【 プラスチック・海洋ごみ 】 SDGs、サステナブル、循環型社会につながるリサイクル推進マーケティング

( 公開日:2021.1.6. )

#マイクロプラスチック #海洋プラスチックごみ #廃棄削減 #リサイクル #サーキュラーエコノミー


日本がこれまで頼ってきた中国への廃プラスチック類輸出の全面的な禁止を受け、国内では急速に「脱プラスチック」「プラスチックフリー」が声高に取りざたされるようになった。
2020年7月から全国で運用が開始されたレジ袋有料化も、生活者に対して、レジ袋を使わない選択が環境負荷の軽減につながるという意識づけを促進した。

プラスチックがとりわけ問題視されているのは海洋プラスチックごみで、道や公園に捨てられたレジ袋やペットボトルなどのプラスチックがやがて川から海へと流れ出し、マイクロプラスチックとなって環境汚染を引き起こすと共に、海の生態系を破壊する。それだけでなく、マイクロプラスチックを体内に取り込んでしまった魚を食べることによって、人体への健康被害も懸念される。
ゆえに、マイクロプラスチックや海洋プラスチックごみは早急に取り組むべき問題として、世界中でさまざまな議論が交わされ、各国で取り組みが進んでいる。



このような問題が顕在化するにつれて、プラスチックを「悪」とみなす潮流が生まれているが、はたしてそれは正しいのだろうか?
もちろん、製造過程でのCO2削減の観点からも、プラスチックを減らすことは環境改善にとって重要だ。しかしプラスチックは「空気や熱を通しにくい」「いろいろな形に加工しやすい」など多くの利点があり、その性質や機能は日常生活のあらゆる場面で使用されている。

短絡的にプラスチックを「悪者」と見なすのではなく、問題の本質を捉え、どのような行動がより課題解決に効果的かを企業も生活者も考え、より適切な取り組みにつなげていくことが求められているのではないだろうか。

プラスチックを悪者にしない

あらためて問題の本質を捉えなおしてみたい。
悪いのはプラスチックそのものではなく、プラスチックが環境汚染を引き起こしてしまう現状である。では、それがなぜ引き起こされるのかというと、プラスチック製の容器や製品が不適切に廃棄(ポイ捨てなど)されたり、適切にリサイクルされていないためだ。

特に日本は、一人あたりのプラスチック容器包装の廃棄量が世界で2番目に多いのに対し、廃プラスチックのリサイクル率はわずか27.8%(政府広報オンライン, 2019年)と低い。



となると取り組むべき対策としては、まず「プラスチックごみを極力減らす」ことと、再資源化できるようプラスチックのリサイクルについて正しく理解することではないだろうか。

・プラスチックのリサイクル手法は3種類

マテリアルリサイクル(再生利用)は、プラスチックのまま新しいアイテムに作り変えるというリサイクル方法。これは汚れが少なくリサイクルできる状態のものが選別されるため、家庭での「分別」が重要になってくる。

ケミカルリサイクルは、化学反応を起こして再利用する方法だ。
マテリアルリサイクルのように目に見える形でリサイクルされるのではなく、燃料などとして使われることが多く、
油に戻したり(油化)、高炉や発電に利用(コークス炉化学原料化)されたりする。

サーマルリサイクルは、プラスチックをただ焼却処分するだけでなく、その際に出た熱のエネルギーをリサイクルするというもの。
かつては廃プラスチックを焼却する際にダイオキシンが発生することが懸念されていたが、
現代ではダイオキシンを発生させない方法が生まれ、このサーマルリサイクルも活用されるようになった。


民学連携リサイクルプログラム

・森永製菓×TERRACYCLE×教育機関連携リサイクルプログラム

森永製菓株式会社とテラサイクルジャパン合同会社が、「inゼリー」に代表されるパウチタイプゼリー飲料の空き容器を回収するプログラムを2021年9月より開始した。
飲み終えたパウチタイプゼリー飲料の容器を回収し、資源として新たなプラスチック製品へリサイクルするというものだ。回収されたゼリー飲料容器は粉砕後、プラスチックとアルミに分けられる。プラスチックはペレット(加工しやすいように3~5mm程度の粒状にした素材)に成型した後、新しい物に生まれ変わる。

本プログラムを協働したテラサイクルジャパンは以下のコメントを寄せている。
「ペットボトルや缶に比べてパウチ容器はリサイクルが困難とされてきましたが、森永製菓がスポンサーとなり本プログラムを開始できたことで、パウチ容器を資源して活用することができます。今後は飲料容器だけでなく、食品容器のリサイクル率を上げる第一歩となればと考えています。」

