フードだけじゃない「フラワーロス」 イベント装飾やノベルティに活かしてロス削減に貢献

花は、食品よりも在庫管理が難しいと言われている。
食べ物は少し形が崩れていたり、新鮮さに欠けたりしていても調理をすれば問題のないものも多いが、花は見た目や生鮮さこそが重視されるため、規格に合わないものは容赦なく捨てられてしまうのだそうだ。

また、花は非常に繊細なので、運送や荷下ろしの過程で傷がつきやすい。
にもかかわらず、花き(観賞用植物全般)のサプライチェーンにおいては、卸売業者等を経由する取引比率が77%も占めており、生産現場から消費者に届くまでの過程が長い。
サプライチェーンが長ければ長いほど 、花が傷つきやすくなり廃棄される花の量も増えてしまうという悪循環な構造がある。

さらにコロナ禍の影響でイベント装花ニーズは激減。相次ぐ出荷キャンセルにより、フラワーロス問題はいっそう深刻さを増した。

しかしそんな苦境にめげることなく、命ある花を救い、花の魅力を生活者に届けるために、企業規模の大小を問わず様々な取り組みが行われている。


花需要を喚起す日比谷花壇の多彩な試み
株式会社日比谷花壇は、行き場をなくした花を積極的に生活者に届ける取り組みを打ち出している。

全国金融機関「農林中央金庫」との共同で、「SAVE THE FLOWERS」の取組みの一環として、全国各地で生産されたバラやカーネーション、ガーベラなどの生花合計10,000本を無料配布した。

また、SNSでも #savetheflowers #stayhomewithflowers #花と素敵なおうち時間 等のハッシュタグと共にお花で自宅を飾る様子をシェアしてもらうよう呼び掛けたり、
日比谷花壇のフラワーデザイナーが花の楽しみ方を動画で配信したりもしている。

花そのものだけでなく、「花を飾って楽しむ」こと全体にフォーカスし、サブスクリプションサービスを利用している希望者にユーズドのフラワーベース(中古花瓶)を無償で譲るサービスも行うなど、花を気軽に自宅に飾って楽しむための多彩な取り組みを実践している。


D2Cでフラワーロス削減
株式会社ジャパン・フラワー・コーポレーションはフラワーロスの解決にむけて、2020年4月「スマイルフラワープロジェクト」を発足した。

このプロジェクトでは、破棄予定の花を花卉生産農家から直接買い取り、
株式会社ジャパン・フラワー・コーポレーションが運営するECサイトで販売する。

単にECで花を売る、というだけでなく、サイトでは「花一輪残さず、一滴残さず。お花の命を活かしてゆきたいと考えております」と謳い、D2Cとしての情緒的価値を発信している。

販売だけでなく、企業との連携企画によりイベント等で花を活用することも併せて、2021年3月時点で累計100万本の花を救出することができたという。

また、廃棄される花から「美しい色」という価値を創出し、新たな命の宿り先として、布や紙にアップサイクルする新事業にも取り組んでいる。


SNS活用で認知を広める花レスキュー
生花市場や産直に出荷できないB品(規格外品)を中心に、「季節のブーケ」と称して
廃棄花をアレンジしたオリジナルグッズ制作・販売するのは、黒磯日用市と生花店 Dear,Folks&Flowers だ。

地域の花農家や産直生産者へ直接足を運び、コロナ禍でのフラワーロス削減のサポートを行うだけでなく、ロスフラワーを抱えて困っている花農家の情報もSNSで呼びかけて集めている。

季節のブーケは定期的にイベントで販売され、毎回、開始30分程で完売してしまうという。


 (Dear,Folks&Flowers 公式Instagramより)

Dear,Folks&Flowers の公式Instagramでは、規格外のロスフラワーとは思えないほど美しい花の写真が並び、花の魅力を伝えている。


ロスフラワー+アップサイクル=新しい価値提供
「アップサイクル」の概念をロスフラワーと掛け合わせて新たな価値を生み出すのは、
株式会社RINが構成する「サイクリスト」のメンバーだ。

・廃棄する際の心苦しさや作業工程を削減
・循環型経済(サーキュラーエコノミー)へ貢献
・売れ残った花を買い取ることで損失やゴミ代のコスト削減

これらを実現する目的でロスフラワーを回収し、ドライフラワー作品にすることで、新たな命を吹き込んでいる。

2020年12月には、株式会社RINが手掛けるロスフラワーで「ラフォーレ原宿」が全館を装飾したことも話題を呼んだ。


(【ラフォーレ原宿×フラワーサイクリスト】プレスリリースより)


「サステナビリティをテーマに据え、街に咲くロスフラワーで全館を飾り、
ラフォーレ原宿にお越しいただいたお客様に少しでもあたたかい気持ちに」とラフォーレ原宿もサステナビリティと絡めてメッセージを発信した。


フラワーロス解決のアイディア続々と
企業や店舗だけでなく、農林水産省も花きの消費拡大を図るために「花いっぱいプロジェクト」を実施している。

フラワーロス削減に取り組む人々が共通して発信するのは、「花がある生活」の豊かさや、人に癒しを与える「花の力」だ。
生活者、そして生花産業と関連のない企業であっても花の魅力に気づくことが、大量の廃棄を削減することにつながる。



市場直送のサブスクリプションサービスもバリエーションが増えている他、ノベルティやPOP UPマルシェなど、企業活動と暮らしの両面で花を活用するプロジェクトが多く見られるようになってきた。

生活者にも幸せをもたらすサステナブルなコミュニケーションは、アイディア次第でこれからますます広がりを見せていくにちがいない。


【参考サイト】

日比谷花壇

スマイルフラワープロジェクト

株式会社RIN公式サイト

【ラフォーレ原宿×フラワーサイクリスト】ロスフラワーを用いたサスティナブルな XMAS2020 全館装飾プロデュース


■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
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