フランス、攻めの法律で脱プラへ大きな一歩 プラスチック包装をめぐる国内外の現在地

プラスチックが地球環境に深刻なダメージを与えているという現実は、すでに世界中で認識されており、私たちの生活の中でも脱プラスチックに対する意識は高まりつつある。日本でもレジ袋の有料化により、マイバッグの利用率は大きく伸びている。しかし一方で、スーパーやコンビニに並ぶ商品は未だにプラチック包装されているものが多く、お惣菜やお弁当のパッケージもほとんどがプラスチック製だ。

プラスチック包装には、耐久性や低コストや品質保持といった利便性が高く、生活のあらゆる場面で使われている。だが近年は、海洋プラスチックごみの問題に端を発し、脱プラスチックに関して世界各国で問題提起されたことにより、小売店でのプラスチック包装削減を求める気運が生活者にも広がりつつある。

脱プラスチックをめぐっては、それにより食品ロス問題に影響を及ぼす点や、代替品もまた環境負荷が大きい可能性などまだまだ議論を必要とする課題が多い。

そんな中、フランスがいち早く、プラスチック廃棄の大幅削減を実現するために大胆な法律を打ち出した。


海洋プラスチックごみ・プラスチック廃棄の問題

1950年以降で生産されたプラスチックは83億トンを超え、そのうち約3/4にあたる63億トンがプラスチックごみとして廃棄された。リサイクルされているプラスチックはわずか9%に過ぎず、埋め立てられたり海洋へ投棄される多くのプラスチックごみが環境や生態系に重大なダメージを及ぼしている。

世界で生産されているプラスチックのうち、パッケージ(包装)の生産量は1990年頃から急激に伸びはじめ、増加の一途をたどっている。



(画像引用:『世界ではどんなプラスチック製品が生産されているの』資源・リサイクル促進センター )

しかしながら先述の通り、それらが適切にリサイクル処理される割合が非常に少なく、多くがプラスチックごみとして海洋に流出しているため、このままのペースでいくと2050年には海洋中のプラスチック量が魚の量以上に増加するとも見込まれている。


(画像引用:『プラスチックを取り巻く国内外の状況 参考資料』,環境省/三菱総合研修所,2019年)


EU、世界のプラスチックごみ対策の主導権を握るか

このままではいけない。そんな危機感が世界的に広がるなか、環境対策に注力しているEU(欧州連合)はプラスチック製・発泡スチロール製の使い捨て食器や食品容器の市場流通を禁止することなどを盛り込んだ新規則を2021年7月に施行した。

禁止対象は、主に外食産業で使用される使い捨て(シングルユース)スプーンやフォーク、ストロー、皿など。他にもプラスチック素材を使った漁網や食品包装、たばこフィルターなどの回収・処理費用の製造者負担や使用制限も規定した。
EUはこれにより、ヨーロッパの海岸に漂着するプラスチックごみが7割減ると推測している。


(画像引用:『プラスチックを取り巻く国内外の状況 参考資料』,環境省/三菱総合研修所,2019年)

フランスでは2022年1月から果物・野菜のプラスチック包装が禁止

フランスは、2016年1月に他国に先駆けて使い捨てプラスチック製レジ袋の使用を禁止するなど、プラスチック廃棄削減に意欲的かつ先進的に取り組む姿勢を見せている。

そしてさらに2020年2月、新たに制定された「サーキュラーエコノミーの廃棄物防止法」により、使い捨てプラスチックからの脱却を大きく推進させる目標と方針を打ち出した。
この法律では、2040年に使い捨てプラスチックの市場への投入を禁止することが長期的なゴールとして設定されている。個々の製品・分野における禁止令については段階的なスケジュールを踏んで、着実に実行に移していく構えだ。

2022年1月からすべての小売業において野菜と果物(重量が1.5kg未満)のプラスチック包装が原則として禁止される。これにより年間10億もの不要な包装を減らせると、『ル・モンド』や『リベラシオン』など各紙でも大きく取り上げられた。

今回対象となるおもな野菜と果物は以下の通り。
ネギ、ズッキーニ、ナス、きゅうり、トマト、キャベツ、カリフラワー、大根、アーティチョーク、根菜、ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、カブ。
リンゴ、ナシ、バナナ、柑橘類、キウイ、レモン、グレープフルーツ、プラム、メロン、パイナップル、マンゴー、パッションフルーツ、柿など。

