知っておきたい サステナビリティ・SDGs キーワード解説 【 vol.2 さ~な行 】

サステナビリティやSDGsに関する情報が増えるにつれて、耳にすることが増えた様々なキーワード。
なんとなく分かったようなつもりでいても、実はちゃんと意味をしらないままで使ってしまっていると、思わぬ誤解や炎上につながりかねない。

そこでこのコンテンツでは、市場ニーズや生活者意識の高まりを受けて、急速に変化し進んでいくサステナビリティの動向をキャッチアップするためにも、知っておきたい・理解しておきたいキーワードをピックアップし、分かりやすく解説。vo.1~3の全3回でお届けする。


知っておきたい サステナビリティ・SDGs キーワード解説 【 さ行 】


・サーマルリサイクル

廃棄物(主にプラスチック)を焼却の際に発生する排熱を回収してエネルギーを再利用すること。
循環型社会形成推進基本法第7条において、再使用及び再生利用に次ぐ循環的な利用として熱回収が推進されている。
清掃工場の排熱利用の他、ごみ発電やエコセメント化、温水などの熱源や冷房用のエネルギーとして利用することも多い。
廃棄物そのものを再利用する手法(マテリアルリサイクル)ではないため、欧米ではリサイクルとは見なされず「エネルギー回収」や「熱回収」と呼ばれる。
原料としての再利用が難しい廃棄物を効果的に活用するために、サーマルリサイクルが考え出された。

・再生可能エネルギー

自然エネルギーを資源とし、再利用が可能なエネルギーのこと。「代替エネルギー」、「新エネルギー」等とも呼ばれる。代表的なものに、太陽光発電や風力発電がある。また、生物資源を利用したバイオマス発電もある。
立地が限られ、供給量に限界があったり、料金が高いことが課題とされる。

・サステナビリティ

「持続可能性」を意味し、主に環境問題において用いられる用語。最近では企業の社会的責任(CSR)や中長期戦略においても重要なキーワードのひとつになっている。
1987年、環境に関する国連の委員会において「Sustainable Development(持続可能な発展)」という単語が用いられた際には、「将来世代のニーズに応える能力を損ねることなく、現在世代のニーズを満たす発展」と定義された。これが転じて、企業ならびに社会全体で環境保全や社会課題解決に貢献しつつ、長期的な成長と存続を目指すという取り組みが求められるようになった。

・サーキュラーエコノミー

開発から廃棄に至る一連のバリューチェーンにおいてリデュース(減らす)、リユース(再利用)、リサイクルする取り組みのこと。
サーキュラーエコノミーのビジネスモデルで代表的なものとして、シェアリングエコノミー・リサイクルモデル・再生原材料の投入・製品の長寿命化・製品のサービス化などが挙げられる。
最終的には、新規の利用資源と廃棄物をともにゼロにすることを目指す、新しい産業のあり方を目指す。人口増加に伴うニーズ増大に、現状のままでは地球の資源が対応できない。
人のニーズを満たすためには、循環型モデルを完遂させる必要がある。
EUでは、「新サーキュラーエコノミー行動計画」が2020年に策定された。
経済産業省の調査によると、サーキュラーエコノミーの経済効果は2030年には約470兆円に及ぶと予想されている。
(参照:『平成27年度地球温暖化問題等対策調査』 経済産業省 2016年)

・シェアリングエコノミー

インターネット上のプラットフォームを介して、「遊休資産」を個人間でシェア(賃借や売買や提供)をする経済活動。おもに場所・乗り物・物品・スキル・お金の5つに分類され、代表的な例としてはカーシェアや民泊などが挙げられる。
国内におけるシェアリングエコノミーの市場規模は、2030年度には14兆1,526億円にものぼると予測されている。
(参照:シェアリングエコノミー関連調査2020年度調査結果,株式会社情報通信総合研修所/一般社団法人シェアリングエコノミー協会)

・ジェンダー(平等)

ジェンダーとは、女性的・男性的を表す社会的・文化的な概念。社会で構築されたルールや古くからの慣習が女の子や女性を教育や社会参加から遠ざけ、未来への可能性を閉ざしてしまう要因になることが問題視されている。特に教育分野においては、女の子/男の子に関わらず、すべての子どもが教育の機会を得られることを目指して様々な取り組みが行われている。

