OUR JOURNEY 私たちのサステナブル・ブランド・ジャーニー
私たちはどこから来たのか? 私たちは何者か? 私たちはどこへ行くのか?
(『D'où venons-nous ? Que sommes-nous ? Où allons-nous』1897-1898, Paul Gauguin)
サステナブル・ブランド・ジャーニーとは、
答えのない、でも問いかけずにはいられないこれらの問いに対する片鱗を見つけるための旅でもある。
自己実現、自己肯定感、ウェルビーイング、
よりよく生きることを目指した言葉が次々に生まれ、ある人は待ち望んでいたかのように、またある人はまわりの勢いに押される形で、しかし多くの人々が望むと望まざるとにかかわらず、それらの言葉を意識せざるを得ない時代になったと言えるだろう。
自分を認め、他者を受け入れ、健全でフェアなコミュニティを形成していく方向へ、社会全体が大きく舵を切ったのだ。
サステナブルやエシカルなアクションを積み重ねる
サステナブルやエシカルという言葉が世の中にひろまって、急速に浸透しつつあると感じる。広告、新聞や雑誌、テレビなどの主要メディアはもちろん、小学校で習ったのだと私の7歳の息子の口の端にものぼるようになった。
時代の大きな変化を追い風として、この Sustainable Brand Journey というメディアや、サステナブルブランディングに関わるビジネスを進めるうえで、言葉や理想だけが上すべりしないように、と常に意識していたいと思う。
そして、何ができるのかといつも考えつづけることも大切だと思う。
言葉の表現は言うまでもなく、選ぶ写真や取り扱うテーマにバイアスがないかを感知・精査する感性も磨いていかなければならないだろう。発信するコンテンツやプロモーションの先にはいつも、多様な個性と感性をもった一人一人の個人がいることを忘れないでいたい。
受け取る大勢のなかの誰かひとりでも、傷つく人がいないか? そんなことを考えると何も言えなくなってしまう、と思う人もいるかもしれない。完全に「誰一人」は、現実的には難しいだろう。けれども、だからといって諦めてしまうのではなく、それでもコミュニケーションの向こう側にいる「誰か」に思いを寄せる、そのためにこそ私たちの想像力はあるのではないか。
また、日常生活でもオフィスでもサステナビリティを意識するシーンはたくさんある。
たとえば、移動はできるだけ徒歩・自転車・鉄道を選択したり、こまめな節電や節水を心がけたり、無駄なプリントアウトを抑制してペーパーレスを目指す…等々、日常レベルで出来ることもたくさんある。
これらが正しかどうか、これでいいのかどうか。わかりやすい答えはすぐには導きだせないけれど、わからないからと諦めて立ち止まるよりは、できることから行動していくことが、きっと何かに繋がっていく。一つ一つ、小さな石を積み上げて、やがてそれが大きく美しいオブジェになっていくように。ひと塗り、ひと塗り、絵の具を重ねていくことで後世に受け継がれる大作が描かれるように。
サステナブルな最適解を選べるか
迷いに迷い、悩みに悩んだ挙句にえいやっと目をつぶって苦し紛れに選ぶのではなく、無意識的に自然に選んだものが、自分や社会にとっていい選択だったということが望ましい。勉強も、仕事も、子育ても、最初はわからないことだらけで詰め込んだ情報に溢れかえるなかで最適解を選ぶことはとても難しい。
さんざん迷い、悩んだ果てに、結局なんの行動も答えも出せないことすらある。
しかし一心に打ち込み、とにかく経験の量をこなしていると、そのうちにふっと「こういうときはこう考えたほうがいい」と分かるようになってくる。
畢竟、サステナブルな取り組みについても同じことがいえるのではないかと思う。
一つ一つの問題をとことん掘り下げ、最適解を考え抜こうとするとそれだけで時間的にも精神的にも疲弊し、どこにも行き着けない可能性だってある。
なんかこっちがよさそうだ。
こっちを選んだほうが気分がいい。
そういう感覚を、まずは自分のなかに育てることが大事。
そして空気は伝播していくので、まわりにそういう人が増えていけば、
その波紋はさらに広がり、やがては社会全体への影響を及ぼすまでになるはずだ。
私たちのサステナブル・ブランド・ジャーニー
これは、メディアとして情報を発信する私たちの旅だと言うこともできるだろう。メディアは媒介であり、社会と人の暮らし=LIFE(人生)を結びつける。
私たちはどこから来たのか? 私たちは何者か? 私たちはどこへ行くのか?
これまで多くの先人たちが道を拓き、道を踏みしめて均し、私たちが歩きやすいように整えてくれた。
あるいは、もう二度と繰りかえすべきではない醜悪な戦争や偏見や差別から、私たちは学ばなければならない。
そして、未来にバトンをつないでいくために今、私たちはサステナブルであることを志向し、実行しようとしている。
過去と現在と未来の私たちが、今この瞬間を生きているあなたや私を支えているのだ。
「私たちがどこに立っているかではなく、どの方角に向かって動いているかが最も重要なことだ」と、作家であり医学の改革者としても有名なオリバー・ウェンデル・ホームズ・シニアは言った。
引用: " I find the great thing in the world is not so much whre we stand, as in what direction we are moving."
(『The Autocrat of the Breakfast-Table』1858 , Oliver Wendell Holmes Sr.)
現在地にとどまるのではなく、一歩踏み出す。新しい世界を知り、新しい経験をし、失敗や不安もあるけれど、その先に何があるのか、どんな出会いがあるのかに惹かれ、また前を向いて進んでいく。
そうして私たちひとりひとりが動き出すことで、世界は少しずつ、でも確実に変わっていく。
コロナ禍によって、驚くべきスピードでニューノーマルな世界が実現されたことを私たちは既に知っている。
だからきっとサステナブルな社会の実現も、私たちが向かう先にある。
■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集長
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