対応するための猶予として6カ月の期間が設けられているが、違反した場合、1日あたり1,500ユーロ(約20万円弱,2021年11月時点)の罰金が科せられる可能性があるという。

また、同時期に禁止されるプラスチック包装は、ティーバッグ、新聞・雑誌・広告の包装、ファストフード店で使用される子ども向けのおもちゃのパッケージが対象となる。そして翌2023年1月からは、ファストフードでのカップ、グラス、カトラリーを再利用可能なものに置き換える法律が施行される。

包装技術の刷新が競争優位のキーポイントに

フランスの専門誌によると、専門家や流通業者はプラスチック包装に代わる解決策を見つけようと取り組んでいるという。
木材や段ボールが候補に挙がっているものの、開発コストがかかるために、食品の販売コストも上昇することが懸念されている。また、サプライチェーンにおいて食品ロスを出さないために、流通過程における見直しも急務となっている。

そんな中、イギリスのシンクタンク「グリーン・アライアンス」によると、新しい素材の一部が、プラスチック製よりも環境に悪影響を及ぼす可能性もあるという見方も出ている。
たとえば、ガラス瓶の場合、プラスチックよりもずっと重量があるため、輸送の環境負荷が高い。紙製の袋の場合も、プラスチック製の袋よりも炭素排出量が多くなりがちで、再利用が難しいという。
先ほどの食品ロスの観点からも、プラスチック製の袋に包んだきゅうりは14日以上も長持ちするため食品ロス削減に貢献できる側面もある。

こういったプラスチックの利点をカバーしつつ、環境負荷を軽減できる素材を開発できるか。
この課題はグローバルににおいても大きなビジネスチャンスとして捉えられている。



生活者に求められるのは正しい理解と無駄をなくす意識

野菜・果物のプラスチック包装が原則禁止となるフランスでも、レジ袋からマイバッグに移行した際と同様に、再利用可能な容器を持参して店舗に行くことを買い物客に促している。

サステナブルな廃棄削減・リサイクルのためには、生活者が「生物由来原料」「バイオマス」「堆肥化可能プラスチック」等の素材にはどういう処理が必要なのかを正しく理解する・理解を促すことも重要になってくるだろう。

すなわち脱プラスチックのために生活者として大切なのは、「プラスチックじゃなければ大丈夫」と短絡的に理解するのではなく、使用後は分別回収、再利用を徹底すること。そして、リサイクルできるように容器や包装をキレイにしたり、そもそも不要な過剰包装は避ける(リフューズ)なども有効だ。

日本は、1人あたりのプラスチック容器包装の廃棄量がアメリカ次いで多い。
さらにこれまで長い間、廃プラスチックを中国に買い取ってもらっていたのが、中国が受け入れを禁止したために、国内におけるプラスチック廃棄処理は限界に近付いている。



なぜ日本ではプラスチックごみが減らないのか。減らせないのか。
先に挙げたフランスの事例のように、スーパーなどの小売店での買い物にも再生可能な容器を持参するなど、無駄なプラスチック利用を極力減らすという意識がこれからは求められる。

プラスチックは利便性が高く汎用性がひろいため、大きな変化には企業も生活者も痛みを伴う可能性があるだろう。けれども世界では既により厳しい基準での取り組みや解決のための開発が進んでいる現実を踏まえると、日本における対策も急を要すると言わざるを得ない。
代替素材の開発と積極的な利用、分別回収や再利用の徹底、すでに持っているプラスチック製品は出来る限り長く使うなど。利便性と環境負荷軽減のバランスをどのように確立していくかは、私たちのライフスタイルや社会のあり方を含めて、どう考え、どう行動するかにかかっている。


【参考サイト】

日本が直面する、脱プラスチック問題

Legifrance:Décret n° 2021-1318 du 8 octobre 2021 relatif à l'obligation de présentation à la vente des fruits et légumes frais non transformés sans conditionnement composé pour tout ou partie de matière plastique

Gouvernement:Les emballages plastiques des fruits et légumes frais n’auront plus cours

Le Monde:La liste des fruits et légumes qui devront être vendus sans emballage plastique en 2022 dévoilée par le gouvernement

Liberation:Fin des emballages plastiques : quels fruits et légumes sont concernés ?

Plastic packaging ban 'could harm environment'

プラスチックを取り巻く国内外の状況(環境省, 2019年)



■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
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