知っておきたい サステナビリティ・SDGs キーワード解説 【 vol.3 は~わ行 】

サステナビリティやSDGsに関する情報が増えるにつれて、耳にすることが増えた様々なキーワード。
なんとなく分かったようなつもりでいても、実はちゃんと意味をしらないままで使ってしまっていると、思わぬ誤解や炎上につながりかねない。

そこでこのコンテンツでは、市場ニーズや生活者意識の高まりを受けて、急速に変化し進んでいくサステナビリティの動向をキャッチアップするためにも、知っておきたい・理解しておきたいキーワードをピックアップし、分かりやすく解説。vo.1~3の全3回でお届けする。


知っておきたい サステナビリティ・SDGs キーワード解説 【は行 】


・パートナーシップ

協力関係。共同。提携。2者(社)以上の者が金銭・労務・技術などを出資して共同して事業を営む関係をいう。
SDGsの17番目のゴールにも「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」と設定されており、サステナビリティを実践・推進する上でも様々なパートナーシップ連携の動きが進んでいる。

・バイオマス

木材、海草、生ゴミ、紙、動物の死骸・ふん尿、プランクトンなど動植物から生まれた、再利用可能な有機性の資源(化石燃料を除いたもの)。
生物資源(bio)+量(mass)から成る言葉。燃焼させるエネルギーとしてだけでなく、エタノールを発生させて車の燃料にしたり、プラスチック化して使用したりと幅広く利用されている。
石油のような化石資源は一度利用すれば再利用が困難なのに対して、バイオマスは生物と太陽エネルギーがある限り持続的に再生可能。
また、バイオマスは成長過程で光合成するため、大気中で新たに二酸化炭素を増加させない「カーボンニュートラル」な資源としても注目されている。

・バイオミミクリー

biomimicry. 自然界の生物が有する構造や機能を模倣し、その機能を応用して新しい技術を開発することを意味する。「バイオミメティクス(biomimetics)」とも言い、日本語では「生体模倣」や「生物模倣」と訳される。
生物は長い年月をかけて進化し、生存への最適化を実現している。こうした生態系を研究し模倣することで、よりサステナブルなデザインや効率性の実現を目指すもの。
代表的な例として、ハスの葉を模倣して作られた水を反発する素材や、クモの糸を模倣して作られた強靭な繊維などが挙げられる。

・パリ協定

2015年12月にフランス・パリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で世界約200か国が合意して成立した、2020年以降の地球温暖化対策の包括的な国際協定。
1997年に定まった「京都議定書」の後を継ぎ、国際社会全体で温暖化対策を進めていくための礎であり、具体的には世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して、2℃より充分低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求することを目的としている。
パリ協定の下で国際社会は、温室効果ガス排出量実質的にゼロ、すなわち「脱炭素化」を目指す。

・ビオトープ

ドイツ語: Biotop または英語で「バイオトープ(biotope)」とも言う。日本語では生物空間と訳される。工業の進展や都市化によって失われた生態系を復元し、本来その地域にすむ野生の生物が生息できるようにした空間や場所を表す。
また、単に生物が住めるだけでなく、自然に成長・繁殖していく環境でなければならない。そのために作って終わり、ではなく、定期的にメンテナンスを行う必要がある。
日本では特定非営利活動法人 日本ビオトープ協会が1993年以来、推進活動を続けている。

・ヴィーガン/ヴェジタリアン

ヴィーガン(ビーガン Vegan)は「完全菜食主義者」。肉・魚類・乳製品・卵・はちみつを食べないことを指す。
食事面だけでなく、動物実験された日用品や毛皮・革製品を買わないといったライフスタイルも表す点が、ヴェジタリアンとの違い。
一方、ヴェジタリアン(ベジタリアン Vegetarian )は「菜食主義者」。主に卵・乳製品・はちみつを食べるかどうかによって細かく分類が分かれる。
近年では健康志向の高まりを受け、ヴィーガンやヴェジタリアンほどストイックではなく、週~月に数回ほど野菜だけを食べる日を設けるといった「フレキシタリアン」も選択肢の一つとして広がりつつある。

・PaaS

Product as a Serviceの略。製品そのものを売り切るという従来のビジネスモデルとは異なり、製品が提供する「サービス(機能)」をユーザーに継続的に販売するというモデルだ。「サービサイジング」とも言う。
PaaSのビジネスモデルとしては、リースやシェアリング、サブスクリプション(定額・継続課金)モデルなどが該当する。
中長期的に長持ちする製品(電化製品・車・ファッション・産業用機械など)や先の投資が見通せるBtoB商材が適しているとされるが、新しい製品群を対象とした「PaaS」モデルも登場しており、これからますます多様化していく分野の一つとして注目されている。

