【 ユニバーサルデザイン国際デザイン賞2020 】日本発、これまでにない新フォントが共創デザイン金賞獲得

ユニバーサルデザインのさらなる普及と実現を通じて社会に貢献することを目的として、IAUD国際デザイン賞は毎年、世界各国からエントリーを募っている。

2020年は世界14か国(アメリカ、アルゼンチン、イギリス、イスラエル、オーストリア、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、中国、ドイツ、日本、フランス、ラトビア)から67件のエントリーがあり、その中から厳正かつ公正な審査の結果、「大賞」1件、各部門の「金賞」9件、「銀賞」19件の他、UDにおいて一定の基準を満たしたものに対し「銅賞」35件を選定した。



ユニバーサルデザインとSDGs
ユニバーサルデザインの基本理念である包括性は、「誰一人取り残さない」というSDGsの原則と一致するとIAUD(一般財団法人 国際ユニヴァーサルデザイン協議会)は考える。

そのため、各受賞作品の発表には、事例と関係の深いSDGsの目標も併せて表示されており、取り組み事例とSDGsの関連づけとしても参考になる。


金賞9件のうち、6件が日本の事例
IAUD国際デザイン賞2020 で金賞を受賞した9件の事例のうち、実に6件が日本からのエントリーだった。
受賞した部門、企業、取り組みテーマを以下にまとめた。

■住宅・建築部門
障がいのある人もない人もみんなで一緒に泊まれる温泉宿
(有限会社なにわ旅館 :なにわ一水)
SDGs目標…9 10 11 17

■教育部門
誰一人取り残さない教育の実現に向けて5GやVR・⽔中ドローン等の先端技術を活用した遠隔教育プロジェクト
(富士通株式会社/関西学院大学/株式会社NTTドコモ/一般財団法人 沖縄美ら島財団/公益財団法人 日本財団/株式会社 横浜八景島/バーチャルオーシャン製作委員会)
SDGs目標…4 9 10 11 17

■公共空間デザイン部門
・喧噪な駅の中で、ひと時安らぎを感じるトイレ
(設計事務所ゴンドラ)
SDGs目標…6 11

・標準型エレベーター AXIEZ-LINKs(アクシーズ・リンクス)
(三菱電機株式会社)
SDGs目標…9 11

■作業機器部門
パワードウェアATOUN MODEL Yシリーズ
(株式会社ATOUN)
SDGs目標…5 8 9 10 11

そして、共創デザイン部門においても日本の2事例が金賞を受賞した。
今回はこの2件を抜粋して詳しく紹介する。


日本発、これまでにない新フォントが共創デザイン
共創デザイン部門を受賞したひとつめの事例は、
渋谷区と桑沢デザイン研究所と株式会社フクフクプラスが共同開発したフォント「シブヤフォント」。

シブヤフォントとは、障がい者が描いた絵や文字をデジタル化したパターンに発展させ、フォントとして個人や企業が利用できるようにしたものだ。

渋谷の理念であるダイバーシティ、インクルージョンの理念を広めることを目的に
産学官が三位一体となって実行したソーシャルアクション。

個人利用に限り無料ダウンロードして活用できる他、「ワンコインダウンロード」でフォントを購入することもできる。
フォントの売上収入は、地域の障がい者の社会参加と経済的自立を促進するために使われる。




審査員からは「ポジティブで人生を豊かにする方法で社会的包摂を語りかける、
とても明るく革新的な、人の心に響く取り組み」と高く評価された。

SDGs目標では8 11 17が紐づけられている。


コロナ禍から生まれた共創デザイン
同じく共創デザイン部門で金賞を受賞したのは
デザイン事務所 NOSIGNER(ノザイナー株式会社)が開発した共同編集ウェブサイト「PANDAID」。



PANDAIDは、世界が新型コロナウイルス危機に瀕したタイミングで、ありとあらゆる知恵を結集させる目的のために立ち上げられた。
感染症についての正確な知識と、新型コロナウイルスや同様のウィルスと戦う方法を集めることで、人々が団結する場所と機会を提供している。

コロナ禍という未曽有の事態に際し、感染が拡大すると同時に混乱や不安が広がるなか、「集合知の概念を巧みにデザインムーブメントに展開し、ユニークで効果的で思いやりのある情報を伝えている」点が高く評価された。

SDGs目標では 3 6 10 11 17が紐づけられている。

NOSIGNERはこの他にもソーシャルディスタンスを楽しく守れるサイネージ「SOCIAL HARMONY」を開発。
このサイネージは表参道ヒルズと横浜みなとみらいホールに設置された。


IAUD国際デザイン賞2021
ユニバーサルデザインの普及と支援のために2010年に創設された「IAUDアウォード」は、2018年度より「IAUD国際デザイン賞」と名称をあらため、民族、文化、慣習、国籍、性別、年齢、能力等の違いにかかわらず、“一人でも多くの人が快適で暮らしやすい”ユニバーサルデザイン社会の実現に向けて、特に顕著な活動の実践や提案を行なっている団体・個人に「IAUD国際デザイン賞」を授与し国際的に表彰している。

多様性と包摂性、人権や人間性を尊重した安心・安全な社会、自発的かつ持続的な対話、世代を超えた知恵と技の継承などに配慮した、サステナブルな共生社会の創造を到達目標に掲げる。

IAUD国際デザイン賞2021の受賞事例発表は、2021年12月に行われる予定だ。


【参考サイト】
IAUD国際デザイン賞2020 受賞結果発表

IAUD国際デザイン賞2021 応募要項

シブヤフォント

PANDAID


■執筆: Mami NAITO Sustainable Brand Journey 編集部
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