・CSR

Corporate Social Responsibility の略。企業の社会的責任。
企業は自社の事業活動が与える影響に対して責任を持ち、社会や様々なステークホルダー(投資家・顧客・取引先・従業員・環境)などに対し適切な意思決定を行う必要があるという考えに基づく。
企業のCSRの考え方や具体的な活動について、ステークホルダーに情報開示するために作成する報告書を一般的には「CSRレポート」と言い、「統合報告書」や「サステナビリティレポート」とも呼ばれる。
CSRレポートは宣伝・広告ツールとは異なり、良いことも悪いことも含め、あらゆるステークホルダーが企業を評価するための情報が載った重要な報告書。また、役員や社員が、その企業の一員として行動し意思決定をする際の道しるべとしての役割も担っている。

・CSV

共通価値の創造。社会課題を自らのビジネスを通じて解決すること。
Creating Shared Valueの略。共有価値の創造。
経営学者マイケル・ポーターが2011年に提唱した、社会課題を解決することによって社会価値と経済価値の両方を創造する経営モデル。
ポーターは、CSVを実現するための3つのポイントを以下のように挙げている。

Reconceiving products and markets: 次世代の製品・サービスの創出
Redefining productivity in the value chain:バリューチェーン再定義による生産性の改善
Enabling local cluster development:共生による地域発展

また、CSV経営実現のための要件としては以下の7要素を挙げている。
・社会課題をどう捉えるか
・大義はあるか
・「ならでは」のひねりがあるか
・儲けの仕組みにどう変換するか
・誰をどう巻き込むか
・いかにスケールするか
・いかに持続的成長を実現するか

・CDP

CDPは、英国の慈善団体が管理する非政府組織(NGO)。投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営している。
2000年の発足以来、グローバルな環境課題に関するエンゲージメント改善を推進。日本では2005年より活動している。

・児童労働
有給・無給に関わらず、さまざまな形態で働いている子ども、とりわけ幼い子どもが労働を強いられ、心身の心身の発達・社会性・教育を阻害するような危険な労働を強いられている場合、有害な「児童労働」と定義される。こうした児童労働に従事する5~17歳の子どもは世界で約1億5200万人にのぼるとも言われている。2002年に国際労働機関(ILO)は毎年6月12日を「児童労働反対世界デー」と定めた。毎年この日には、児童労働の問題に対して意識を高めるためのさまざまな活動が世界中で行われている。

・ステレオタイプ

多くの人に無意識的に浸透している固定概念・先入観を指す。国籍・人種・宗教・性別など、特定の属性を持つ人に対する短絡的なイメージが該当例に挙げられる。意識的、無意識的とにかかわらず差別的な対応に繋がりやすい点が有害と認識されている。
また昨今は男女格差における「ジェンダーステレオタイプ」も、女性の教育機会や職業の選択に影響を与えるとして問題提起が増えている。

・スマートシティ

内閣府によると、ICT 等の新技術を活用して都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、新たな価値を創出し続ける持続可能な都市や地域と定義されている。
内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省が合同で、スマートシティに取り組む地方公共団体・公民連携の協議会の支援を目的とした『スマートシティガイドブック』が発表されている。
「スーパーシティ」は、世界に先駆けて最先端のスマートシティ実現を目指して設定された日本独自の言葉。
国家戦略特別区域法が改正(スーパーシティ法)されたことにより、これまで規制されてきたデータの収集が可能となり、スマートシティの推進やDXも加速すると期待が寄せられている。
(参照:スマートシティ・ガイドブックの作成について

・3R/4R

Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の頭文字から成る、環境配慮・廃棄物対策を表す言葉。
ここに4つめの「R」すなわち「Refuse(リフューズ)」が加わり、4Rとも呼ばれる。

リユースは、たとえば飲料の瓶を洗って再び利用するといったように既にある製品をそのまま「再利用」すること。
リデュースは使う量や買う量を減らしたり、廃棄時の量を減らすなどゴミの排出を減らすこと。
リサイクルは「再生利用・資源再生」を指し、たとえば牛乳パックからトイレットペーパーを作るように、一度資源に戻してから製品を作ること。
リフューズは「必要量以上の商品を買わない」や「レジ袋や過剰包装を断る」など、ゴミの発生を回避すること。

