話題のサービスや技術を活用した
地方創生の新たな試み

地方の人口が減っていく中で、観光や定住促進を目的に、地方を盛り上げる多くの取組みが行われている。特産品のアピール、ゆるキャラや有名人の起用による話題化、企画性の高いPR動画による拡散など方向性が多岐にわたる中で、今話題のサービスや技術を活用した官民連携の新たな試みが生まれてきている。

地域の抱える課題と既存のサービスをうまく結びつけ解決に導いた事例や、最新技術により新たな観光資源を生み出そうとしている事例など、これからの地方創生のヒントとして、5つの事例を紹介する。


地方創生にもSDGsの波

内閣府では、地方が将来にわたって成長力を確保していくために、持続可能なまちづくりや地域活性化に向けてSDGsの理念に沿った取組み「地方創生SDGs」を推進している。内閣府の提供する「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」には1024の都道府県/市町村、16の関係省庁、5072の民間団体が参加し(※2021年11月末時点)、官民が連携した地方創生の動きが進んできている。

そうした中で、これまでの短期的なPR施策だけでなく、より地域に根差し、中長期を見通した持続可能なまちづくりを目指す事例が増えてきている。


社会問題を話題のサービスで解決した事例3選

(画像引用:公式サイトより)

■空き家×クラウドファンディング
大阪府大正区 ヨリドコ大正メイキン

大阪市大正区で取り壊しが検討されていた築65年の長屋をリノベーションし、アトリエと住居、店舗が一体化したモノづくりの新拠点として生まれ変わらせた事例。

改修費用はクラウドファンディングを活用し調達。工事の様子をSNSで発信したり、改修に至った経緯をインタビュー記事で紹介するなど、地域の人々が関心を持てるように発信。オープンに発信していくことで注目が集まり、区による広報支援や全国各地から視察が来るなど、単なる建物の改修ではなく、プロジェクトとしての広がりを見せた。

空き家問題が深刻化する中で、更地にするのではなく、クラウドファンディングを活用し、地域の交流の場として生まれ変わらせ、事業として存続させていくことは新たな地方創生モデルのひとつといえる。

【参考サイト】
ヨリドコ大正メイキン公式サイト
GoodMorningでのクラウドファンディングの募集
インタビュー記事


(画像引用:公式サイトより)

■子ども食堂×WEBサービス×ふるさと納税
茨城県境町 境町こども食堂

境町は、人に食事をごちそうすることのできるWEBサービス「ごちめし」、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」と連携し、「境町こども食堂」を展開。
「ごちめし」WEBサービス内や「ふるさと納税」で集まった寄付金を元に、18歳以下の子どもに地域の飲食店が無料で食事を提供する。新型コロナウイルス感染症の影響で困窮する家庭や、売上げに悩む飲食店の双方の支援につなげている。

ごちめしやふるさと納税と連携することで気軽に寄付を募ることができ、ダイレクトに支援の手を届けられる。また、寄付の使い道が目に見えることや、地域の飲食店と子供が関わりをもつことで、地域住民同士のつながり創出にも一役買っている。

【参考サイト】
境町こども食堂公式サイト



(画像引用:プレスリリースより)

■街歩き×位置情報アプリ
栃木県佐野市 サノコレ!

サノコレ!のアプリをダウンロードして、実際に街を歩くと、観光・健康・防災など月毎に変わるテーマに合わせて佐野市内にスポットが出現。歩いた歩数や、スポットに出現するアイテムの獲得によってポイントが貰え、イベントへの投票や賞品への応募が楽しめる。

アプリを利用することでコロナ禍の運動不足が解消でき市民の健康維持につながるほか、自治体が伝えたい情報を楽しく知ってもらうことができる。

【参考サイト】
サノミライラボ公式サイト
プレスリリース



最新技術の活用により、
新たな観光資源創出を目指す事例2選

(画像引用:プレスリリースより)

■観光地×AR
鳥取砂丘で月面体験

夜の鳥取砂丘を舞台に、ARグラスを使って月面探索を疑似体験するイベント。昼間は観光客の多い鳥取砂丘を夜も有効活用し、新たな観光客誘致へとつなげる。

最新の技術と結び付けることで新たな観光資源の創出に。伸び悩む観光地の話題化の施策としても可能性を感じる事例。

【参考サイト】
月面極地探査実験A公式サイト
プレスリリース




■イベント×VR
福岡県福岡市 デジタル花火大会

福岡市の「西日本大濠花火大会」をモチーフに、大濠公園周辺の場所を再現したデジタル空間上で花火大会を行う。参加者はVRゴーグルを使って、デジタルなお祭りを体験できる。

2022年1月15日~2022年2月13日に実証実験を実施予定。体験後のアンケートにより福岡への興味・関心・熱量の変化を測定し、ヴァーチャル空間でのイベントの可能性を模索する。

新型コロナウイルスをはじめ様々な要因により、中止や廃止が増えている地方の祭りやイベント。VRやARを活用することで、場所や人の制限なく、イベントを行うことができ、地方の魅力を継続的に発信することができる。

【参考サイト】
プレスリリース


今ある観光資源や特産品を外へアピールすることから一歩進んで。
既存の枠組みにとらわれず、さまざまな新しい試みを模索していくことで、地方創生の可能性は広がっていく。アピールする資産の少ない地方にとっても、アイデア次第で新たな魅力を創出できるチャンスともいえる。
住む人にとって心地よい持続可能なまちづくりや、新たな魅力の創出がこれからの地方創生の鍵となっていく。

■執筆:Sustainable Brand Journey編集部



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