SNS活用、サプライヤー協業などで食糧廃棄削減と飢餓ゼロをめざす

現在、食品ロスと食品廃棄物は10億トン以上にのぼる。
食料が無駄になっている一方で、9人に1人が栄養不足だという事実もあり、深刻な問題となっている。

また、損失額換算では年間で9,400億米ドルに相当し、世界のCO2排出量の8%を占める。
食品ロスを減らす努力は、温室効果ガス排出量の削減にもつながるだけではない。
食品ロス削減によって節約できたお金を最も食料を必要とする人々に還元すれば、飢餓対策にも役立てられる。

生活者ひとりひとりの行動とパートナーシップの広がりの両輪が嚙み合い、機能すれば、
サステナブルかつ強靭なフードシステムを築くことができるだろう。
そのための取り組みとして、個人で出来ることから世界規模の連携まで、様々な事例を紹介する。

世界の食料問題を考える「世界食料デー」

毎年10月16日は、「世界食料デー」として1981年に国連が定めた世界共通の記念日だ。
世界中の人々が協力しあって飢餓や食料問題について考え、伝え、組織も個人も一緒に解決にむけて行動することを目的に制定された。

この世界食料デーの前後では例年、国際的な政策を話し合う「世界食料安全保障委員会(CFS)」が開催されるのをはじめ、世界各地でイベントやキャンペーンが実施されている。

日本では2008年から10月を「世界食料デー」月間とし、飢餓や食料問題の解決に取り組むNGO/NPO、国連機関が連携し、飢餓や食料問題についてわかりやすく伝える情報発信を行ったり、誰でも気軽に参加できるチャリティイベントを開催している。


(画像引用:「世界食料デー」月間 みんなで食べる幸せを,「世界食料デー」月間 呼びかけ団体)


「何かしたい」という人が一歩踏み出すきっかけに

そもそも、食料問題はなぜ起きるのか。
世界では毎年26億トン以上の穀物が生産されていて、在庫もある。すなわち量だけで見ると、世界中のすべての人が十分に食べられるだけの食料が生産されていると言えるのだ。
にもかかわらず、世界の10人に1人(最大8億1100万人)が慢性的な栄養不足と言われており、
さらにコロナ禍によって2019年対比では飢えに苦しむ人々が1億人以上増加した。

その一方で、世界では毎年、生産された食料の3分の1にあたる13億トンが捨てられている(FAQ:国連食糧農業機関,2011年)。
先進国では「食べ残し」や「賞味期限切れ」など消費段階で捨てられる食べ物が多く、途上国では、農作物が収穫できたとしても「適切に保管できない」「加工するための技術が十分にない」「適切に運ぶための手段金がない」といった理由で、必要な人に届く前にムダになってしまっている現実がある。

こうした事実を正しく知った上で、「自分にできることを何かしたい」と感じた人が、学校や職場や地域といった自分の属するコミュニティで行動を起こせるような仕掛けが続々と発信されている。



「世界食料デー」月間事務局が運営するWEBサイトでは『のこりものがたり~食べる、を考える~』LINEスタンプを120円で販売している他、動画やイラスト素材をはじめ、ワークショップ教材、ハンガーマップ、フードドライブなどに参加するためのアクションキット、食料・飢餓問題をわかりやすく伝えるための冊子などがダウンロードできる。

SNSでゼロハンガーチャレンジ

飢餓をゼロにすることを使命に活動する国連唯一の食料支援機関、国連WFP(World Food Program)は『世界食料デーキャンペーン2021 ゼロハンガーチャレンジ~食品ロス×飢餓ゼロ~』を開催する。
その内容は、食品ロスを減らすアクションを起こしてSNSに投稿すると、1投稿=120円の寄付として、国連WFP協会が途上国の子どもたちに学校給食を届けるというものだ。

期間は、2021年9月29日(水)から10月31日(日)の一か月間。
食品ロス削減につながるアクションをSNSに投稿する際に、ハッシュタグ「#食品ロスWFP2021」をつける。「#食品ロスWFP2021」が付いた1投稿につき120円が、寄付協力企業より国連WFPに寄付され、途上国の学校給食支援に役立てられる。


(画像引用:World Food Programme : ゼロハンガーチャレンジ公式サイト)

自分が投稿するだけでなく、キャンペーンに協力するアンバサダーやスペシャルサポーター企業の投稿をリポスト、リツイート、シェアするだけでも寄付につながる仕組みだ。

アンバサダーには、国連WFPサポーターEXILE ÜSAをはじめ、ふなっしーや著名な料理ブロガー、吉本興業の芸人などバリエーション豊かな顔ぶれが揃う。
スペシャルサポーターには株式会社明治と日清食品ホールディングス株式会社が参画しており、それぞれ明治はすべての商品を対象に「#明治使い切りレシピ」、日清食品はチキンラーメンシリーズを対象に「#ひよこちゃんと食ロス0レシピ」の指定ハッシュタグでの投稿・シェアが寄付対象となる。


(画像引用:World Food Programme : ゼロハンガーチャレンジ公式サイト)



WRI「10X20X30食品廃棄物削減イニシアティブ

もう一つの世界的な動向として、世界の小売り10社がサプライヤーと協業し、2030年までに世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させる
という目標を掲げた「10X20X30食品廃棄物削減イニシアティブ」を紹介する。