・PRTR

Pollutant Release and Transfer Registerの略。化学物質排出法の意味。
人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質が、事業所から環境(大気、水、土壌)へ排出される量及び廃棄物に含まれて事業所外へ移動する量を、事業者が自ら把握し国に届け出をし、国は届出データや推計に基づき、排出量・移動量を集計・公表する制度。2001年4月から実地されている。

・フードロス

フードロス(食品ロス Food Loss)とは、サプライチェーン内の食品供給業者が発生させるもの。いわゆる規格外の食品が廃棄されるなど、供給者の判断や行動によるものを指す。
他にも輸送や製造・加工の工程で傷ついたりして廃棄されるものもフードロスに該当する。
一方、フードウェイスト(食品廃棄 Food Waste)とは、小売業者(スーパーマーケット)、外食産業(レストラン)、消費者(一般家庭)によって捨てられる食品のこと。
(参照:『Technical Platform on the Measurement and Reduction of Food Loss and Waste』,FAQ)

・フラワーロス

市場の規格外のため廃棄される花や、需要に対して多く作ったために捨てられる花を指す。ロスフラワーとも呼ばれる。
その損失額は年間約1,500億円にものぼると言われ、2020年のコロナ禍によって、結婚式やイベントの相次ぐ中止により、フラワーロス問題はさらに深刻化した。

>> 関連記事「フラワーロス」 イベント装飾やノベルティに活かしてロス削減に貢献

・フェアトレード

生産者が人間らしく暮らし、より良い暮らしを実現できるよう、正当な値段で売り買いすること。
国際フェアトレード認証ラベルは製品に対するフェアトレード認証で、第三者機関による定期監査を実施し、国際フェアトレード基準を遵守していることを証明することが求められる
フェアトレード団体(FTO)マークは団体に対するフェアトレード認定。
団体広報物へのマーク掲載は可能だが、製品へのラベル掲載には別途認証取得が必要となる。
その他、各企業や団体が独自にフェアトレード基準を作って生産者と直接取引をしたり、生産者コミュニティを直接支援することもある。

・フェムテック

女性(female)とテクノロジー(technology)を掛け合わせた造語。
女性のライフステージごとの健康課題と現行の社会システムとのギャップを、テクノロジーやイノベーションで解消する商品やサービスの総称であり、フェムケアと呼ばれることもある。

>> 関連記事フェムテックに乗り遅れないで! 
>> 関連記事女性特有の課題を解決する157アイテムを集めて開催したFemtech Fes! 

・フライトシェイム

「飛ぶのは恥」という意味で、飛行機が二酸化炭素を大量に排出することから飛行機の利用に反対し、鉄道など他の移動手段を選択する社会的なムーブメント。
日本でも「飛び恥」という言葉が生まれ、Z世代を中心に共感が広まりつつある。
2019年にはスウェーデンに住む環境活動家グレタ・トゥンベリ氏が、ニューヨークで開催される環境関連会議に出席するため航空機を使わずにヨットで大西洋を横断して話題を集めた。
旅客分野で輸送量当たりの二酸化炭素の排出量を比較したデータでは、鉄道に比べて飛行機は約6倍に該当する。
(参照:「日本の温室効果ガス排出量データ」, CO2排出原単位において、鉄道17に対し航空は98[g-CO2/人km],2019年)

・紛争鉱物

英語の Conflict Mineral(s) に準じて「コンフリクトミネラル(コンフリクトミネラルズ)」とも呼ばれる。「コンフリクトフリー」も同義。武装勢力が資金源としている鉱山に由来する鉱物資源を指す。
強制労働や武装勢力への武器供給の遮断、テロリスト等への資金源の供給路を絶つ等を目的として、日本でも製造業を中心に取り組みを表明する企業が増えている。
アメリカでは、紛争鉱物の利用状況についての情報開示を毎年1回行うよう、上場企業に対して法律で義務づけられている。



知っておきたい サステナビリティ・SDGs キーワード解説 【 ま行 】


・マイクロプラスチック

5mm以下の微細なプラスチックゴミ。含有または吸着する化学物質が食物連鎖に取り込まれ、生態系や人体に及ぼす影響が懸念されている。
2015年独G7首脳宣言においても、海洋ごみ(とりわけプラスチック)が世界的な問題であることが確認された。
一次的マイクロプラスチック (primary microplastics)とは、マイクロサイズで製造されたプラスチック。洗顔料・歯磨き粉等のスクラブ材等に利用されているマイクロビーズ等が該当する。
二次的マイクロプラスチック (secondary microplastics)とは、大きなサイズで製造されたプラスチックが自然環境中で破砕・細分化されて、
マイクロサイズになったもの。生態系や健康への被害の他にも、観光・漁業への悪影響や沿岸域居住環境劣化が深刻視されている。
(参照:海洋ごみとマイクロプラスチックに関する環境省の取組,環境省,2016年)

