでは、いくつか代表的な認証ラベルをご紹介していきます。

・エコマーク



(画像引用:公益財団法人 日本環境協会

製品が生産されてから廃棄されるまでの一生を通して環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた製品につけられるマークです。

<対象>
容器・電化製品・衣類・雑貨・文房具などあらゆる製品・サービス


・FSC(森林管理協議会)


(画像引用:FSCウェブサイト

適切に管理された森林の木材や、その木材を使用した製品につけられるマークです。森林破壊や違法伐採などの問題に対して、持続可能な森を作るための解決策となります。

<対象>
家具・紙製品など木材を使用するあらゆる製品


・RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)

(画像引用:一般社団法人 日本サステナブル・ラベル協会

生産から最終製品まで持続可能な方法で作られた製品につけられるマークです。パーム油の栽培では開発のための熱帯林の破壊や現地住民の人権問題等、多くの問題をはらんでいます。

<対象>
洗剤・石鹸・食品などパーム油を使用するあらゆる製品


・有機JAS



(画像引用:農林水産省ウェブサイト


農薬や化学肥料に極力頼らず自然の力で生産された農産物やそれを使用した加工品などにつけられるマークです。このマークを取得していない場合には「有機」「オーガニック」と表示することができない決まりになっています。

<対象>
農産物・加工食品・飼料など


・MSC(海洋管理協議会)





(画像引用:海洋管理協議会ウェブサイト

水産資源や環境に配慮した持続可能な漁業で獲られた水産物につけられるマークです。過剰漁業による天然水産資源の枯渇といった危機に対応する仕組みです。

<対象>
天然漁業・水産物


・レインフォレストアライアンス


(画像引用:Rainforest Alliance

森林や生態系保全・農場の労働環境・農村コミュニティの発展など、社会・経済・環境的に持続可能な生産がされている製品につけられるマークです。

<対象>
農産物・林産物・観光業


・GOTS(オーガニックテキスタイル世界基準)


(画像引用:GOTS

原料の収穫から最終製品になるまで、オーガニックであり社会・環境面で配慮されて生産されたテキスタイル製品につけられるマークです。

<対象>
服・タオル・寝具などあらゆる繊維製品



・国際フェアトレード



(画像引用:フェアトレードラベルジャパン


小規模生産者やコミュニティへの経済的貢献を始め、社会・環境面においても持続可能に生産された製品につけられるマークです。

<対象>
コーヒー・カカオなどの食品、コットンやスポーツボールなど



企業が認証を取得するメリット




・サプライチェーンにおける環境や人権のリスク回避

企業が認証を取得するメリットの1つ目は、事業活動に潜む社会・環境的なリスクを回避できるという点です。以前『【ビジネスと人権】 いま企業に求められる人権デューデリジェンス』という記事で紹介しましたが、昨今サプライチェーン全体を通して環境問題を含めた人権問題が明らかになることが増え、多くの企業が対応に追われています。これらの問題はともすれば、不買運動や従業員のボイコット・訴訟などに発展するリスクもあります。認証によっては、取得過程において自社・調達先含めた全てのサプライチェーンが厳しい基準に基づいて監査されるため、このリスクを軽減することに繋がります。

このようなリスクを抱えている可能性の高い国・地域でビジネスを行っている企業は、特に認証制度を重視する必要があるかもしれません。筆者は、アパレルブランドを創業しインドの委託工場で生産を行っていますが、工場選定の際に重視したのはやはり工場の認証取得有無でした。というのもアパレルブランドを始める以前に、私自身実体験として、認証のない工場において自主申告と実態が異なるという場面に遭遇したことがあるためです。当時、私はインドの革のなめし工場を訪問していました。現地を訪問する前に、工場では環境配慮として染色後の汚水を処理する排水処理プラントが稼働していると聞いていました。しかし、実際に訪問してみると設備としては備わっていたものの、不具合があって以来使用されていないものでした。外国の工場などでの環境や人権への配慮は、製品の品質と違い目に見えるものではなく又企業自らその事実を確認するハードルが高いため、第三者機関による監査が行われている認証は重要な役割を果たします。



(画像:筆者撮影(インド革なめし工業地帯にて)

・サステナブルブランディングでエシカル消費を訴求

認証を取得するメリットの2つ目は、サステナブルブランディングによる新たな顧客層の獲得です。認証ラベルを製品に表示することにより、エシカル消費に関心が高く、認証ラベルの存在を理解している層に製品やサービスを選んでもらうことが可能となります。またさきほどの消費者庁の調査では、約80%がエシカル商品の購入意向(これまで購入したことがあり、今後も購入したい+これまでに購入したことはないが、今後は購入したい)を持っているという結果が出ています。認証ラベルを取得することによって、これらの層にもアプローチが可能となります。

企業が認証を取得する際の注意点




一方認証取得に取り組む際の注意点としては、想定外の時間やお金・労力がかかることが挙げられます。認証によっては書類審査の他に、審査官が実際に企業や工場に訪れて行う現場監査もあります。また、最終消費者に販売する製品に認証ラベルを表示したい場合には、製品の原料までさかのぼり関わっているステークホルダー全員に協力をしてもらう必要があります。また、その際に認証基準に達しない項目がある場合には改善を行う必要があるため、想定外の時間やお金・労力がかかってくると考えられます。

仮に時間や費用の関係で自らでの認証取得が困難な場合には、調達先に認証を取得した企業を選ぶというのも1つの手段です。


サステナブルブランディングで選ばれる企業へ

今回は、サステナブルな製品や企業が表示できる認証ラベルについて、その種類やメリット、注意点についてご紹介してきました。

今後、消費の中心が若い世代に移っていくとその傾向がより顕著になり、認証の取得は消費者・生活者からの信頼獲得に大いに役立つと考えられます。とはいえ、現状では認証ラベルの認知度は決して高いとは言えません。企業は自ら認証を取得する、もしくは認証取得工場からの調達をすると同時に、それらの情報が消費者に役立つものになるよう伝えていくことが必要になるでしょう。



【参考サイト】

「倫理的消費(エシカル消費)」に関する消費者意識調査報告書




■執筆:contributing editor Eriko SAINO
#ファッション #トレーサビリティ #エシカル消費 #人権 #フェアトレード #気候正義



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