これからのリブランディングのキーワードは「サステナビリティ」?

長く愛されるブランドだからこその宿命「顧客とともに歳を取るのか、若い新しい顧客を取り込むか」。この命題ともいえる課題に対する一つの解は「サステナビリティ」かもしれません。

人気ブランド「雪肌精」のリブランディング

ロングセラーコスメティックブランド「雪肌精」。特に女性であれば、購入したことがある方も多いのではないでしょうか?雪肌精は発売以来35年間、基本的なコンセプト・デザインは変えずに多くの愛用者を獲得していましたが、その雪肌精が2020年に「サステナビリティ」を軸の一つに据えてリブランディングを実施し話題になりました。このリブランディングにより新たにラインナップに加わった「雪肌精クリアウェルネス」は、外箱にリサイクル率の高い段ボールを使用し、パッケージにも植物由来の「バイオマスPET」や「バイオマスインク」を使用するなど、多くの部分でサステナビリティに配慮がされています。また2021年になってからも、外装パッケージに紙素材だけを使ったパウチを採用したシリーズを発売するなど、脱プラに向けた画期的な取り組みを加速させています。

既存ブランドが抱えるジレンマ。「延命」か「若返り」か。



ブランドが長きに渡って愛され、たくさんのファンとともに成長し続けることは、本当に素晴らしいことです。一方で、ブランドが長く続いていくなかでは、主要顧客層とともに歳を重ねていき、ブランド自体が尻窄みしてしまうという課題に直面していくことになります。
そこで新しいターゲットを開拓する必要性、特に現状の主要顧客より若い年齢層にどうアピールしていくのか、という話が繰り返しされていくことになるのですが、ガラッとブランディングやMDを変えてしまっては主要顧客の離反を生みかねない、しかしこのまま手をこまねいていても右肩下がりは変わらない……というジレンマのなかで堂々巡りになってしまうブランドもとても多いように感じます。雪肌精の今回のリブランディングの背景にも、そのような課題が見え隠れしています。
「延命」か「若返り」か。
必ずしも二者択一とは限りませんが、トレードオフになりやすいのも事実です。
そういうジレンマを解決する一つの糸口に「サステナビリティ」はなるかもしれません。

サステナビリティへの共感でZ世代をつかむ


若い世代、特にZ世代と呼ばれる世代に対する調査は各所で取り上げられています。さまざまな調査結果がありますが、概ね以下のような傾向としてまとめられます。

①モノではなくコト(体験)をより重視する
②多様性を重視し、より自分らしい選択を好む
③シンプルで長持ちするものを好む
④エシカル消費などへの興味・関心が高い
⑤学校教育によりSDGsの認知・関心が高い

自分だけでなく環境や社会にとってよいということが、彼らの意思決定に大きく影響を与えているともいわれています。サステナビリティへの取り組みに共感してもらうことを通じて、これまでアプローチできていなかった若い世代に興味・関心を高めてもらうことはサステナビリティをブランディングに取り入れていくうえでの一つの狙いとなっていくでしょう。

サステナビリティをプラスしてブランド価値をアップデート



雪肌精も今回のリブランディングによって「サステナビリティ」というキーワードが全面に打ち出される形になりましたが、その核となる要素は、もともとブランドとして抱えていたといえます。
それはブランドのパーパスと呼ばれる部分であったり、製品のエビデンスであったり、あるいはささいなプロジェクトや活動であったりします。雪肌精の場合は、「和漢植物エキス」を配合していることが核となる要素としてあり、自然の恵みによって支えられているブランドとして、自然に感謝し恩返しをしたいという想いから、サンゴ礁の保護を目的とした「SAVE the BLUE」の取り組みが生まれ、サステナブルを軸に据えたリブランディングにつながっています。
ブランド自体を大きく変えることなく、ブランドがそもそも包含している核となる要素を整理・再発見し、従来のブランディングに「サステナビリティ」をプラスしてブランド価値をアップデートしていくことは、既存顧客の離反を防ぎつつブランド自体の若返りを図るための一つのアプローチになっていくのではないでしょうか?


■執筆:Sustainable Brand Journey 編集部

お問い合わせはこちら