・スレイバリーフットプリント

自分の属性情報・食事や消費財の使用状況や所有物などのライフスタイルを入力すると、その生活を支えるために何人の現代奴隷が働いているのかを教えてくれるサイト。ふだん買っている商品のバリューチェーンの上流をたどると現代奴隷の問題にたどり着くことを示唆する。強制労働、人身売買、性的搾取、強制結婚などをさせられる人々を指し、世界に約4000万人いると言われている。国際労働機関による2017年の調査(Global Estimates of Modern Slavery)によるとその7割が女性。

・スロートラベル

飛行機ではなく陸路や海路で旅をすること。また、訪れた土地のローカルな環境を自然体で楽しみ、地元コミュニティとのつながりを育むことを言う。
新型コロナウイルス感染症の流行により、いろんな都市を周遊よりも、一か所に長くとどまって過ごす「スロートラベル」がトレンドになった。
サステナブル・ツーリズムや地方創生と紐づけ、豊かな地域づくりにも役立てられている概念。

・ゼロエミッション

1995年に国連大学が提唱。廃棄物を出さない製造技術を開発する計画。ある企業・産業で排出される廃棄物を、別の企業・産業の原料として使うなどして、トータルで廃棄物をゼロにしようというもの。「ゼロウェスト」とも言う。
経済産業省は、経団連や NEDO と連携して、脱炭素化社会の実現に向けたイノベーションに挑戦する企業をリスト化し、投資家等に活用可能な情報を提供するプロジェクト「ゼロエミ・チャレンジ」に取り組んでいる。

・ゼロウェイスト

無駄や浪費をなくして、ごみをゼロにすることを目標に廃棄物を減らす環境社会政策を指す。
ごみの量を減らすだけでなく、アップサイクルなど人の意識や社会の仕組みの変革が迫られている。

・ソーシャルグッド

地球環境や地域コミュニティなどの課題に対して、好影響を与える活動や製品あるいは社会貢献度の高いサービスなどを指す。
社会に対して、いいインパクトを与えるという意味でも用いられたり、CSR(企業の社会的責任)に結びつく場合もある。

・ソーシャルインパクト

直訳すると社会的影響力(社会的インパクト)のこと。
CSV(企業による社会との共有価値の創造)を通じて、社会におよぼす影響力のことを指す。

・society 5.0

IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)によって課題を解決したり、暮らしやすさを向上させる社会。
狩猟社会(society 1.0)、農耕社会(society 2.0)、工業社会(society 3.0)、情報社会(society 4.0)、に続く、新たな社会を指す。

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・SOGIハラ

性的指向(好きになる性/Sexual Orientation)と性自認(こころの性/Gender Identity)の観点からみた一人一人の持つ属性で、SOGIを理由とする不当な差別的言動・嫌がらせ(ハラスメント)を意味することば。性的指向とは好きになる性のこと、性自認は自分で認識している性を指す。
「ソジ」や「ソギ」、または「エスオージーアイ」と読む場合もある。
LGBTが特定の身体的性、性自認、性的指向を持つ人たちの総称である一方、SOGIはすべての人の属性を表す点が異なる点。


知っておきたい サステナビリティ・SDGs キーワード解説 【 た行 】


・代替肉

植物性タンパク質を原料として、味や食感を肉に似せて作られた食品。プラントベース食品(プラントベースミート)、フェイクミートとも呼ばれる。
原材料に大豆を多く使う場合は大豆ミートやソイミート、小麦の場合はグルテンミートとも言う。
代替肉の中には細胞の培養技術を用いた培養肉もあり、グローバル市場を中心に開発が進んでいる。
食料危機、飢餓問題、動物愛護等のサステナブルな社会課題を解決するフードテックの代表格として、国内外で様々な開発や導入が進んでいる。

