代替肉開発スタートアップ、グルメの国フランスの最先端フードテック・イノベーション

パリに拠点を置く UMIAMI(ウミアミ)社は、植物を原料とした肉や魚の生産開発に特化したフードテックのスタートアップ。
2020年に設立されたばかりだが、その革新的なイノベーションで、早くも市場における認知を獲得し、ビジネスにおける注目も集めている。

味の楽しさと栄養価の高さを兼ね備えた肉や魚の代替品を市場に提供することを目指すUMIAMIの最先端フードテックの現在地をレポートする。

サステナビリティに基づいたフードテック・イノベーション

フランスのエコール・サントラル(工学・技術系エリート養成のための国立の高等教育機関)を卒業した3人の若者が、アグロ・パリ・テック(AgroParisTech:生命科学、農学分野でフランス随一の実力を誇る教育機関)とミュンヘン工科大学(TUM)の支援を受けて、2020年5月に設立されたUMIAMI。
「umisation」と呼ばれる新しい革新的なテクスチャリング・テクノロジーを開発し、これにより、エンドウ豆や大豆を使用して植物性の肉や魚を多種多様に作ることができるという。


(画像引用:UMIAMI公式サイト, Toutes les images proviennent du site officiel

公式サイトでは「健康」「気候変動」「動物福祉」のためにとミッションを掲げるとともに、「どんなに小さなことでも、私たちのすべての選択が地球と健康に大きな影響を与え得ると信じている」とブランドメッセージを打ち出している。


(画像引用:UMIAMI公式サイト, Toutes les images proviennent du site officiel )

健康と環境と動物を守ることを最優先しながらも、好きなものを食べる喜びを奪うべきではない。

この確固たる信念の基、「あらゆる点で肉よりも優れたプラントベース(植物由来)の食品を作る」として、人々がこれまで肉や魚を食べるときに感じてきた食感・香り・味を損なわない代替肉(mimic meat)を提供することを目指している。

投資家や提携企業を味方に、さらなる事業拡大

UMIAMIが開発した製造方法では繊維の太さと方向性の両方をコントロールできる点が、他社との差別化ポイントだ。
従来の押出成形技術(エクストルージョン)では、パテやミンチを作るか、鶏肉のような小片を作ることしたかできなかった。
しかしUMIAMIの新技術を用いれば、最大10cmもの厚手のホールピースで代替肉製品を作ることができる上、多種多様な植物性の肉や魚を作ることも可能だと言う。

この最先端テクノロジーは多くの投資家の注目と関心を集め、新たな生産拠点建設や試作品開発のために2021年7月には合計150万ユーロ(約1億9500万円)を調達。さらに公的投資銀行、フランスのメガバンク ソシエテ・ジェネラル(Societe Generale)等から80万ユーロの追加融資を受け、最終的には増資額が230万ユーロ(約2億9900万円)にまで達した。

また、ネスレで20年以上の経験を積んだインダストリアル・ディレクターを迎え入れ、さらなる事業のスケールアップを図る。

現在は約40社の企業やレストランと、ホワイトレーベル(White Label:生産した製品を、他の企業が自社ブランドで販売すること)の開発に向けての話し合いも進められているという。


(画像引用:UMIAMI公式サイト, Toutes les images proviennent du site officiel )

グルメの味覚も満足させる代替肉

フランスの経済紙『Les Echos(レゼコー)』でも、「イノベーター」のカテゴリーで取り上げられているUMIAMIは、すでに市場では植物性の代替イクラ、代替キャビアを販売している。
キャビアとイクラという高級食材にまでプラントベース(植物由来)のテクノロジーが応用され、しかもそれがすでにECを含めフランス国内に流通しているのが美食の国といわれるフランスらしい。

UMIAMIの代替イクラと代替キャビアは「ヴィーガン キャビア」「ヴィーガン イクラ」という商品名で、100gあたり6ユーロ前後(約800円)で販売されている。
成分は海藻が80%強を占め、豊かな風味と香りを再現するためにローリエ、ローズマリー、タラゴン、カイエンヌペッパーなどの天然のスパイスやアロマが加えられ、舌の肥えたグルメをも納得させるフレーバーに仕上がっているという。


(画像引用:MON EPICERIE PARIS ECサイト

おいしくてヘルシー、しかもSDGsに貢献

UMIAMIは、プラントベース(植物由来)以下のSDGs目標に取り組むことを掲げている。

・SDGs目標2:飢餓をゼロに
・SDGs目標3:すべての人に健康と福祉を
・SDGs目標6:安全な水とトイレを世界中に
・SDGs目標12:つくる責任 つかう責任
・SDGs目標13:気候変動に具体的な対策を
・SDGs目標15:陸の豊かさを守ろう

公式HPでは、植物由来製品が食肉と比較していかに環境負荷を軽減できるかをデータで示している。


(画像引用:UMIAMI公式サイト, Toutes les images proviennent du site officiel )

CO2排出量では牛肉の約10分の1、水の使用量は約7分の1、生産に必要な土地の広さは実に18分の1と、プラントベース(植物由来)食品が環境にいいことは明白だ。
また、生活習慣病等で問題視されるコレステロール値がゼロという点も、健康意識が高まる昨今において生活者が選びたくなる大きな要素となるだろう。

市場拡大を追い風に、強気の成長戦略

UMIAMIは、まずはフランス国内で特許を申請し、順次ヨーロッパとアメリカへ拡大展開の予定だ。

「競合が平均して30の食品添加物を用いているのに対して、メチルセルロースなどを優先的に排除し、8つ未満に抑えている。
製品の色や風味に影響を与えず、かつ適切な弾力性をコントロールできる」ことがUMIAMI製品の強みだとCEOのTristan Maurel(トリスタン・モーレル)氏は説明している。

今後の展望として、工業生産は2023年6月に開始され、2024年までに売上高は2,000万ユーロ(約27億円)を超えるとCEOは見通しを立てた。
この強気な見通しを裏付けるように、ベンチャーキャピタル Newfundの投資ディレクターも
「この新進会社が市場の発展によってもたらされる機会をつかむことを喜んで支援する」と公言している。


【参考サイト】

UMIAMI

Les Echos

vegconomist

MON EPICERIE PARIS


■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
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