ビューティー界のサステナビリティトレンド(後編)ブランドの姿勢が価値となり、購買へ

SDGsビューティーともいえる、安全性や信頼性の高い化粧品ブランド、ソーシャルグッドな取り組みを行う化粧品ブランドに注目が集まっています。
前半では、国内の先進的なビューティーブランドを紹介しましたが、後半は、海外の事例を2つほど紹介します。

水の使用を極力おさえた製品で
環境負担を削減する SUSTEAU(サストー)  

ひとつめは、アメリカ発のヘアケアブランド、SUSTEAU(サストー)。
地下水や河川、湿地、流域の森林などの自然環境が供給する量を上回る規模で、水資源が農業や工業に利用されていることによる水不足や、気候変動による降雨量減少の深刻化により2050年までに世界人口の52%が水不足のリスクにさらされると予想される中(参照:『World Water Development Report 2019』国連)、ウォーターレス・ビューティーを提唱しています。


(画像引用:SUSTEAU公式サイト

・環境負荷削減のために無駄を省くことにフォーカス

サストーは、シャンプーやコンディショナーの80%以上が水であるという事実を受け、水分を含まないシャンプーを開発できたら、製品の容量、エネルギーや流通など、製造過程の多くの面で無駄を省き、環境負担を減らすことができるのではないかという考えのもと、開発がスタートしました。

使用感を損なうことなく実現したパウダー状のシャンプーは1本のボトルが、従来の液体タイプ4本分に相当。1本分の使用可能回数は増えながらも軽量のため、結果として輸送時のCO2も削減することができます。また、水分を含んでいないため変質が少なく、保存性が高いというメリットもあります。


(画像引用:SUSTEAU公式サイト)

・「サステナブルなアイテムを使いたい」生活者からの評価も上々

小さいボトルでありながら、より長く使えて、パフォーマンスはサロンで使われるようなラグジュアリーブランドレベルであるシャンプーは、アメリカの美容メディアallureでBest of Beautyを受賞。ビューティーセレクトショップ、セフォラでも人気商品となっています。

「少量の水を加えるだけで手軽に使えて、髪が驚くほど柔らかくなる」「水を無駄遣いすることなく、環境にやさしいシャンプーを探していたので満足」「サステナブルなアイテムを使いたいが、仕上がりが悪いと意味がない。その点サストーは両方を叶えてくれる」とユーザーからの評価も上々です。


(画像引用:SUSTEAU公式サイト)

・再生プラスチックやヴィーガンなどのサステナブルな素材を採用

再生プラスチックを95%以上使用、ヴィーガン、安全性の高い植物原材料を使用といった サステナブルな取り組みに加え、サストーは髪、心身、地球の健康のための情報発信を行うとともに、ユーザーにパーソナルケアのあり方・ライフスタイルの再考を促す呼び掛けも行っています。 ウォーターレス・ビューティはまだブランドが少ないものの、水不足や環境負荷の少なさを考えると、これから発展していく分野であることは間違いないでしょう。


韓国発 グローバル・サステナブル・ブランド30に選出された
環境活動に本気で取り組むスキンケアブランド
TOUN28(トーン28)

次に紹介するのは、2016年に誕生した韓国の本格サステナブルブランドTOUN28.
コンセプトとして「環境と個人のために行動するブランド」を掲げ、「環境への働きかけは、販売手段ではなくブランドの存在目的」を宣言するスキンケアブランドです。


(画像引用:TOUN28公式インスタグラム

・サステナビリティや環境配慮を一過性で終わらせない

TOUN28の共同代表であるパク・ジュンスさんとチョン・マリアさんは、環境活動、環境意識の変革スピードが遅すぎることを懸念し、売上よりも環境を優先する企業が登場したら、意識変化のスピードを早めることができるのではないかとTOUN28を立ち上げました。TOUN28は、“環境”“サステナビリティ”を一過性のもので終わらせるのではなく、それ自体を存在意義としたビジネスを行うという考え方のもと、数々の徹底した取り組みを行っています。


(画像引用:TOUN28公式インスタグラム


・90%以上ものプラスチック削減を実現

まず目につくのが、クラフト紙を使ったシンプルな容器です。プラスチックの使用量を減らすために、パッケージのための生分解性がある紙容器を開発。それにより、90%以上のプラスチック削減を実現しました。紙パッケージの内側に貼るプラスチックも、リサイクルが可能です。現在、キャップのみアルミを使用していますが、パッケージについては、いまなお改良を目指しているそうです。

製品に使用される原材料はオーガニック中心の植物が大部分を占めたヴィーガン仕様であり、防腐剤をはじめとする石油由来の化学物質を使用していません。特筆すべきは、原材料費の割合を90%にまで高めるという異例の取組みです。通常、化粧品の原材料費は2~10%であり、大部分は容器やマーケティングに費やされていますが、製品があるべき姿を追求し、その割合を大きく変えています。

・肌診断×サブスク、ユーザー視点の新しいビジネスモデル

スキンケア製品は、肌の周期である28日ごとに、肌状態の診断に基づいたアイテムを届けるサブスクリクションモデルのため、製造予測がつきやすく無駄が出にくいというところもブランドの理念と合致しています。自社オンラインショップでの販売を基本としており、肌診断についてはスタッフが訪問等で行うとのこと。カウンセリングのための場所や時間の調整が難しいのではと気になりますが、ブランド自体は着実なユーザーを増やしているそうです。


(画像引用:TOUN28公式インスタグラム)

・グローバル・サステナブル・ブランド30に選出

「環境と個人のために行動するブランド」というモットーの通り、製品以外にも、環境のために行動する団体TOUN28クルー(地球特攻隊)を結成し、地域の清掃活動などを実施。将来的には、ゴミをリサイクルする工場を創りたいとしています。
こうしたTOUN28の活動は、韓国のみならず世界的にも評価を受けており、2020年は、国連の主要機関との特別協議資格をもつNGO組織、ASD(Association for Supporting the SDGs for the UN)のグローバル・サステナブル・ブランド30に選出されています。


ブランドの哲学と発するメッセージが選択の基準に

サステナブルが見せ方や売り方のための道具となり、一過性のものとして終わってしまうのでは本末転倒です。

今後、なにをもってサステナブルというのかというルールも整備されてくるかもしれませんが、創りたい世界、叶えたい未来を明確に描いて実践しているブランドは、希望をもつことを促すサウザンドカラーズや、実践こそが重要というTOUN28のように、必ず強いメッセージを発しているものであり、わたしたちユーザーも、その想いや信念を受けとめられる感受性と知性を身につけていくことが求められていると感じています。

イメージや効能、価格で化粧品を選ぶ時代から、「どんな姿勢のブランドを応援したいか」「どんな世界観に触れていると気分良くいられるか」で製品を選択する時代へ。
ブランドが考え方やあり方と問われると同時に、ユーザー自身も価値観をアップデートしながら製品を選んでいくという流れの中で、化粧品ブランドはビューティーの枠にとどまることなく、そもそもなぜそのビジネスを行っているのか、社会に対する存在意義は何なのか、といったところを突きつめ、表現していく必要がありそうです。独自の哲学とストーリーがなければ、製品だけの比較の世界に陥ってしまいます。世の中の化粧品のほぼすべてが一定の基準を満たした品質である以上、選択のポイントはますます哲学、世界観、姿勢になっていくのでしょう。


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■執筆:contributing editor  Chisa MIZUNO 
#ウェルネス #ビューティ #コンセプトメーカー #全国通訳案内士






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