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・ダイバーシティ

ダイバーシティとは「多様性」の意味。人種や国籍、性的指向・性自認、外見、年齢、性別、性格、学歴、働き方、宗教、価値観など、異なる属性の多種多様な人材が認め合う状態を指す。
一方で、インクルージョンとは「包括・包含」という意味で、一人ひとりの経験や能力が認められ、適所に活かされ、仕事に参画する機会が平等に与えられている状態を表す。
2015年に成立した女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)で、事業者に対し「女性の活躍に関する行動計画の策定と開示」が義務付けられた。経済団体連合会の「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」という提言が公表されたことなどを背景に、「ダイバーシティ」や「ダイバーシティ・インクルージョン」を目標に掲げる企業が増えている。

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・脱炭素

地球温暖化の原因となる二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を実質ゼロにすること。
化石燃料の使用を減らすことやエネルギーを効率よく使う省エネルギー(省エネ)、再生可能エネルギーの導入などが具体的な対策となる。

・地方創生

東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけ、それぞれの地域で住みよい環境を確保し、日本全体の活力を上げることを目的とした一連の政策。

内閣府は以下の4つの基本方針と、それに紐づいた政策パッケージを掲げている。
・地方に仕事をつくり、安心して働けるようにする
・地方への新しい人の流れをつくる
・若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる
・時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する
(参照:『地方創生の現状と今後の展開』,内閣府地方創生推進事務局,2019年)

・DX

Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略。もともとは2004年に、スウェーデンの大学教授エリック・ストルターマン氏により「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念を提唱された。
日本では経済産業省が2018年に『「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」』を発表したのを契機にひろがりはじめた。
経済産業省の定義を抜粋すると「ビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

・TCFD

Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォースの略。
気候変動の情報開示と金融機関の対応を検討する目的で、2017年にG20 の要請によりFSB(金融安定理事会)が設置した。気候変動が事業部もたらす財務的影響にフォーカスし、企業が気候沿道に関わるリスクや機会、戦略的なレジリエンスを検討し、開示するためのフレームワーク。
環境省では、気候変動の影響を受けやすいとされる業種を中心に「TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業」を実施し、支援事業における実例等を実践ガイドとして取りまとめています。
2021年に出された改訂版では、2020年度の支援事業の成果も踏まえ、
①実務担当者から経営層向け説明まで活用可能な内容
②開示に関する説明や事例の追加を含むシナリオ分析の範囲を拡大
③シナリオ分析の手順に段階(質) が追加され、より充実した内容になっている。
(参照:TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド ver3.0~,環境省,2021年)

・TNFD

Task Force for Nature-Related Financial Disclosure:自然関連財務情報開示タスクフォースの略。
生物多様性の保全をより強く意識し、そうした取り組みを重視する企業を高く評価する動き。
自然破壊に由来すると考えられる感染症の増加・拡大が、経済や産業に、甚大かつさまざまな影響を及ぼしているという認識が広がりつつことが背景にある。
国連は2020年6月に出した報告書『Beyond 'Business as Usual' Biodiversity Targets and Finance(平常のビジネスを超えて:生物多様性目標と資金)』の中で、世界の国々の国内総生産の半分以上が生態系サービスに強く依存していると推定。
その一方で、生態系サービスの消失が年間で少なくとも4,790億ドル(約51兆円)の経済損失をもたらしているとも指摘している。
(参照:ポスト・コロナの金融をリードする「TNFD」の視点,WWF,2020年)

・トレーサビリティ

その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのかを明らかにすべく、原材料の調達から生産、そして消費または廃棄まで追跡可能な状態にすること。
製品の品質向上に加え、安全意識の高まりから重要度が増しており、自動車や電子部品をはじめ、食品や医薬品など幅広い分野に浸透している。
複雑なサプライチェーンにおいてはトレーサビリティの把握が難しい場合があるが、製品のプロセスが「見える化」することにより生活者のブランドに対する信頼とエンゲージメントが高まるなどメリットも大きい。
また生産者にとっては市場へのアクセス改善やプレミアム獲得にも効果をもたらすと言える。


知っておきたい サステナビリティ・SDGs キーワード解説 【 な行 】


・ネットゼロ

国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)において「人為起源の排出量と、人為的な除去量のつり合いが取れた状態」と定義されている。
カーボンニュートラルとほぼ同じ意味で用いられ、企業の目標や宣言では「ネットゼロ」が用いられることが多い。



■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
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