ブランドのSNS活用は“もの”だけでなく“想い”も。共感で深まるエンゲージメント

 “風の時代“、という言葉を耳にしたことはありますか?
これは占星術、つまりホロスコープの話題で、どうやら私たちは金銭・物質・権威が重視される“土の時代”に長い間身を置いており、2020年の年末から知性・コミュニケーション・個人が重視される“風の時代”へと移ってきているようです。

占星術のとおり・・・なのかは分かりませんが、価値観は徐々に、しかし確実に変化してきています。以前は持っているもの、食べたもの、行った場所など、金銭的あるいは物質的な豊かさを表すSNS投稿が多かったのですが、近年では体験や自身の意思や思想に価値を置きSNS発信するユーザーやブランドが増えています。

今回は、その流れを踏まえて、共感され拡散されるSNS投稿について見ていきたいと思います。

SNSが意思表示を始めるきっかけとなった2つの社会運動

数年前アメリカの人気インスタグラマーが、日々投稿することに疲弊し突然アカウントを閉鎖したというニュースを何度か目にしました。当時はまだ、著名人は華やかでまるで悩みなどない恵まれた人生を送っている“偶像”のようなイメージが強く、その裏でどれだけの苦労や苦痛を抱えているかを語られることは殆どありませんでした。
それが徐々に、肩書きが何であれ痛みも苦悩もある一人の人間として発信をする人が増え、今ではそれが共感され高い支持を得るようになりました。

この急激な変化の背景にはいくつかの出来事がありますが、著名人だけでなく多くの人が内面を発信し始めるようになったきっかけとして、象徴的な2つの社会運動があると考えます。



まず2017年に始まった#MeTooがそれにあたります。
この活動はセクシャルハラスメントや性的暴行の被害について#MeTooを付けてSNSで被害を告白し、同じように被害を受けた人や賛同者との連帯が広がり、地位を利用して悪事を働いていた加害者たちが社会的に裁かれることとなり、被害再発の抑制へとつながっています。

またもう一つの大きな運動は、2020年に起きたBLM(Black Lives Matter)運動です。
これは白人警官がアフリカ系アメリカ人に対して行った卑劣な尋問により招いた死を発端として始まった人種差別抗議運動で、このニュースが世界に発信されるとすぐ、多くのブランドが次々に運動への賛同をSNSで投稿しました。

このBLM運動で大きな変化を感じたのは、この事件の際、意思を表明する企業や個人が増え「意思表示しない=問題に対しての賛同」であるとみなされるようになったことです。
以来、たとえ加害者でなくてもアクションを起こさないことは問題に加担していることになる、と批判されるようになったように思います。

生活者の共感を得ることが拡散の鍵

先ほど紹介した2つの事例はネガティブなものであり、かつ身近な出来事であるために共感されやすく、大きな渦となり広がりました。世の中は残念なことに、ポジティブなニュースよりもネガティブなニュースの拡散力が強い傾向にあります。
ポジティブなニュースが広く拡散されるようにするには、ユーザーの視点に立ち、共感され拡散したくなるようなコンテンツを作ることが必要です。




特にラグジュアリーブランドは、ユーザーが単にロゴのついた製品の写真を投稿すると、キラキラした生活にポジティブな印象を抱く閲覧者がいる一方で、物質的な豊かさのアピールに対してネガティブな感情を抱く人がいることも事実です。そのために投稿を控えている人もいるのではないでしょうか。

ところがサステナブルな活動を紹介するという形であればどうでしょうか。製品を見せる投稿よりもはるかに閲覧者は好感を抱きやすいと考えられます。
投稿者は、自分がその活動に共感し、“他の人にも知って欲しい“、”活動を広げたい“という賛同とともに、投稿者の在り方や考え方を伝え自身のブランディングにもつながります。
サステナブルな活動は、社会課題の解決だけでなく、共有されやすく、ブランディングに貢献するコンテンツでもあるのです。

行動へつながる共感を呼ぶジュエリーブランドの活動

ラグジュアリーブランドはそのブランド力でSNS投稿がされやすいと言えます。しかし、意思や思想をSNS発信するユーザーが増えている今は、認知度がこれからというブランドも、その想いや活動が共感を呼び情報の拡散へとつながると考えられます。

インドで生産を行っているジュエリーブランドARTIDA OUDは、対象のブレスレット購入で、国際NGOプラン・インターナショナルのオーダーメイドプログラム『インドに学校を建てるプロジェクト』に寄付できる“「I am」ドネーションプロジェクト“を行っています。
想いが込められたジュエリーは控えめながら美しく、ジュエリーを身につける習慣のない方でも取り入れやすいデザインであるため参加しやすいプロジェクトです。
購入だけでなく、「#iamdonation」をつけてインスタグラム投稿することによりさらにブランドから追加の寄付がされ、拡散されるほど寄付が増える仕組みになっています。
(参照:「I am」ドネーションプロジェクト



伝えなければ知られない、活動を知ってもらうためには定期的な発信を

ブランドにおける自社SNSは、新製品などの最新情報やブランドの世界観、製品の使い方を紹介するというのが主な役割であり、また、新型コロナ感染症の流行以降は、ブランドと生活者が直接コミュニケーションできる場にもなりました。

日々生活者が接する情報は膨大です。SNS投稿がより多くの人に閲覧されるためには、毎日の投稿によってアカウントをアクティブにしておくことや、フォロワーからのLikeやタップなどのエンゲージメントを獲得することが必要不可欠です。コミュニケーションが足りていないと、どんどんフォロワーの画面に表示されなくなってしまいます。

SDGsが浸透するに従い、社会課題に取り組むブランドが増えました。しかしながら、生活者に上手に活動を伝えられているブランドはあまり多くないと感じます。生活者のタイムラインには新しい投稿しか表示されないため、活動は定期的に発信する必要がありますが、多くのブランドでは活動についての発信が少ないため、あまり認知されていないように感じます。

企業活動の主軸は販売です。そのため、発信は販売に直結するような情報を発信してきたというのは必然だと思います。しかし、ブランドの存在意義や思想が消費活動に影響してくるようになった今、しっかりと想いを伝えていくことが結果的に販売へとつながっていくのではないでしょうか。

より多くの人に活動を認知してもらいエンゲージメントを高めていくためには、共感される発信を繰り返し行っていくことが、一つの大きなブランディング活動と言えるでしょう。


Nagisa YOSHIDA  Sustainable Brand Journey 編集部
#ブランド #コミュニケーション #ビューティ #ダイバーシティ

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