地球環境と開発に関する政策研究・技術開発を行うアメリカのシンクタンク WRI( World Resources Institute)の呼びかけのもと、世界の大手小売業等10社が、それぞれの20社のサプライヤーとともに、2030年までに食品廃棄物の半減を目指すプロジェクトが2019年に発足した。
「10X20X30」は、小売企業10社、サプライヤー20社、2030年の数字を表している。

取り組みを主導する小売企業には、アジア唯一の企業としてイオン株式会社が参画している。
他には、Ahold Delhaize、Carrefour、IKEA Food、Kroger、Metro Group、Pick n Pay、The Savola Group、Sodexo、Tesco、Walmart が名を連ねる。

イオン株式会社と共にこのプロジェクトに参加する企業はWRIの承認を経て以下の21社に決定し、
日本における食品廃棄物削減の取り組みを加速すべく始動している。

・味の素株式会社
・株式会社ニチレイフーズ
・イオンアグリ創造株式会社
・イオンフードサプライ株式会社
・日清食品株式会社
・日清フーズ株式会社
・日本水産株式会社
・株式会社伊藤園
・イトウフレッシュサラダ株式会社
・株式会社日本デリカフレッシュ
・加藤産業株式会社
・ひかり味噌株式会社
・キッコーマン食品株式会社
・株式会社ベジテック
・キユーピー株式会社
・森永乳業株式会社
・キリンホールディングス株式会社
・株式会社ロッテ
・サントリーホールディングス株式会社
・山崎製パン株式会社
・敷島製パン株式会社

SDGs「つくる責任 つかう責任」ターゲット12.3

2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後の損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。
これは、SDGs 12番目のゴール「つくる責任 つかう責任」が掲げるターゲットのうちの一つだ。

このターゲットに対し、これまで紹介してきたような様々な取り組みや動向が世界規模で展開されている。しかしこの目標を達成するためには、ゴールにはっきりと明示されている通り「つくる責任」だけでなく、「つかう責任」を私たちひとりひとりがどれだけ真剣にとらえ、考え、行動を起こせるかにかかっていると言っても過言ではない。

家庭における食品ロスの量は年間276万トン(「平成30年度推計」農林水産省および環境省)にのぼり、食べ残し、過剰除去、買いすぎ・期限切れが主な原因と言われている。

生活者が食品ロスを減らすためにできることとして、以下のような行動が挙げられる。

・必要なもの、使えるものだけを買う
・利用予定と照らして、期限表示を確認する
・食品に記載されている保存方法に従って保存する
・皮なども丸ごと使った調理方法で過剰に捨てない
・野菜は、冷凍、乾燥など下処理し、ストックする
・残っている食材から使う
・体調や健康、家族の予定も配慮し、食べきれる量を作る
・作り過ぎて残った料理は、リメイクレシピなどで食べきる
・小盛りメニューやハーフサイズを活用し、食べられる量だけ注文する


(画像引用:『計ってみよう!家庭での食品ロス』消費者庁,2019年)


飢餓ゼロも環境問題も、ひとりひとりの行動で変えていく

食料廃棄、食品ロス、フードロスが引き起こす問題の一つに、地球環境への負荷が挙げられる。
廃棄の過程で排出される温室効果ガスは36億トン。これは世界の温室効果ガス排出量の約8%に相当する( FAO:国連食糧農業機関,2015年)。
気候変動によって食べ物を作る環境が厳しくなるなか、アジアやアフリカなどの最貧国に住む小規模な農家が、異常気象による災害の影響を大きく受けることで格差が拡大している。

すなわち、食料廃棄・食品ロス・フードロスを減らす努力は、温室効果ガス排出量の削減や飢餓の解決にも繋がるのだ。

また、食料を生産するには水や土地などの資源がたくさん必要なため、食べ物を捨てるということは地球上の限りある貴重な資源をムダにすることにもなる。
世界で利用される水のうち、食料を生産するために使われているのは約70%。
たとえば、ハンバーガー1個分の小麦や牛肉を生産するためには999リットル=2リットルのペットボトル500本分もの水を要する(環境省,2017年)。
廃棄される量の食料を生産するために、世界の農地の30%近くが使われているという報告もある(FAO:国連食糧農業機関,2015年)。

おにぎりアクション2021(#OnigiriAction)やゼロハンガーチャレンジ(#食品ロスWFP2021)に投稿したり、セミナーやワークショップにする。解決に向けて活動する団体を応援したり、こうした情報を拡散するなど、できることはたくさんある。
必要なのは生活者ひとりひとりの行動で、それらが企業・団体・政府といった大きな取り組みとつながることで、解決に向けた推進が強化されるはずだ。


【 参考サイト 】

みんなで食べる幸せを

世界の食料ロスと食料廃棄

世界の食料不安の現状 2015年報告

ゼロハンガーチャレンジ

食品ロスに関する11の事実 ― 持続可能なフードシステムとの関連性について 

イオン株式会社「10×20×30食品廃棄物削減イニシアティブ」の日本プロジェクト 始動!

計ってみよう! 家庭での食品ロス

2030年の「飢餓ゼロ」達成困難のおそれ ユニセフなど、国連5機関が新報告書


■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
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