・マテリアリティ

幅広いCSR活動のなかでも重要な課題=マテリアリティを設定し、それを軸にCSR活動をマネジメントし、そこにフィーチャ―して報告する考え方。
企業・ステークホルダーの「関心の高さ」ではなく、将来の企業価値を左右するような「影響の大きさ」に基づいて特定する。
詳しくはこちら
(参照:マテリアリティとは, CSRコミュニケート)

・マルチステークホルダー

企業・経営者・取引先・顧客・投資家・従業員・地域社会・政府・国際社会・環境など、金銭的な利害関係を超えて、広い意味では社会全体を指す。
さまざまに存在するステークホルダーから、3者以上のステークホルダーが対等な立場で参加・議論することを通し、単体では解決の難しい課題解決のために対話と合意形成を目指す仕組みを、マルチステークホルダープロセス(MSP)と言う。
内閣府国民生活局企画課による『安全・安心で持続可能な未来に向けた社会的責任に関する研究会報告書』において、「平等代表性を有する3主体以上のステークホルダー間における、意思決定、合意形成、もしくはそれに準ずる意思疎通のプロセス」と定義されている。


知っておきたい サステナビリティ・SDGs キーワード解説 【 や行 】

・ヤングケアラー

病気や障害のある家族の世話や介護、育児といった、本来は大人が担うべきケア責任(家事や生活の世話)または生活費のための労働を日常的に負担している18歳未満の子どもを指す。
「学校に行きたくても行けない」「進路を変更せざるを得ない」等、教育格差や子どもの貧困問題とも直結しており、ヤングケアラーに該当する子どもの実態把握・早期発見と支援が急務となっている。

>> 関連記事:ヤングケアラーへの関心と支援がひろがる ~世界子どもの日と、子どもの権利条約に寄せて~

・ユニバーサルデザイン

年齢や能力、状況などにかかわらず、できるだけ多くの人が使いやすいように、製品や建物・環境をデザインするという考え方。
バリアフリーは「高齢者や障害者が社会生活を送るうえで障壁となるものを取り除く」という考え方で、高齢者や障害者などの一部の人が対象となっているのに対し、ユニバーサルデザインは、デザインをする段階で、すべての人を対象にしている点が異なる。
身体的・心理的に使う人を選ぶことなく、誰でも公平に操作できること。使う人の能力や好みに合わせて使い方を選べること。使い方が簡単で直観的にわかること。
無理な姿勢を取ることなく、かつ少ない力で使用できること。その他、安全性や十分な広さ、明確さが原則とされている。略称はUD。


知っておきたい サステナビリティ・SDGs キーワード解説 【 ら行 】


・レジリエンス

Resilience. 本来は「回復力」を意味する言葉。困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生き延びる力」という心理学的な意味で使われるケースが増えている。
転じて、ビジネスシーンではリスクの高い外的要因に左右されない対応力、という意味合いでも用いられる。
サステナビリティの文脈では、災害やパンデミックからの復興、ICTインフラが重要視されている。

・レッドデータブック

レッドリストは、絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト。レッドリストの解説として掲載種の生息状況等をとりまとめ編纂した書籍をレッドデータブックと言う。
専門家による科学的・客観的評価により作成されており、絶滅のおそれのある野生生物の把握と一般への理解をひろげることを目的に、環境省が公表している。
(参照:いきものログ

・ルッキズム

外見至上主義。外見が問われるべきではない場面で評価の対象となったり、美の基準が画一的な価値観に限定されたりすること。また、その価値観にそぐわない人が不利益を受けることを指す。
美醜や体型といった容姿の問題にフォーカスされがちだが、他にも病気や障害、年齢、人種、性差など、人の見た目に関連する幅広いテーマに定義は及ぶ。
外見を気にするあまり過剰なダイエットが摂食障害を引き起こす原因になるといった健康被害への影響も社会問題となっている、
ルッキズムと同様に、外見をを馬鹿にしたり、批判したり、意見を言ったりすることを指す「ボディシェイミング」に対しても社会的に厳しい目がむけられている。

・LOHAS

Lifestyles of Health and Sustainability の頭文字をとった略語。
1990年代の後半にアメリカの中西部、コロラド州ボールダー周辺で生まれた新しいビジネス・コンセプトで、健康と環境、持続可能な社会生活を心がける生活スタイルを指す。


サステナビリティ・SDGs キーワード解説 【 わ行 】


・ワシントン条約

正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」 Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)。英語のイニシャルをとって「CITES(サイテス)」とも呼ばれる。
野生動植物の国際取引の規制を輸出国と輸入国とが協力して実施することにより,絶滅のおそれのある野生動植物の保護をはかることを目的とした条約。締結国数は、2018年9月の時点で182か国及び欧州連合(EU)。



■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
#アート #くらし #哲学 #ウェルビーイング #ジェンダー #教育 #多様性 #ファッション


お問い合わせはこちら