「アライ(Ally)」とは何ですか?

10月11日は、国際的なカミングアウト・デー。
性的指向や性自認をカミングアウトした人々を祝い、また、セクシャル・マイノリティの認識向上を目指す記念日だ。国内企業でも、少しずつだがLGBTQ+の認知とともに、アライの輪を広げる取り組みが増えている。

Q. 「アライ(Ally)」とは何ですか?


A.
性的マイノリティーの人々を理解し、支援したいという人を「アライ(Ally)」と呼ぶ。
「仲間・同盟」などの意味を持つ英語の「Ally」が語源。同じような意味合いで「LGBTQ+フレンドリー」という言葉を耳にしたことがあるかもしれない。どちらも似た意味ではあるが、フレンドリーよりアライのほうが、より積極的に支援してくれる人を指す。
具体的には、LGBTQ+ の社会的地位向上や権利擁護、平等の達成のための運動などに協働してくれるような人々である。

アライは1988年頃の米国の高校で、ストレート(異性愛者)の生徒によって作られたクラブ(サークル)からスタートしたと言われている。この「ゲイ・ストレート・アライアンス(GST)」というクラブでは、LGBTQ+ の人々への支援や、同姓愛に対する嫌悪や偏見を解消しようとするストレートアライアンス(Straight Alliance)という活動を行っていたが、これらの取り組みを支持する人々をアライと呼ぶようになった。

アライはこれまで、性的マイノリティーへの差別や偏見をなくすために働きかける人々や、それらに賛同するストレートの人々のことを指したが、近年は、ストレートかどうかに関わらず、アライであることを宣言し行動する人々を呼ぶようになった。
※LGBTQ+・・・LGBTに加え、自身の性自認や性的指向が定まらないQuestioningも含めた言葉


データで見るアライ

P&Gジャパン合同会社(本社:神戸市)が15歳~69歳の5,000人を対象に行った「LGBTQ+と『アライ』に関する全国調査」では以下のような結果が見えた。

「LGBTQ+」を自覚している人は全体の9.7%

15歳〜69歳の5,000人に、自身の性自認・性的指向を聞いたところ、生まれた時の性別と現在の自分の認識している性別が同一で、恋愛や性的な関心の対象が異性のストレート層は90.3%、一方、LGBTQ+層が9.7%であった。全体のおよそ1割がセクシャル・マイノリティを自認している。これを少ないと捉えるか、多いと捉えるか。年代別だと10代は19.2%、20代は14.6%と、若い世代ほど割合が大きくなっていることが分かる[図1]。


アライを知っている人は7.7%だが、半数がアライの考えに共感

全員に「アライ」という言葉を知っているかと聞くと、「詳しく知っている」1.8%、「聞いたことがある程度」5.9%と、認知率はわずか7.7%だった[図2]。

まだまだ知られていないことから、アライがLGBTQ+を支援し差別や偏見をなくそうと働き掛ける人のことと説明し、その上でアライの考え方をどう思うか聞くと、半数が「共感する」(53.8%)と回答。10代79.9%、20代62.7%と若い世代の賛同率が高くなっている[図3]。





しかし、共感者の69.1%は「アライとして行動していない」のが実情

アライとしての行動には、「性的指向や性自認に関する嫌がらせを止める」「周囲にLGBTQ+に関する理解を広める」「性の多様性に関する自身のLGBTQ+知識を深める」などがある。
これらの行動がとれているか確認すると、約2割程度(20.7%)しか行動できていないことがわかった。アライに共感すると答えた人でも、3割(30.9%)しか行動できていない[図4]

なぜ、共感してもアライとして行動しないのか

アライとしての行動をしないと答えた2,651人にその理由を聞くと、「身近にLGBTQ+の人がいない」(35.2%)、「自分に何ができるかわからない」(32.5%)が行動しない2大要因となっている。アライ共感層では「身近にLGBTQ+の人がいない」43.8%、「自分に何ができるかわからない」40.3%と、2大要因を理由に挙げる人がより多くなっている[図5]。



LGBTQ+に関する知識・理解不足がアライとしての行動のブレーキとなっているが、半数以上がアライの考えに共感している。特に10代、20代と若い世代の賛同率が高くなっており、今後アライという考えは社会から受け入れが進むと考えられる。


企業におけるアライの取り組み

日本においても、2013年に行政として初めてLGBTQ+ フレンドリー宣言を発した大阪市淀川区をはじめ、企業からの発信でLGBTQ+への配慮が広がりつつある。

パナソニックが、東京オリンピック・パラリンピック2020のトップ・スポンサーとして、LGBTQ+フレンドリー(アライ)化に踏み出したことは記憶に新しい。また、日本マイクロソフトの社内には、GLEAM(グリーム)と呼ばれる性的少数者の社員のためのコミュニティがある。GLEAMとは「Gay, Lesbian, Bisexual, Transgender Employees At Microsoft」の略称で、LGBTQ +の人たちが差別されることなく生き生きと働ける環境を実現するためにつくられた。

近年、国内でもCSRやダイバーシティ推進の一環としてLGBTQ+ 当事者に対する職場環境の配慮や取り組みが進んできている。ダイバーシティーを推進することは、職場での働きやすさだけでなく、新たなマーケットにもつながるとされている。

データ上では一定数のLGBTQ+当事者が存在する。つまり自分の身近にも必ず存在するはずだが、「自分のまわりにはいない」と考えている人が多いという実態。アライという言葉が広がることでこれらのギャップが埋まり、さらに「私はアライです。」と伝える人々が増えれば、誰もが生きやすい社会が見えてくるだろうか。
本当の意味でのインクルーシブな社会になるために、まずは知ることから始めてみよう。


【参考サイト】
P&Gジャパン合同会社/6月はプライド月間! LGBTQ+とアライ(理解者・支援者)に関する全国調査
アライとは?【LGBTでなくても、今日から活動できる】
アライとは 一般社団法人 日本LGBT協会
IDEAS FOR GOOD/アライ(Ally)とは・意味


■執筆:Sustainable Brand Journey編集部

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