そしてこのリサイクルプログラムは、昨今話題となっている「ESD(SDGs達成のための教育)」推進の一環として、また、商品ブランディングの観点からも部活動等で生徒たちが「in ゼリー」を飲む機会が多いことから、全国の学校で展開された。2021年11月末時点で、6校8台の設置が完了している。

・「ゴミ箱」ではなく「宝箱」

回収ボックスが設置された学校の一つ、福島県立郡山高校では、設置された回収ボックスの上に利用を促す貼り紙があり、そこには次のように書かれている。

これは「ゴミ箱」でしょうか? いいえ「宝箱」です。


(画像引用:森永製菓株式会社プレスリリース


「ゼリー飲料のパッケージがリサイクルできるなんて驚きだし、回収されることにも驚きました。(中略)この活動を生徒だけでなく多くの人に知ってもらえるととてもうれしいです」と、このプログラムに関わった生徒は話す。

プラスチックを「ゴミ=価値のないもの」と見なすのではなく、価値ある資源だと気づくことが、環境汚染や廃棄問題や海洋生物多様性の改善にむけての大切な一歩となることを示す好事例と言えるだろう。


「また会おうね」正しくリサイクルして再資源化

・プラスチックと上手に付き合いながら環境負荷を減らす

サントリーはグローバルにサステナビリティを推進する企業として、サントリーグループ独自の「プラスチック基本方針」を策定した。


(画像引用:サントリーコーポレートサイト「サントリーのエコ活」より)

プラスチックは私たちのくらしに多大な貢献をしており、貴重な資源でもあるという位置づけのもと、ゴミの悪者として排除するのではなく、リサイクルを中心に省資源化をはかっていくことが主たる狙いだ。

まずはリサイクルを推進させるための技術「FtoPダイレクトリサイクル技術」を、リサイクルの協働パートナーである協栄産業株式会社や設備メーカーと共に開発した。従来よりもさらに工程を短くショートカットすることで、より効率的なリサイクルプロセスを実現。この結果、製造工程におけるCO2排出量も削減できるという。

・のんだあとはサステナブル! 

先述の通り、使用済みペットボトルのリサイクル率が低いことが課題だが、その割合を増やしていくためには、のみ終わった後の状態が大事だということ、そして今ある資源を循環させることが環境負荷の低減にもつながるということを、生活者とのコミュニケーションでしっかりと伝えていくことが鍵となる。

そこでサントリーはこれまで課題とされてきた「伝える」と「集める」の強化を図るために、「またあえるプロジェクト」をスタートさせ、商品を通じて、リサイクル推進のコミュニケーションを行っている。

たとえばポスターでは、「キャップをはずして」「ラベルをはがして」「中をすすいで」「つぶして戻す」という、サステナブルなアクションをピクトグラムで分かりやすく紹介。のんだ後のアクションを少し工夫することで、ペットボトルは何度でも資源として再利用が可能だと伝えている。


(画像引用:サントリー「#素晴らしい過去になろう」プロジェクト」特設サイト


2021年9月に公開されたTVCMでは、飲料メーカーでありながら、飲むシーンが一切ないというユニークな切り口で、リサイクル推進をメインに訴求している。
TVCMだけでなく、「#素晴らしい過去になろう のんだあとはサステナブル!」と題されたWEB動画もYouTubeで同時期に公開された。

サントリーは、2022年末には日本国内のリサイクルペットボトルの使用比率を50%以上に高める計画だ。


「捨てる」のではなく、次の場所へ「届ける」



特定の製品カテゴリーや商品名と併せて、「捨て方」や「リサイクル」といった検索ワードがサジェストキーワードにも現れるようになってきた。
今後は、コーポレートサイトやオウンドメディアで「捨て方」「リサイクル」についてのコンテンツを増やすことがSEO対策にもつながってくるのかもしれない。

一概にプラスチックを否定したり批判するのではなく、多角的な視点を持ってプラスチック製品や容器を使い終えた後のプロセスを具体的に想像し、実践することが、これからは企業にも生活者にも求められてくるだろう。「捨てる」という意識ではなく、しかるべき次のプロセスへ資源として「届ける」という意識が持てるようになれば、リサイクル率の改善にも効果があらわれるはずだ。




【 参考サイト 】

リユース・リサイクル情報局

プラスチックごみ削減に向けた取り組み「inゼリー リサイクルプログラム」開始

サントリーグループ「プラスチック基本方針」策定

特設サイト「#素晴らしい過去になろう」プロジェクト




■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
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