サステナブル ブランディング強化で実現する、社員のモチベーションアップと来店促進

あらゆる業種で取り組みが始まっているサステナブルな活動。
今回は食を取り扱う2つのブランドが取り組む、フードロスの取り組みを紹介したいと思います。
この2社はサステナブル・ブランディングを推進することで、フードロスを実現するだけでなく社内外にポジティブな影響をもたらすことに成功しています。
活動は担当者だけの力では成功しません。ステークホルダーを巻き込むことが活動自体もサステナブル(持続可能)にするということが分かる事例にもなっています。


スターバックス コーヒー ジャパン:誰かの役に立つ食品廃棄削減で、従業員にもポジティブな影響を

スターバックスの店舗から排出される食品廃棄物で最も多いものは約7割を占めるはコーヒー抽出後のコーヒー豆のかすです。この豆かすは、乳牛を育てる酪農家に飼料として活用されたり、農業で使う堆肥に加工され野菜などの生産に役立てられるなど、どちらもスターバックスで販売される食品の原材料となり、食品のリサイクルループとなっています。

そして店舗から排出される食料廃棄物の約15%が期限切れフードです。
このフード廃棄に対して、スターバックスは2021年8月23日より、全国の店舗で食品廃棄削減を目指すプログラムを開始しました。
プログラムには二つの行動が含まれています。

① 閉店3時間前からドーナツやケーキ、サンドイッチなどのフードを20%OFFにて販売

※当日の各店の在庫状況に応じて、実施有無・開始時間が異なる

② プログラムによる売上の一部を認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえに寄付し、地域の子どもたちの食を通じたより良い未来づくりにつなげる


ディスカウントと寄付というこの二つの活動内容により、これまで廃棄していたフードの廃棄を抑えるだけでなく、スマートな形での販売促進や来店促進にもつながっていると言えるでしょう。

事前に実施した1ヶ月間のトライアルでは、お客様から
「スターバックスで買うことで良いことに貢献できる」
「少しでも廃棄を減らすことができるなら」
などアクションに対する賛同の声が届き、そしてトライアル対象店舗のスタッフからは、
「お客様と一緒に進められるサステナブルな取り組みで、誇りを持って商品を勧められる」
「実際に廃棄量の削減につながり、心理的にもプラスに感じた」
といったポジティブな声が集まったようです。

スターバックス コーヒー ジャパンでは、2030年までに廃棄物を50%削減することを目標として掲げています。このフード廃棄削減の活動はその目標達成に近づく一歩となったと言えます。


無印良品:民間初の「フードドライブ」で、自治体と連携し地域活性化に貢献

無印良品は、その名前が物語るように印=ロゴをつけず質の高い製品を提供しているブランドです。ものづくりや社会貢献に対する姿勢や理念は長年発信され、生活者にも浸透しているため、共感した人材を引きつけています。

ご近所付き合いが希薄になっている現代では近所でお裾分けする習慣もなく、食べきれないものは廃棄となってしまっています。
一方で日本では貧富の格差が問題となっており、さらに新型コロナ感染症によって拍車がかかり、困っている人が増えているという現状があります。
この社会課題の解決策の一つとなるのが「フードドライブ」です。

無印良品では2020年12月にオープンした大型店舗の有明店に「フードドライブ」の常設回収場所を設けました。家庭で余っている賞味期限が2ヶ月以上残る食品を店頭で回収し、フードバンク団体などを通じて福祉施設や団体に届けています。
その後この活動は広がり、横浜市にある18店舗や、MUJI新宿店でも始まっています。(2021年11月現在)

以前より自治体が取り組んでいた「フードドライブ」の活動は、自治体の力だけではなかなか活動の認知が広がらず、余剰食品の回収に苦戦していました。そこに知名度が高く店舗利用者の多い無印良品が関わることにより、活動をより多くの人に伝え、かつ提供する側も気軽に参加できる場所をつくるということに成功しています。

店舗を持つ企業は、お客様に足を運んでもらうことが販売の第一歩。コロナ禍においては困難になりましたが、店舗はあらゆる施策で来店促進に力を入れています。
一見店舗に利益がないように見えるこの無印良品のフードドライブの活動も、食品を提供するために店舗に立ち寄ることが何かしらの購入のきっかけとなるため、店舗にとっても利益につながっていると考えられます。

無印良品の5つの行動規範のひとつには「地域コミュニティーと共に栄える」が掲げられ、地域コミュニティを大切にした活動を行っています。
自社の利益追求だけでなく、地域社会に必要とされる存在になることで“共に栄える”というポジティブな連鎖を生み出し、サステナブルな世界の実現を実践するブランドと言えます。


ブランディングによるポジティブな影響は、対社外だけでなく社内にも効果的

ブランディングとは社外から認識されるイメージを作り上げると理解されている方が多いと思いますが、忘れてはいけないのがインナーブランディング(インターナルブランディング、従業員に対してのブランディング)による効果です。
誇りを持って業務を行う従業員は企業・ブランドをより良くしたいという気持ちが強いため、能動的に業務に携わりポジティブなエネルギーで周囲にも影響を与えます。それはブランド全体の成功に貢献し、活気のある職場は離職の抑制にもつながります。
インナーブランディングは従業員のモチベーションにつながり、ひいては強い企業づくりに役立つのです。

ご紹介した2つのブランドの取り組みはともに知名度の高いブランドの事例であるため、もともと良い人材が集まるブランドだと感じられる方も多いと思います。しかし、活動がより従業員のモチベーションや会社へのロイヤルティの向上に貢献している側面も少なからずあると言えます。

特に若い世代は、職場選びの際にサステナビリティも重視する傾向にあるため、サステナブル・ブランディングは今後より重要になっていくと考えられます。優秀な人材確保が難しくなってきているという点からも、幼い頃から社会課題への取り組みが叫ばれる中で育ってきたサステナビリティネイティブ世代に選ばれるブランドになっていくために、サステナブル・ブランディングの実践は今後必須となっていくでしょう。


【参考サイト】

スターバックスの食品リサイクル【飼料化、たい肥化】

スターバックスのフードロス削減のためのプログラム、8月23日(月)からスタート



Nagisa YOSHIDA  Sustainable Brand Journey 編集部
#ブランド #コミュニケーション #ビューティ #ダイバーシティ

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