GUCCI 100周年を記念した サステナブルブランディング体験価値の全容

グッチが100周年を記念して京都で開催した体験型スペシャルエキシビション。

グッチ(GUCCI)はブランド創設100周年を祝し、体験型エキシビション「グッチ バンブーハウス」を2021年7月22日から8月15日までの期間限定で開催した。

新型コロナウイルス感染症予防対策として完全予約制かつ30分の時間制限を設けるものの、入場料は無料で、広く一般の人々に対してブランドのフィロソフィーを伝える機会となった。


伝統の継承と再生がテーマ
開催地に選んだのは、ブランド発祥の地イタリア・フィレンツェの姉妹都市である京都。
そしてエキシビション場所は、グッチが創設された1920年代に建造され、京都市の有形文化財に指定されている旧川崎家住宅だ。

茶室や坪庭を備えた伝統的な京町家様式とヨーロッパの建築様式や意匠が共存する空間は、伝統と格式、そして多様性を表現するのにふさわしい。

「GUCCI BAMBOO HOUSE KYOTO」という名称に明らかなように、エキシビション全体を貫くテーマは、ブランドの象徴的なアイコンとして知られるバンブー(竹)。

ハンドバッグのハンドルやモカシンシューズのビット等に用いられてきた素材、竹の伝統と再生をテーマに、工夫と趣向を凝らした展示内容をレポートする。



多様性と未来志向を表現する「茶室 竹節庵」
「伝統文化とはそのままの姿を残すのではなく、新たな息吹を取り入れ自ら変容していくことで(略)未来へとつながる。」
このブランドフィロソフィーを表現するのに選んだ場所は、「竹節庵」と名付けられた小さな茶室だ。

茶室の名付けには、「上下に存在する竹の節のように、互いに独立した自我を持ちながらも差異を認め合うという精神が、平等な存在としてすべての人が自分らしく生きる」という、グッチが目指すサステナブルブランディングのヴィジョンが込められている。



本気度がすごい、多様性を表す庭園
茶室を後にして廊下に出ると、目に入ってくるのは竹林に見たてた坪庭だ。
この庭は元から邸宅にあったものではなく、このエキシビションのために、ビオトープ「OYAMA」とグッチが制作したものだというから驚く。
「自然は多様性のお手本であり、再生の象徴です」と、リーフレットに記されたメッセージからも、暮らしに快適さをもたらす自然への深いリスペクトが伝わってくる。



タイムレスなブランドアイコンとサステナブルなアートワーク
ずらりと揃ったグッチのアーカイブバッグと並んで展示されていたのは、今にも動き出しそうなほどに有機的な生命力を感じさせる竹のオブジェたち。



これらのアート作品の作者である四代田辺竹雲斎は、120年続く竹工芸家に生まれ、竹によるインスタレーションや立体的な作品を発表している気鋭アーティストだ。

戦後の物資が不足している状況にあっても高品質で洗練されていることを目指し、竹をバーナーで熱してカーブさせ、さらに磨き上げてハンドルにしたというグッチのアイコンバッグの歴史。
その斬新かつエレガントなバッグがセレブリティを筆頭に、世界中の女性たちを魅了し、今のグッチを築いてきた。

「connrction 無限」「つながり 無限」などをテーマに表現された竹のアートは、タイムレスな魅力を持つバッグと共演するのに、まさにふさわしい。

しかもこのアート作品は展示終了後、材料の竹が丁寧に解かれ、次の作品で新たな形で再生されるというところまで徹底してサステナブルなテーマ性が貫かれている。



100年前からいま、そして未来へ
アイテムからブランドのヴィジョンやフィロソフィー、さらに100年を紐解く歴史まで、
多様なレイヤーで表現されたグッチのエキシビションを紹介してきた。

伝統建築、アート、自然、伝統建築、禅、など様々な要素とコラボレーションした老舗ブランドの本気が伺えるサステナブルブランディングの事例と言えるだろう。

尚、グッチを擁するケリング(KERING)の2021年1~6月期決算は、売上高が前年同期比49.6%増の80億4720万ユーロ(約1兆380億円)、純利益は5倍以上(同442.5%増)の増収増益だという。
グッチは第2四半期に売上を伸ばし、同期比で45.8%増の44億7930万ユーロ(約5778億円)。

高級品市場の復調に伴い、今後グッチをはじめハイブランドのサステナブル・ブランディング戦略がどのように発信されていくかにも注目したい。

※記事内のブランドメッセージはいずれも会場で配布されたリーフレットからの引用。


【参考サイト】

GUCCI BAMBOO HOUSE ブランド創設100周年を祝し、京都で体験型エキシビション「グッチ バンブーハウス」を開催

「グッチバング―ハウス」ホームページ


■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
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