「てまえどり」生活者に呼びかけ 官民連携でフードロス削減

小売店舗が生活者に対して、商品棚の手前にある商品を選ぶ「てまえどり」を呼びかける取り組みが、2021年6月からスタートした。
農林水産省が主導し、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会、消費者庁、環境省と連携して推進する。


「てまえどり」とは
食べ残しや賞味期限が近い等の理由により、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品ロス(フードロス)が大きな問題になっている。

「てまえどり」は、すぐに食べる商品は、棚の手前にある賞味期限が近い商品や見切り商品から順番に購入していくことで、食品の廃棄を減らす購買行動のことだ。
これにより、賞味(消費)期限切れで廃棄される食品を少なくする狙いがある。

農林水産省が2021年6月から消費者庁や日本フランチャイズチェーン協会などと共同で実施し、同協会に加盟するセブンイレブン、ファミリーマート、ミニストップ、ローソンのコンビニエンスストア4社の参画と共に始め、徐々に全国のスーパーなどにも運動が広がりはじめている。

「すぐにたべるなら、手前をえらぶ。『てまえどり』にご協力ください」と書かれたアテンションPOPやポスターを作成し、各店舗では、おにぎりや弁当、サンドイッチ等の棚に掲示している。



食品ロス(フードロス)の現状と2030年にむけた目標
農林水産省によると、2018年度の食品ロスの推計値は600万トンで、内訳は事業系分が324万トン、家庭分が276万トン。
事業系分のうち、コンビニやスーパーなど食品小売業分は66万トンだった。

数字が大きすぎてイメージが湧きづらいかもしれないが、600万トンとはお茶碗1杯分の食品を日本国民全員が毎日、廃棄していることに相当するという。

農林水産は事業系の食品ロスを、2030年度までに273万トンに減少させる目標を掲げている。



食品ロスを減らすためにできること
環境省では「食品ロスポータルサイト 食べ物を捨てない社会へ」を立ち上げ、
消費者、自治体、事業者それぞれに向けて主体的な取り組みを啓蒙している。

事業者にむけては、業種ごとに具体的な取り組み内容として以下のものを挙げた。

■業種共通
・商慣習見直し(賞味期限の年月表示化の取組、納品期限の緩和)
・フードバンクの活用
・災害用備蓄食品の利活用
・需要予測の精度向上

■外食産業
・食べ残しの持ち帰り推進
・食べきりの推奨(小盛りや小分けのメニュー採用、宴会予約時の食事量調整)
・調理ロス削減

■製造業
・商慣習見直し(賞味期限延長、年月表示化)
・過剰生産の抑制

■卸・小売業
・売り切り
・配送時の汚損、破損削減
・小容量販売、バラ売


生活者の本音は?
「すぐに食べるなら、手前を選んで」というメッセージは至極もっともに感じられるが、一方で難しいのは「すぐには食べないかもしれない」という場合の生活者心理だ。
買うなら新しいものがいい、というのも生活者にとっては本音だろう。

しかしこのPOPやポスターが目にふれる機会が多くなれば、生活者の意識変化も進むことが期待される。

手前から取ることでサステナビリティに協力しているというポジティブな意識変化が
生活者に生まれれば、さらに食品購入以外のジャンルにおいても食品ロス(フードロス)の農林水産省の担当者は「事業系の食品ロスは店側の努力だけでは改善しない。消費者の意識の高まりを期待したい」と話す。

生活者の意識が高まれば、売り場POPによる呼びかけだけでなく、「手前から取りやすい」工夫がされた商品パッケージも選ばれる基準になっていくかもしれない。


【参考サイト】

小売店舗で消費者に「てまえどり」を呼びかけます(農林水産省)

食品ロス削減に向けた取組について(消費者庁)

食品ロスポータルサイト(環境省)

食品ロスとは(農林水産省)


■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
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